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「どうした、クリストフくん?」
サンタイルさんが心配そうに僕の顔を窺い見る。
「いえ、何でもないです。お母さんの作る料理は絶品ですね」
「アハハ!じゃあ、僕の料理が不味いみたいじゃないか!」
僕は手をブンブン振った。
「いえ、サンタイルさんの料理も美味しかったですよ。男の料理って感じでした」
そのやり取りを見ていたアンジェリーナちゃんの顔が綻ぶ。
「ここに来て良かったね、クリストフくん」
「うん!みんな有難う」
キャロラインちゃんが目を細めてこちらを見る。
「次は日本のことが知りたい」
日本かあ。何を教えればいいんだろう。富士山の絶景、スカイツリー、厳島神社、六甲の夜景、いや函館の夜景も素晴らしいらしい。僕は東京に住んでいたので高層ビルから富士山を見たことがあるくらいだ。スカイツリーも見えるが上ったことはない。
「キャロラインちゃんは日本って聞くと何を思い浮かべる?」
「着物かなあ、一度テレビで観たけど綺麗だよねえ」
なるほど、着物かあ。女の子はそうなのかな。サンタイルさんが「あっ」と言ってから「僕はアニメかなあ」と言った。このセントジョーンズ島でもアニメが観られるんだ!少しの感動を覚える。お父さんが赤い頬を上にあげて「明日は釣りはどうする?」と訊いて来た。
「サンタイルさん、釣りしてもいい?」
僕はサンタイルさんに向かって首を傾げる。
「ああ、いいよ。約束してただろ」
やった!明日はエイダイを釣れるかな。初心者でそれは無理か。でもサンタイルさんの好きな物を釣って喜ばせたい。
「何が食べたいですか?」
僕はみんなに向かって言った。アンジェリーナちゃんが可笑しそうに笑う。
「アハハ!そんなに簡単じゃないよ」
「アハハ!そっかー」
僕も自分の言ったことが可笑しくなる。立ち上がって庭を見ると、ジョリイが楽しそうに走り回るのがチラリと見えた。




