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僕はテーブルにスマートフォンを置いていた。それがブルブルと振動する。画面を見ると着信中と出ていた。誰かから電話かな。スマートフォンを手に取り通話ボタンを押す。
「クリストフくん、私、アンジェリーナ。仕事は順調?」
アンジェリーナちゃんか。来たばかりなのに、また心配で掛けてきてくれたのかな。
「うん、サンタイルさんによくして貰ってるよ」
「あのね、キャロラインちゃんがクリストフくんが、どういう人なのか知りたいらしくて、それを訊きに家に来たの。だから本人に会うのが一番だって思って、電話してみたの」
じゃあ、キャロラインちゃんが家に来るのかな。アンジェリーナちゃんは話を続ける。
「夕飯まで居て貰って、みんなで夜に会わない?」
なるほど、そういう事か。でもキャロラインちゃんは可愛い女の子だと聞いている。緊張するなあ。しかし断る理由にはならない。それに同じ年の子にも会って、この島のことをもっと教えて貰いたい。ほんと未だ、謎だらけだ。
「りょーかーい。夕ご飯になったら行くよ」
僕は電話なのに笑顔で答えた。
僕はサンタイルさんに目で合図した。
「紹介する手間が省けたよ」
サンタイルさんは白い歯を見せて笑った。
太陽が山稜に沈む。方角は分からないがここは海から日が昇って山に落ちる。時間を確認すると日の出はまだ分からないが5時には真っ暗になる。ランプの灯だけが頼りだ。けれど、アンジェリーナちゃんの家はサンタイルさんの家よりは明るかった。ランプがたくさん置いてあるからだろう。
今は仕事が終わって庭を抜けてアンジェリーナちゃんの家に行く途中だ。庭が広いので真っ暗な道が少し怖い。サンタイルさんと一緒じゃなかったら、庭を抜けないで道路に出てから隣に行っただろう。