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気が付いたら外国の知らない街にいた。街並みからいうとヨーロッパの国が近いような気がする。金髪の人や、青い目をした人たちが道を往来している。
石で積み上げられて出来たような建物にはクリスマスのイルミネーションが飾ってある。外国に飛ばされて来たようだが、時間は僕の感覚と合っているようだ。日本にいるときは12月の始めだった。
なんで外国に来たんだろう。
疑問がモクモク頭に浮かぶ。に、しても、ここは何語だ?英語なら少しは解るがフランス語やイタリア語だったらお手上げだ。多分、挨拶もまともに解らないだろう。
何はともあれ、日本を離れ、ここに来たからには訳があるんだろう。僕がイジメられていて、親からも虐待に近いことをされていて、何処か遠くへ行きたいと願ったから神さまが叶えてくれたのだろうか。何処か遠くへ・・・そして如何したんだっけ。最近の記憶が少し欠けている。
ふと前に目をやると金髪をおさげにした小さな女の子がニッコリ笑って意味深な目つきをしていた。
「クリストフくん、ようこそセントジョーンズ島へ」
えっ、クリストフって僕は聖太だし・・・。それにこの子、日本語を喋っている。
「初めまして。ってか、何で日本語を喋れんの?」
「クリストフくんが解る言葉じゃなきゃ意味が無いでしょう」
確かにその通りだ。英語だとしても簡単な挨拶とディス、イズ、ア、ペンくらいしか解らない。僕は高校2年生だ。
「あの、クリストフくんって僕?」
「うん、その方が呼びやすいもん、私はアンジェリーナ」
僕は仰天した。どうやらここが外国という事は間違いないみたいだが、知らない間に外国に飛ばされたとして日本語が通じるという不思議さが残る。