(2)
「アンジェリーナちゃん、ここは何処なの?」
「セントジョーンズ島だよ、さっきも言ったじゃない」
そう言ってアンジェリーナちゃんはクスクス笑う。だからそれが解らないんだって!?仕方なくポケットを弄る。良かった、スマートフォンは持っている。せっかく見つけた大事なものを取り出して検索してみる。まずはここが何処なのかだ。だがWi-Fiが繋がらなくなっている。アンジェリーナちゃんは僕の手元を覗き込んだ言った。
「あ、それは何?」
「スマートフォンだよ」
「スマートフォン?」
この島にはないのかな。なんて説明したらいいんだ。
「携帯電話って知ってる?」
「ああ、それね、それは私たちと連絡を取るしか出来ないの」
え、えええ!不便だなあ。僕はあんぐりと口を開けた。アンジェリーナちゃんは言葉を続ける。
「そうだ!まずはクリストフくんが住む家を教えるよ。石で出来てるんだ。でも寒いから暖炉があるの。火の取り扱いには注意してね!」
僕の住む家まで用意されてるとは驚きだ。ここにずっと住むことになるのか!?でもイジメられている毎日よりましか。親にタバコの煙を吹きかけられることも無いだろうし。
街並みは整然としていて、都会だとは思うが古い趣を感じられる。写真で見たロンドンとかパリに似ている。でも島ってことは地中海あたりか。いや現実に存在しない場所なのかもしれない。僕はアンジェリーナちゃんの目線に合わせて腰を曲げた。
「僕はどれくらいの間、ここにいられるの?」
「うーん、分からない」
「分からない?」
「うん、クリストフくんが居たくなくなるまでかなあ。この島は楽しいよ。たぶん帰りたくなくなる」
「へ!?」
僕は眉間をあげて目を大きく見開いた。