間章その一『星波学園の人々』9
★夜衣斗★
………ってか、普通、転校生が転校してきた初日は、質問攻めにあうのが通例なんじゃないのか?………何だかクラスメイト達は、こちらの様子をちらちらと見ては、こそこそと会話を交わしてはいるが、こっちに来る気配はちっとも無い………まあ、期待していたわけじゃないし、来られてもまともに会話が出来るわけじゃないから、助かる事は助かるが………警戒されているのか?………それともこんな暗い奴とは会話をしたくないとか?
クラスメイトに視線を向けている俺の視界の隅で、村雲が苦笑した。
その苦笑の意味が分からず、視線を村雲に向けると、村雲は俺の机に頬杖を突きながらクラスメイトを見る。
「こいつら、互いに牽制し合ってるから、下手に黒樹に近付けないのさ」
牽制し合ってる?
「それに、条約もあるからな」
条約?
「まあ、明日になったら嫌でも関わり合いになるさ」
………意味が分からない。
「……ところで……黒樹は何部に入るつもりなんだ?」
そう言って意味深な笑みを浮かべてクラスメイトを見る村雲。
なんだかより注目が集まったような……。
と言うか、なんかみんな押し黙ってないか?まるで俺の次の言葉を一字一句聞き逃さない様に………。
よく分からない緊張感の中……とりあえず質問に答える事にした。
「帰宅部」
その俺の一言に教室全体が一気に騒がしくなった。
わけも分からず教室をきょろきょろ見回すと、中にはガッツポーズをしている奴とか、ハイタッチを交わしている奴、慌てて教室から出て行くやつ、携帯を使ってどこかに何かを報告している奴とかがいた。
本当に訳が分からない。……もしかして、本当に帰宅部があるとか?………いや、そんな雰囲気じゃないな。
唐突に村雲に肩を叩かれた。
「っま、がんばれや」
……何をがんばれと?
分けが分からな過ぎて………再びため息が漏れる。
その時、ふっと気付いたのだが……教室の中に一人だけこの騒ぎに交じってない女子がいた。
前側の席にいるので背中しか見えないが、腰の所まである三つ編みが印象的だった。
じっと見ていると、視線でも感じたのか、不意にその三つ編みの子が振り返り、目が合った。
一瞬の間の後、ついっと正面に顔を戻した。
その一瞬の間、俺には彼女の瞳に怒りと恐怖が入り混じった感情があったような気がした。
……まあ、気のせいかもしれないが…………キリッとした美人だったな……美羽さんが動の美しさなら、彼女は静の美しさと言うか…………何考えてんだか……