(3)
「家に案内するよ。来て」
アンジェリーナちゃんと僕は大きな道から狭い路地に入ってまた大きな通りに出た。アンジェリーナちゃんはグングン進む。どれくらい歩いただろうか。30分は経った気がする。目の前の視界に海が広がった。
「あっ」
「綺麗でしょう。ここはね、好きに魚を取っていいんだけど、食べられるだけ。むやみに魚を殺すと海の神の怒りに触れるよ」
と、いうことは自給自足か。参ったな。米や肉はどうしたらいいのだろう。
「あの、魚しか食べられないの?」
「まさかー。ジョージおじさんが食料を売りに来るから買って食べればいいんだよ」
買って!?じゃあ、お金は?またポケットを弄るがスマートフォンの薄くて冷たい感触しかない。
「あの、僕、お金持ってないみたいなんだけど」
「ああ、クリストフくんはね、サンタイルさんのクリスマプレゼントを仕分けの仕事があるの。それで働いてお金を稼いでね」
え、えええ!?サンタイルさんって誰だ?サンタクロースなら知ってるが、それも空想の人物だろう。でもお金を稼がなくては食べていけないみたいだ。
「サンタイルさんっていう人は何処にいるの?」
質問ばかりだ。アンジェリーナちゃんも辟易しているかな。
「それは、後々、分かるよ。ね、クリストフくんの家を教えてからうちにおいでよ。今日はねクリストフくんの歓迎会をやる予定なの。私んちでパーティーの準備がしてあるんだよ」
そうなんだ!歓迎会をやってくれるなんて嬉しい限りだ。ここはいい場所みたいだなあ。日本に未練がないと言ったら嘘になるけど、好きだった女の子にも振り向いて貰えなかったし、親友なんていなかった。弟さえ、僕と口を利くのが嫌そうだった。