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第一章『武霊のある町』42

  ★夜衣斗★

 衝撃的な話を聞かされて固まっている俺に、謎の電動車椅子の男は更に衝撃的な事を語り出した。

 「「……しかも、高神麗華は『生まれた時から』、高神礼治は『誘拐されて』だ」」

 な!な!なんだそりゃ!?っと、と言うか、待て待て待て!ここは日本だぞ!そんなふざけた話

 「「ないと言い切れるか?『人の宿命の悪意に晒された事がある』君が?」」

 っな!

 どうしてそんな事を知っている!?そう思考する前に、電動車椅子の男は続きを語り出した。

 「「麗華の両親は、地下売春組織を運営している人間だった。人を人として思わない、全ての価値を金銭で測る人間のクズ。そんな二人が、互いを愛し合って結婚するわけもなく、ただ組織を運営していく上で、都合がよかったから夫婦になった。そんな関係だった」」

 ………。

 「「そんな二人の間に産まれた麗華は、当然祝福されるわけもなく、『予定通り新商品が入った程度』にしか思われていなかった」」

 ……気持ち悪い……。

 意志力の使い過ぎとは違う、頭のくらつきが俺を襲い始めた。

 武霊とは違う、あまりにも非日常的で、酷い話だから脳が拒絶し始めているのかもしれない……だけど、それを否定できるほど、俺は世界を知らないわけじゃない。

 どこかの国では、今現在も親が子を売り家を建て、それまたどこかの国では少年少女を麻薬漬けにして洗脳し兵士にする。

 そんな話は、この世の中に腐るほどある。

 更に過去をも視野に入れれば、それこそ底が見えないほどに……。

 それらの情報は、あくまで『間接的に知り得た情報』だ。

 だが、それが全て偽りだと言えるほど、俺は人間を信じられないし、また人間を知っている。

 だから、電動車椅子の男の話を完全に否定する気にはなれなかった。

 ……ますます気持ち悪くなった。

 目をそらしていた残酷な光景のある方向に、無理矢理頭を押さえ付けられて見せられたのだから、当然と言えば当然だが……。

 そんな俺の感情と状態が伝わっているわずの電動車椅子の男は、特に気にもせず話を続けている。

 「高神と言う名字。麗華と言う名前。それは本当の彼女の名前じゃない」」

 偽名だと?

 その俺の問いに、電動車椅子の男は首を横に振る。

 「「彼女は両親に名前すら与えられていない。買われた客には適当な名前で呼ばれ、両親には物としてあれやこれなどと呼ばれていた」」

 ………。

 「「彼女が自身の事を高神麗華と言う名前は、彼女に唯一与えられていたテレビで見たアニメ、その登場人物に憧れて付けた様だ」」

 ………そう言えば、昔見たアニメの中に、高神麗華ってキャラクターがいたような………確か、とてるもなく大金持ちで、何もかも持っているアニメにありがちなキャラクターだったような………まさに正反対のキャラだな。

 「「日々売春を強要されるそんな生活の中でも、彼女は言葉を覚え、心を手に入れていた。しかし、そんな環境で、そんな親から生まれた彼女が、人としての心を持てるはずもなく、多く欠けた心を構築していた。やがて、顧客のニーズに応える形で、誘拐され売春を強要されていた礼治が弟として麗華にあてがわれた」」

 平然とノートパソコンに言葉を打ち続ける電動車椅子の男。

 俺はいつの間にか気持ち悪さは吹き飛び、身体のそこからふつふつとわき起こる怒りで、思考にすら言葉が浮かばず、いつの間にか握っていた両手が震え出す。

 「「麗華の弟としてあてがわれた礼治は、誘拐され、売春を強要されるそんな絶望的な状況の中で、唯一自身に優しく接してくれる麗華に、礼治は恋をし、麗華が求めるままに本当の弟の様に演じる様になる」」

 ……なんじゃそりゃ!!?………いや…まあ、考えて見れば、赤の他人である二人が、ずっと姉弟として生活しているんだ。そこに何らかの理由があるのは当然だろうが……恋って……漫画じゃあるまし……ストックホルム症候群か?……まあ、実際の所は、本人にしか分からない事なんだろうけど……適当言ってる感じでもないし……なんだかな。酷い話の中にそんな話が出てくるとなると、なんだか酷く異質に感じるな……。

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