(27)
僕の質問責めをアンジェリーナちゃんが止める。
「まあ、まあ。この辺で終わりにしたら?クリストフくんはここに来たばかりだもん。知らないことだらけでも可笑しくないよ。そのうち解るって!」
確かにそうだな。キャロラインちゃん、困っちゃたかな。悪いことをした。
「ゴメンね、キャロラインちゃん・・・」
「えっ、なんで?」
「僕さあ、心配性じゃないんだけどなあ」
キャロラインちゃんは口角をあげる。そして「ジェンガをやろうよ」と言った。途端に空気が和やかになる。お母さんがエイダイを蒸してくれた。酒蒸しだと教えて貰う。サンタイルさんとお父さんは今日もワインを飲んだ。お父さんが赤いワインを注がれたグラスを見ながら言う。
「この辺りはね、葡萄作りが盛んでワインが有名なんだよ」
と、いうことはやはりヨーロッパの辺りかな。どうも地理の感覚が掴めない。いや、時間も僕のいた場所と違うんだった。ここは2005年だ。もしかして現実にない国かもしれない。その可能性の方が高い。スマートフォンかパソコンが使えれば検索出来たのに!もどかしいな。そうだ!大事なことを思い出した!サンタイルさんはあまり飲んだらいけない。今日こそはお風呂に入りたいからだ。
「サンタイルさんは控えて飲んでくださいね」
「んん、何でだ?」
「昨日、お風呂に入らなかったからですよ」
「ああ、そうか。じゃあ、これ1杯でやめておこう」
僕はニッコリ笑った。
エイダイはサンタイルさんが言った通り白身の魚で味はヒラメに近かった。でもヒラメより肉厚でホクホクしていた。頭にマンボウが浮かんでくる。マンボウなんて食べたことないが、それに近いものの気がする。お母さんがリゾットっぽいものを作ってくれた。トマトソースとコンソメでご飯を煮立ててチーズを乗せただけのシンプルなものだとお母さんは言ったが、僕が今まで食べたリゾットの中で格別に美味しかった。そういえばリゾットは外食でしか食べたことがない。小学生の頃は、たまにであるがイタリアンレストランや回転ずしに連れていって貰った覚えがある。行儀が悪いと途中で車の中に閉じ込められた。苦い思い出だ。中学に入ってからは外食なんか連れてって貰えなくて、菓子パンだとかインスタントラーメンばかりを食べていた。僕は眉間に皺を寄せてそこに右手をあてる。