間章その一『星波学園の人々』6
★夜衣斗★
「初めまして黒樹夜衣斗君。私が君の担任の高木弥恵よ。よろしくね」
そう言って頬笑み、手を差し伸べた高木先生は、何故か大きめのサングラスを掛けていた。
サングラスで目元が隠れ、顔に僅かなしわがあるが………間違いなく美人な先生だった。
美人である上に、今まで握手を求められる事をあまり体験した事がなかったので、かなり緊張しつつ、手を差し出す俺。
ちょっと間があった。
何故か互いに手を空中に差し出したまま固まっていた。
俺が?マークを浮かべる前に、ちょっと困った様に、
「ごめんなさい。私ね、目が全く見えないの」
そう言って、サングラスを少しずらす高木先生。
ずらしたサングラスの向こうに、思わず目を見開くような酷い傷跡があった。
ずらし方が絶妙だったので、目がどうなっているか分からないが………これだけの傷跡だ。もしかしたら、義眼になっているかもしれない。
……なるほど、だからサングラスを掛けているのか……
今気付いたが、高木先生の机には杖が立て掛けられていた。
ちょっと考えれば気付いただろうに………俺もまだまだだな。
などと考えていると、差し出したままの手が握られた。
驚いて握った相手を見ると、高木先生だった。
目が見えなんじゃないのか?
と疑問に思ったが……よくよく思い出してみると、こんだけ近いのだ。多少手を彷徨わせれば、手に当たる……の割には、ジャストで握手された様な……
「驚いた?私、ずっと目が見えないせいか、ちょっと集中すれば気配で人の位置とかが分かるの」
……なんだか武術家みたいな人だな……
「後ね。黒樹君。相手から握手を求められている時は、自分から、それほど間を置かずにするのがマナーよ」
「……すいません」
「わかればよろしい……じゃあ、教室に行きましょうか?」