(11)
ビンゴ!やっぱり若い人だった。お父さんもイケメンだが、このサンタイルさんも相当なイケメンだ。赤い帽子に赤い服はイメージ通りだった。金髪の髭を生やしていて同じく金髪の髪は長くて後ろで結わえてある。黒縁眼鏡の奥の思慮深い目が僕を凝視する。グリーンの瞳は知性と教養の高さを思わせた。
「サンタイルさん!」
アンジェリーナちゃんが胸に飛び込んだ。サンタイルさんは「ハハハ」と笑った。みんな仲良しなんだな。僕の住んでた場所とは違うんだな。何だか胸がキュッとした。お父さんもお母さんも僕が居なくなって驚いているかな。弟は心配してくれているかな。いや、それは無いか。僕の知っている世界は大人も子供も不平等で混沌としていて残酷だったのだから。このキラキラ輝く世界の真逆だ。
「クリストフくん、どうした?」
サンタイルさんが僕を見て目を瞬かせる。
「いえ、何でもないです」
なんて言ったらよいか分からない。現世がどうなっているのか気になった。それをそのまま伝えていいのだろうか。この澄んだ世界を濁してしまわないだろうか。
「そうだ!クリストフくんはクリスマスが仕事だろう。だから先にプレゼントを渡すよ。歓迎パーティーのお祝いも兼ねてだけどいいかな?」
「えっ!?プレゼントなんて貰えるんですか?」
「ああ、ああ、パソコンっていう物だよ。僕は知らないんだけどね」
え、えええ!
「いいんですか?」
「ああ、ああ。神からだよ。そうだ、言付けがあって、見た物の内容は他言しないでと言っていた」
サンタイルさんは大きな段ボール箱にリボンが付いたものを差し出す。
「あの、ここはインターネットは通じます?」
「インターネットって?」
ああ、やっぱりか。じゃあ、あまり意味が無いな。ま、何時か使えるかもしれないから有難く貰っておこう。でも見た内容は言ってはいけないなんて何かあるのかな。