(25)
木の柵がある、境界線を越える。ヒイラギが生い茂って赤い実を付けている。ジョリイが既に来ていて、サンタイルさんを見ると相変わらず笑ったような顔で「ワン」と鳴いた。
今日は服を借りて来た。赤いセーターに裏がフリースのパンツだ。サンタイルさんの服は僕には少し大きい。それを言ったら「今度、服を買ってあげるよ」とサンタイルさんが答えた。
「こんばんはー」と玄関で大声を出すとアンジェリーナちゃんがバタバタと狭い廊下から速足で来た。
「いらっしゃい。お母さんもキャロラインちゃんも待ってるよ。あ、クリストフくん、お仕事、お疲れさまー。どうだった?初仕事」
「うーん、まだ覚えたてで何をやっているか分からないよ」
僕は正直に答えた。サンタイルさんがプッと笑う。
「中々、手際が良かったよ。神の人選は素晴らしいなあ」
そうかなあ、でも褒めて貰えて嬉しい。
「今日はね、エイダイが釣れたんだって!」
「おお!やっぱりエイダイか!あれは堪らなく美味しいんだよなー。クリストフくん、この島に来て2日目にエイダイが食べられるなんてついてるよ」
サンタイルさんは大喜びだ。そんなに美味しいのかエイダイって。その時、黒い長い髪がサッと壁から出て来たのが見えた。女の子?出て来たと思ったらすぐに引っ込んだ。
「キャロラインちゃん、照れてないで出ておいでよ」
アンジェリーナちゃんが可笑しそうに言う。
「う、ん」
黒い髪で濃いグリーンの目の色をした色の白い美少女がこちらに歩いて来る。おお!映画から出て来たみたい!人形みたい!タイプを超えて近づけるのがおこがましい。
「初めまして、ジョージおじさんからサムライが来たって聞いて、一目みたくて来ちゃった」
キャロラインちゃんは肩を上げる。仕草も可愛い!僕は平静を保とうと努力する。だが上手く喋れない。
「そ、そう、ぼ、僕と同じ高校生でしょ」
ああ、これではいけない。右手でお尻をつねる。
「うん、高校2年生」
「じゃ、じゃあ、僕と同じ学年だよ」
アンジェリーナちゃんが吹き出すように笑う。まったく!肝心な時に!大事な場面なのに!