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「釣り、興味あります」
網なんかで捕まえるのはあまり興味がないが、釣り竿で魚を釣ってみたい。お父さんが赤い頬をあげる。
「そおかあ、そおかあ、じゃあ、明後日が波が低いと、海の神が言っていたんだ。一緒に魚を釣ろう。サンタイルさん、クリストフくんを借りてもいいかな?」
「ええ、ええ、まだ、クリスマスまでには何日も日があるんでいいですよ」
僕はガッツポーズをして喜んだ。
「そうだ、クリストフくんの歓迎にこの島のクリスマスの歌を歌ってあげようか」
お父さんが言う。お母さんが「いいですね」と言った。お父さんはCDラジカセで音楽を流す。シャンシャン、シャンシャンという鈴の音が流れた。陽気な歌みたいだ。アンジェリーナちゃんがタンバリンを持ってくる。お父さんは得意げに歌い始めた。
「ここに歌詞カードがあるんだよ」
ノートを渡されるが全然読めない。みんなの歌っている歌詞は英語のように聞こえるが英語ではないみたいだ。聞いたことのない単語が羅列している。
「僕、読めないです」
「ああ、そうか、クリストフくんは遠い町から来たんだもんな。ゴメンゴメン」
お父さんは目を細めて口角をあげる。カッコいい顔だなあ。サンタイルさんもイケメンだがお父さんもかなり顔の作りはいい。それに比べて僕はパッとしない顔だ。何時も鏡を見るたび、嫌になっている。
みんがが歌い終える。次は僕が約束通り歌ってあげよう。静かな歌がいいかな。でも楽しい歌の方がいいか。僕は女性ボーカルのリズムのいい曲を選んだ。みんな手を叩いて喜んでくれた。
「クリストフくん、歌がうまいじゃないか」
サンタイルさんが言う。そんなこと言われたの初めてだ。
「僕はずっとここに居たいな」
誰にともなく言う。ちょっとシーンとなった。
「ここはね、とても住みやすいよ」
アンジェリーナちゃんが頬をあげる。小さい子に気を使わせちゃったかな。




