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パソコンは正常に起動した。見た事のないソフトがある。何だろう。ダブルクリックしてみた。動画が始まった。えっ、DVDが入っているのかな。そう思ってトレイの中を見たが何も入っていない。動画は僕の知っているリビングを映し出す。ここは僕の住んでた家だ。まだ若いがお父さんとお母さんがいる。 参ったな。繋がっていたのか。
僕はため息をついた。どういう作りか分からないが、僕の家のリビングが見える。お母さんが赤ちゃんを叱りつけている。4歳くらいに見えるってことは僕か。弟はまだ産まれたてのはずだ。
「こら、聖太、何度言ったら解るの?この玩具は勝手に遊んだらいけないの」
「だって、ママ」
「まったく、手が掛かるんだから」
お父さんが渋い顔をする。
「お兄ちゃん失格だぞ。クリスマスプレゼントはサンタさんに持って来ないようお願いしよう」
僕が泣いているのが見える。
「やだあ、やだあ、サンタさんにプレゼント貰いたい」
「じゃあ、ママの言うことききなさい」
お父さんは吐いたタバコの火を僕の顔に吹き付ける。
僕は眩暈がしそうになった。誰が何の意図でこれを僕に見せるんだろう。こんなもの見たって辛くなるだけだ。僕はパソコンに背を向け、部屋を出た。階段を下りるとぷうんとバターの匂いがした。ゲンキンなもので途端にいい気分になる。おまけに暖炉がパチパチ燃えていて部屋の中が暖かかった。




