体育祭11
眠い。
(これは…剣術大会や他の対人訓練の時には、絶対にやらない方がいいな…)
俺は初めて使った剣と魔法の合わせ技を見て、学校で使ってしまったら必ず死人が出ると思い…
学校では禁止すると心に決めた。
すると、急に温度の変化を感じ取り…俺は魔物の方を向いた。
その光景は残酷なまでに魔物の姿はみにくいもんへと変貌を遂げていた。
そこには、元々の姿をした魔物はどこにも存在していなかった。
魔物が燃えていた炎は燃え尽きた様子になり…
多少の肉はついてはいるが…ほとんど骨の状態になっていた。
俺は不意に魔物が燃えていた時に剣士長が何かを口にしていた事を思い出し聞き直す事にした
「なんか言ってたか?」
「いえ…なんでもないです…」
剣士長は俺が圧を掛けていると思ったのか恐縮そうに答えてきた。
「そうか、そういえば剣を返すのを忘れていたな」
俺はそう言うと手渡しをしようと剣士長に近づいた
「剣が壊れると思いましたよ…ですが、見た感じ傷1つもついていなさそうですね」
そんな話を口にしていた剣士長の手に剣が移った…
すると、俺の手から離れた途端…
剣が粉々に砕け散ってしまった。
俺の手から剣が離れた結果、俺が剣に付与していた魔法が切れてしまったのがキッカケで、付与されていない剣では…あの攻撃を耐えられるわけもなく粉々に砕け散ってしまった…だと、俺は考察した。
「な、なんという…ことですか…私の…け、剣が…」
剣士長はショックを受け、落ち込んでいくのが俺の目には映った。
「ジェイコブ剣士長、お詫びと言っては何だが…この魔物を倒した手柄を譲るぞ?」
俺は剣士長に悪いと思いお詫びの方法を提案した。
「いえ、さすがにそれは…そんなことをしてしまったら、私の評判は良くなると思いますが。逆に1人で倒した事があると言うことで、これから1人で討伐に行かされる可能性が高くなるかもしれないので…自分の身を自分で削るようなものですよ」
剣士長の言っていることは正論だった。
いくら高評価を得られても実力がともなっていなければ、自分の身を亡ぼす事につながるのだ。
そして俺の提案はその結論に至った時点でいい迷惑と言うやつになってしまった。
「そうか、ならまた何かあったら遠慮なく言ってくれ…俺はそろそろ学校に戻るとするぞ」
俺はお詫びに何をしたらいいのかわからなくなり剣士長に丸投げして、学校に戻ることにした。
「はい、その時はぜひお願いしたいと思います」
剣士長は頭を下げ、まだ戻らない気でいるのか…その場から動こうとはしなかった。
「戻らないのか?」「私はこの魔物の骨を回収してから戻りますので、先に戻っていてください」
俺は剣士長の言葉に頷き、学校へ足を向けた。
「ただいま戻りました」
俺が戻るころには既に残り1種目しか残っていなかった。
「やっときたか、ちゃんと近隣の方々に謝ってきたか?」
俺が戻ってきた途端に先生は意味不明な言葉を口にした。
「どういう事ですか?」
「とボケても無駄だぞ、ちゃんと校長先生からお話を伺っているんだからな」
(校長…うまく伝えてくれると言っていたはずだよな…どこがうまく伝えたんだ…これでは、俺が悪い事をしたみたいになっているな…)
俺は心の中で校長のグチを吐きながらも今更変えることも出来ないので仕方なく校長と話を合わせることにした。
「ちゃんと、謝ってきましたので安心してください。それで…残りの1種目は、なんですか?」
「残りの1種目は3組対抗3本綱引きだ。ちょうど、お前が出る種目だ間に合ってよかったな」
俺は先生の話を無視し所定の位置に移動することにした。
(俺が居ても居なくても戦況は変わらないと思うが…今、俺達のクラスは負けているのか勝っているのかすら把握できていない俺は、完全な足手まといかもしれないな…)
などと、くだらない事を考えていると入場の時間になり、俺達は移動することになった。
(初めての体育祭…楽しみだ…)
おやすみなさい。