間章その一『星波学園の人々』4
★夜衣斗★
学園大橋を抜けた先に、五つの大門があった。
「学園大門です」
そう言って、美羽さんはさっさと真ん中の門へと向かう。
俺も美羽さんに続き、門の脇に立っている警備員らしき人と、風紀委員らしい小中高の学生を発見した。
その風紀委員を見た時、腕に付けられている腕章の文字に、俺は首を傾げた。
腕章には『武装風紀委員会』と書かれていたからだ。
俺のその疑問の視線に気付いた美羽さんが、俺に近付き、小声で、
「あの人達は、星波学園統合生徒会直属の実働部隊です」
統合生徒会?小中高大の生徒会が一つになってるって事か?ってか、直属の実働部隊?
「昨日も言いましたけど、星波学園は星波町の中で最も武霊使いが多い所です。当然、武霊に関するトラブルは毎日と言ってもいいほど起きてます。そのトラブルをいちいち自警団の人達を呼んで解決するわけにもいきませんから、星波学園生徒会は星波学園の生徒で構成された自警団を作って、学園内で起こったトラブルの解決をさせているんです」
……なるほど……それは分かったんだが、何でこそこそしなくちゃいけないんだ?
「とにかく、夜衣斗さん。ちゃんと『生徒カード』を持ってきましたか?」
などと言いながら、美羽さんは俺を上手く引っ張って、他の生徒の影に隠れて武装風紀委員に見えない様に門の中へ入った。
……仲が悪いのか?
生徒カードとは、星波学園の全生徒に生徒手帳と共に渡される身分証明カードで、ICチップが内蔵されており、学園内限定で電子通貨としても使えるらしい。
登下校時には、このカードを使って、生徒の登下校状況を確認するらしいが……。
門の中程に、駅とかで見かけるような自動改札機がいくつもあるのを見つけた。
そこを生徒がカード入れなどをかざしながら、次々と通っている。
……なるほど。
俺は胸ポケットにしまっていた生徒カードを取り出した。
生徒カードっと言っても、俺のカードは顔写真の所に仮っと文字か書かれている仮生徒カードで……なんでもこればっかりは代理でやるわけにもいかないらしく、本人が直接事務所に言って作ってくる必要性があるらしい。
……今さらだが、本当に普通の学校じゃないって事を実感してきたな……ん?カードで生徒の登下校を確認する学校は他にもあったか?……まあ、どうでもいいか。
などと思いながら、自動改札機を通り、大門を抜けると……一瞬、俺は今、どこにいるのか忘れてしまう光景が目の前にあった。
様々な花や木が咲き乱れ、噴水や石像が所々にある……まるでどこぞの金持ちの庭園の様な……。
「驚いたでしょ?ここ、学園庭園って名付けられているですよ……なんでも、理事長の趣味兼園芸部とかフラワーアレンジメント部とかが異常なほど気合いを入れて造ってるとか」
………うん。やっぱり、普通の学校じゃねぇや、ここ。