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間章その一『星波学園の人々』1

  ★夜衣斗★

 昨日は色々と最悪だった。

 そう思いながら、俺は初登校の準備をしていた。

 最悪の犯罪武霊使いとか呼ばれていた高神姉弟に襲われるわ、その二人の最悪の過去を聞かされるわ………極め付けは、叔母でありこれから何年かお世話になる春子さんが………家事全般が全く出来ない事を知った事だ。

 前者二つとは最悪の種類が全く違う上に、あまりにも日常とかけ離れているから、頭では後者より最悪だと思っているが………正直、実感が湧かない。だが、後者のその事実は生活と直結している上に、ある意味死活問題な事なので………もう、本当に最悪だった。

 それは、昨日の夜、お隣の赤井家が俺の歓迎会をわざわざしてくれた時の話だ。

 そんな事をされたのは初めてだったし、美羽さんの両親も美羽さん同様にとても明るくていい人達だった。ので……何と言うか、かなり居心地が悪かった。と言うか、何でただのお隣と言う関係で、ここまでしてくれるのか謎だったし、それを、まるでいつもの如く平然としている春子さんが謎だった。

 っで、その理由は、歓迎会中に暴露された。


 「ところで、夜衣斗君は知ってるの?」

 と美羽さんのお母さん美衣(みい)さんがそう話を切り出した。

 その時、にゃははっと笑いながら美羽さんのお父さん羽流(はる)さんと酌を交わしていた春子さんの動きが固まる。

 それに疑問符を浮かべつつ、美衣さんに視線を向けると、面白そうに笑いながら、

 「春ちゃんが」

 春子さんの事を美衣さんはそう呼んでいるようだ。

 「ぜんぜん家事出来ない事」

 一瞬、言っている意味が分からなかった。

 何故なら、俺は母親から春子さんが、昔は駄目だったが、今は立派に自立している女性だと聞いていたからだ。

 ちょっとの間を置いて、美衣さんの言葉の意味を理解し、絶句した。

 ……まあ、もともと喋ってなかったが……。

 「春ちゃんがこっちに引っ越してきた頃にね。春ちゃん、あの借家を、ちょっとしたゴミ屋敷き化しちゃってね」

 じろっと春子さんを見ると、春子さんは思いっきり目を、と言うか顔を逸らした。

 「軽い騒ぎになっちゃって、家主さんは怒るわ、春ちゃんは泣き出すわで、大変だったなぁ」

 ………

 「っで、あーだこーだしている内に、私が春ちゃんのお世話をする事になったの。そこから、もうなんだか、手のかかる妹が出来たみたいで………本当の家族同然に付き合ってるのよ」

 聞いてないな………そんな話。………とりあえず、

 俺は無言で、携帯を取り出し、母親の携帯にリダイヤルしようとして、物凄いスピードで春子さんに抱き付かれた。

 酒臭いは、胸が当たってるわ。脳みそ大混乱。

 「姉さんには報告しないでぇ〜今の生活を知られたら、私、姉さんに殺されるぅ〜」

 ……どんなイメージだ。そんな人じゃないぞ。俺の母親は……多分。

 「別に大変じゃないから、気にしなくていいのよ」

 と苦笑しながらそう言う美衣さん。

 そう言われても………これから、春子さんじゃなくて、お隣とは言え、赤の他人の美羽さんのお母さんにお世話になる事になると考えると………はあ、無茶苦茶気が重いし、恥ずかしい。


 そんなわけで、朝食を赤井家で春子さんと共にいただいているわけで………。

 ご飯・お麩とわかめのお味噌汁・ベーコンエッグ・レタスのサラダ・オレンジジュース。

 なんだか、久しぶりにまともな朝食を食べた気がする。

 俺の両親は、仕事の関係上、家を空ける事が多かった。

 昔は、俺が物心を付くか付かない頃まで、仕事の度に引っ越していたらしく、それでは息子の精神教育上よくないんじゃないかって事で家を買ったらしいんだが………まあ、それで一緒にいられる時間が、出張とかで大幅に減ってしまった訳だから………どっちがよかったのか…今の俺にはよく分からないな。どっちでも『失敗』してそうだし………それにしても、ジャージ姿じゃない美羽ってのは………いや、まあ………それにしても、急な転校だって言うのに、何で俺の制服が既に用意されているんだろう?着といてなんだが………普通、転校したら何日かは新しい制服が出来るまで、前の学校の制服で登校するってのが、一般的なんじゃ?教科書とか学校に必要な物も全部そろってたし………まあ、まんがとかからの知識だから、当てにはならないが………。

 そんな事を考えつつ制服を気にしていると、美羽さんがそれに気付いたのかくすりと笑って、

 「夜衣斗さん。ここがどんな町か、もう十分過ぎるぐらいわかってるでしょ?」

 ……なるほど、服作りとか物作りが得意な武霊がいても不思議じゃないな……ってか、本当に俺って考えが読まれやすいんだな……それとも、美羽さんが考えを読むのが得意なんだろうか?……後者であって欲しい。いや、マジで。

 今までの事を走馬灯の様に思い出しながら、俺は溜め息を吐いた。

 「駄目じゃない夜衣斗君。朝から溜め息なんか吐いちゃって」

 と言って笑う美衣さん。

 「……すいません」

 何となく対応に困って謝ってしまった。

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