V002話
V002話
僕、「多治見祝」は登校途中謎の怪物「クシオン」に遭遇し、命ここまでと走馬燈を見ていた所、白金高校のUSR部部長「秋元ナツミ」に助けられ……気が付いたら自分のベッドで寝ていた。きっと悪い癖が出たのだろうと頭を切り替えハマっているネットゲームを起動した所、憧れのユーザーからメールが届いて居たのだ。ドキドキしながら開封するとそこには大昔の裏技にありがちなコマンドが記入されていた……。
――数分後――
「ふしゅー…ふしゅー…」
祝は童貞だ。別に女性が苦手ではなく普通に喋ったりはする。だが今まで一切女の子と付き合ったことは無いし、拗らせてアニメのキャラに恋心を抱いたこともある。
そんな祝の目の前に超絶美少女でスタイル抜群の妖精が扇風機から飛び出してきたのだ。服装はサテン地の様なツヤツヤな質感のワンピースに綺麗な水色のマントを身に纏っている。下半身は飾りが入った黒いストッキングからすこし見える絶対領域が妙に妖艶だ。頭には大き目のピンクのリボン、胸元には可愛いハート型のネックレスが輝く。
「ふ―……さっき目の前で怪物を見たばかりなんだ、妖精の一人や二人で今更驚くかってーの」
虫眼鏡をのぞき込み、妖精らしき者を観察していく
「透き通るように純白い肌、宝石の様に黒く輝く髪、そして衣装の上からでもわかる盛り上がったお胸……」
「それになんかさっきからすごくいい匂いがする……もっと近くで嗅ぎたい…な…」
祝が顔を近づけ香りを嗅ごうとした瞬間
パチッ
「きゃあああああああ!!!」
ボコォォン
「なんですか!なんですか!あなたは!」
「……顔どうされたんですか?」
「……キミのせいだよ」
祝の顔には妖精らしき者が目覚めたと同時に飛んできたローリングソバットを頬にくらい、足形がくっきり付いている。
祝はこれまでの事を説明した。妖精が扇風機から現れた事、看病した事……
「迷惑を掛けたみたいですね。ありがとう。あたしはレファ…やっぱり長いのでレニーでいいわ。よろしく祝」
大きな緑色の瞳を輝かせこちらをみて微笑む
「あぁよろしく」
気を失っている間じっくり観察していたなんて言えない。祝は話を進めた。
「レニーはどうして扇風機から現れたんだ?僕の入力したコマンドが異世界への扉を開いてしまったせいなのか?」
祝は若干中二病だ
「コマンド?何のこと?私はただ……自分の力で扉を開いてこちらの世界へ来ただけよ」
自信無さげにレニーは答えた。胸のネックレスがキラッと光る。レニーは話を続けた
「あなたの額に埋まってしまった石…輝香玉に輝きを取り戻すのが私の目的なの。何も聞かずに私に協力してくれませんか?」
真剣な表情で祝の目を見ながら頭を下げた。
「いいよ。」
「えっ?」
「いいよって言ったんだよ」
「でっでも怪しいとか思わないんですか?私扇風機から出てきた得体のしれない生命体ですよ!?」
「……僕、憧れていたんだ。いつかファンタジー小説の様に誰かの為に行動する事に」
祝の目はキラキラしている。
「んで何をすればこの輝香玉に輝きを取り戻す事ができるんだ?あっそれよりもこの輝香玉の力で僕にもチート能力が備わったりしたのかな??魔法が使えたり、超人的な身体能力を得たり……」
祝はルンルンだ。まるで物語の主人公になったかのように生き生きしている。
(何この人間は!?普通怪しむでしょーよ…まぁ協力してくれるって言っているから、しばらくお願いしちゃおうかな)
「輝香玉に輝きを取り戻す方法は……」
「うんうん方法は?」
「異性の香りを嗅ぐ事よ」
「……は?」
「異性といっても年が離れすぎていたりしてもダメ。そうね…大体人間年齢で上下5歳位までね。異性の香りを嗅ぐことによって香りエネルギー『パルフェ』が輝香玉に蓄積されていくわ」
「それとあなたが思っているような能力は備わっていないよ」
「……HA?」
「輝香玉を継承した人間は吸い込んだパルフェを利用し、武器を生成することができるの。それは吸い込んだ香りによって形状は変わっていくわ」
「武器化なんて物騒な……。ん?ってことは以前にも輝香玉を継承した人間がいたってこと?」
「あ!…いや…あたしにはよくわかんないの……」
「んーまぁいいか。じゃあこちらから一言あるんだけどいいかな?」
「ん?いいわよ」
「同年代の異性の香りなんて嗅いだことないので僕には無理ですぅぅぅ。すぐ輝香玉を取り出してくださいぃぃぃ。」
祝は悲鳴を上げるようにレニーに対して土下座し懇願する。
「無理よ」
「ふぇ!?」
祝の全身全霊を込めた願い事は一瞬で却下された。
「一度取り込まれた輝香玉は輝きを取り戻すまで外れることはないの。無理やり外そうとすればあなたの脳みそごと取れてしまうわ。」
「そっそんな……」
まるで世界が滅びたかのように落胆する祝
「…キュオーーーン!キュオーーーン!」
「え!?何この音??」
「あぁこれは2年前からクシオンっていう怪物が現れるようになってしまったんだ。それで政府が出現の光を感知して近隣住民に危険をサイレンで知らせているんだ。」
「行こう!祝!」
「えっ!やだよ!」
「お願い祝!!」
「いやだって!」
「ぐすっおねがい……いわいぃ…」
「よしっ!行くぞ!」
「ふっ。ちょろい」
「なんか言ったか?」
「ううん。何も言ってないよ。ささっ行こう!」
タッタッタッタッ
家を飛び出し騒ぎのある方角を目指し走り出す。夕方で辺りは薄暗くなってきた。
「おーい!本当にこっちの方角でいいのか?」
「大丈夫!こっちのほうから匂いがする!」
「レニーも相当鼻がいいんだな。」
「え?普通よ。これくらい」
「まぁ妖精にとってはそれが普通なのか…」
「もううるさいよ!もうすぐ着くはずだから注意して!」
「うるさいって……レニーの為に頑張って走ってるのに」
「おやおや、仲がいいねぇ」
「あ!こんにちは。今日も仲良しですね」
近所に最近引っ越してきた老夫婦が夕方の散歩をしていた。
「この辺りは危険なので早く家に帰った方がいいですよ」
「そうかいそうかい。ありがとう」
祝が声をかけ、また走り出した。
ドゴーン!!!
衝撃音が響き渡った。今現在クシオンと交戦している者がいる。祝とレニーは物陰に隠れ様子を伺う事にした。そこには銀色のマントをなびかせ5~6体はいるであろう人型クシオンを相手に一歩も引かず戦いを挑む戦士がいた
「ナツミ先輩だ!」
ナツミは次々とクシオンに打撃を食らわせ消し去っていく。その一撃一撃は遠目から見ても強く・重く・そして美しく思えた。
「さぁお前で最後の1体だ。……覚悟しろ」
ナツミが構えを取り攻撃にうつろうとしたその瞬間、クシオンが祝に気が付いたのだ。次の瞬間
ドクン
「ごぁあぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
クシオンの様子が見る見るうちに変わっていく。
「なっ何!?何が起きた?」
ふっ
辺りが急に暗くなった次の瞬間
ボコォン
「きゃあ!!」
巨大な何かがナツミをふっ飛ばしたのだ。瓦礫に叩きつけられるナツミ、クラクラになりながらも敵の姿を確認する。
「巨大化……だと…」
ゆうに10m超えているだろうか、先程戦っていたクシオンの最後の1体が巨大化したのだ。
だがナツミは戦意は失っていない。体を起こし瓦礫から抜け出した瞬間、脚部に装備したブースターを起動し素早くクシオンの懐へ入り込んでいく
「うおおぉぉぉ!」
ズダダダダダダダッ
拳のラッシュを叩き込む。巨大化したクシオンもたまらず両腕でガードを作り猛攻を防ぐ。
「くそっ!このままでは先にこちらがバテてしまう」
午前中の一斉に続き、連戦のナツミにとってこの状況は想定外の事であり、身の危険を感じるには十分だった。
「まさか……この技を使う事になるとはな」
距離を取り構えを解いたナツミは深く呼吸をし、半身で構え直し左腕を前に出した。右腕に装備されているガンレットが赤く輝きだす――
「激鉄!煌麟掌ぉぉ!!!」
ボゴォォォン!!!
辺りに激しい衝撃音が鳴り響く
「はぁっはぁっ……手ごたえはあったが……」
ズォォォォン
渾身の力を込めて放った一撃はクシオンを倒す事が出来なかった
「クソッ仲間を呼ばな…」
ブンッ
「ぐはぁっ」
薙ぎ払われたナツミは瓦礫の上を転がり、偶然にも祝とレニーの近くまできていた。
「ナツミ先輩!」
どうやら気絶をしているようだ。
銀色のマントの下は白金高校の制服。スカートの下には短いスパッツを履いていて、上半身の袖が破れ腋が露出している。胸元のボタンが上から3つ程外れており薄いピンクのブラと共に小振りな谷間が見えていた。
「祝!今だ!あの子の香りを嗅ぐのよ!」
「ここで!?」
「早くしないとあの怪物がくる!!あの子のことは心配しないで!!あたしはこれでも回復術が使えるから!!」
ズーンズーン
怪物は一歩一歩こちらへ近づいてきていた。
「くそっ!これは不可抗力だ!ナツミ先輩!失礼します!
セリフとは裏腹に若干ニヤついた表情でナツミの近くへ駆け寄り、祝がナツミの身体に鼻を近づける。すると今まで感じたことが無いような気持ちに包まれた。
「これが輝香玉の力!?嗅覚が鋭くなったのが自分でも分かる!!香りの発生源の道筋が目に見えるようにはっきりが見えるようだ!!」
「それがさっき説明したパルフェよ!道筋をたどって一番のパルフェを嗅いで!」
祝が道筋をたどり辿り着いたのは、両腕を上げ露わになったナツミの腋だった。先ほどの戦闘でかなり汗をかいていたのかしっとりと濡れている。処理はしているようでムダ毛は無くツルっとしていた、それに夕日に照らされてか少し輝いて見える。祝は汗によって多少砂埃がついたナツミの腋に鼻を近づけた……
クンクンッ…スゥーーーー
「はわぁぁあぁ……なんていういい香りなんだ……。初めはツンとする香りが後にくる甘さとフェロモンの香りに合わさって、これまで感じた事のない幸福感にを味合わせてくれる……。フワッと香る砂の香りもいいアクセントだ。これは一生嗅いでいられそう。それとなんだか力が湧き出るような感覚が……」
ブワッ!!
祝の身体の周りにあふれ出したパルフェが渦巻いている。前髪で隠れていた輝香玉も露わになり金色に輝いた
「こっこれは!?」
「今よ!思いっきり鼻からパルフェを噴き出して!!」
「もうなるようになれ!」
ふぅぅぅうぅぅぅーー!
辺りがパルフェの煙で包まれる。煙が晴れると、祝の両手には鮮やかな黄色の武器が握られていた
「これって確か……トンファー!?」
50㎝程の棒の端に垂直に握り手が付いているお馴染みの武器である
「こんなちっぽけな武器であの巨大な奴を倒せって!?使い方だって無双シリーズの○策の見様見真似しかできないって!」
「でも待てよ……今の僕はいわゆる覚醒状態……なんとかなるのかも!」
「うぉぉぉぉぉ!!!」
祝はトンファーを握りしめ巨大化クシオンに立ち向かっていく
ベシッ
クシオンに軽くはたかれ数十メートル程宙に舞う祝
「あぁ…この高さは死ぬかも。せっかく物語の主人公になれたと思ったに僕は結局僕だったな……」
攻撃をくらい、もうろうとしている意識の中で今度こそ死を覚悟した
「……ぃ!」
「わい!」
「祝!」
空中で必死に呼びかけるレニーの声に気が付いた
「祝!パルフェによって生み出された武器の使い方は普通とは違うの!!」
「握り手にボタンがあるでしょ!?それをあいつに向かって押して!!」
トンファーの握り手には確かに小さなボタンが付いていた。
「これであいつを倒せるの…か…?」
「絶対倒せる!」
空中で体制を立て直し地上で待ち構えるクシオンに向けて両手を突き出し標準を合わす。
ポチッ
ズババッ!スチャッ!グォン!キュィィィーン!!
見る見るうちにトンファーが姿を変えていく。持ち手の部分はそのままに棒の部分が巨大化し重々しく機械的になった。先にはロケットブースターの様な巨大な穴が開いている。
「え?ロケット??」
次の瞬間、巨大な火柱を噴射し、祝もろとも超加速をしながらクシオンに突っ込んでいく
ヴォォォォォォ!
目も開けられない風圧の中、祝が叫ぶ
「これで最後だぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドゴォーン!!!!
まともに受けたクシオンは衝撃でふっ飛ばされ空中で消えゆくのが確認できた。
武器も消えロケットの衝撃で倒れ込んだ祝だったがすぐに起き上がり
「よっしゃーーーー!!僕が倒したんだ!!」
先程まで金色に輝いていた輝香玉も元の色に戻ったが、気のせいか少し色が変わっている。
「そうだ!ナツミ先輩は!?」
「あぁ、あの子ならあなたが戦っている間に、同じような銀色の服を来た子達が運んで行ったわ」
「そっかぁ。無事でよかった。じゃあ僕らも帰ろうか!」
「そうね!」
(……今回は現れなかったか)
「そういえばレニーはどこで寝泊まりするの?」
「あら?祝の家に決まってるじゃない」
「えぇぇーー!」
「大丈夫よ。普通の人間にはあたしは見えないし、必要な物はこちらで準備するから」
「えぇ……でも…」
「そういう風に困った顔しながらニヤけるのはやめた方がいいわよ。」
「そっそんなつもりじゃ!」
すっかり日が落ちて暗くなった街を僕とレニーは喋りながら帰った。これから始まる過酷な?運命に巻き込まれるとは知らずに…
「あれっあれは…」
「友達?」
雪の様に真っ白な髪をした少女が誰かと話している
「うぅん、なんでもないっ。行こっ」
少女はそのまま街に姿を消していった。




