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「あっ、クリストフくん、起きた?朝食はスクランブルエッグでいいかな?」
なんと!サンタイルさんが作ってくれるんだ!
「ええ、僕は何でも好きです」
「ハハハ、そうか、そうか」
「何か手伝いましょうか?」
「そうだなー。じゃあ、トナカイたちに草をあげて来てくれないか?」
トナカイって草を食べるんだ。初めて知った。鹿に似ているイメージがあるが、そもそも鹿が何を食べるかも分からない。
「悪いね、量は計って置いてあるよ」
僕は玄関の戸を開けて外に出る。ビュウっと冷たい風が吹いて来て思わず手を袖の中に入れた。トナカイがいる場所は家のすぐ隣だった。緑色と枯れたような草がミックスされている。サンタイルさんはこれを毎日欠かさずあげてたんだ。一人でこの広い家にトナカイと住むサンタイルさんをイメージする。あっ、でも僕が来る前も多分だが神に選ばれた人がここに住んでいた可能性も高い。比べて考えればそっちの方が有り得る。
トナカイに餌をあげて家に入る。テーブルの上に固そうなパンとスクランブルエッグが乗っていた。ピッチャーの中にはミルクらしきものが入っている。
「有難う。クリストフくん、トナカイは可愛いだろう」
「え、ええ。僕、動物は好きです」
「さあ、食べよう。食事が済んだら子供たちに配るクリスマスプレゼントの仕分け作業だよ」
僕はウンと頷いてパンを齧った。思ったより固くなくて噛めば噛むほど甘かった。
「動物が好きってことはジョリイも可愛いと思うかな?」
「はい、僕は犬も猫もネズミだって好きです」
「アハハ、ネズミかあ」
「あっ、日本は来年はネズミ年なんですよ」
「へえ、動物で年を表すなんていいね」
「いいですかあ?」
「さ、食べたら仕事だよ」
サンタイルさんが目を細める。僕は「はい」と返事をした。




