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第一章『武霊のある町』37

  ★美羽★

 防御系の能力を持った武霊を先行させながら、私達は慎重に山を登っていた。

 夜だと言うのに明かりも付けずに登っているので、暗視能力を持った武霊の力を借りながらだからとても遅い。

 なんで一気に攻め込まないのかと言うと、それは『狙撃』される事を防ぐ為。

 実は高神姉弟は、『拳銃やマシンガンなどの銃火器を持ってる』。

 どこから持ってきたのかは分からないけど、前に人海戦術で武霊を使えない状態に追い込んだ時に使われて、何人もの負傷者が出た事があった。

 だから、こんなに慎重に進んでるんだけど……ん〜いくら警戒しながら進んでるからと言っても、結局は廃校までの道は一本道。そろそろ狙撃なり、待ち伏せなり、あってもいいはずなんだけど……なんだか嫌な予感がする。

 他のみんなもそう感じたみたいで、歩みが更に遅くなった。

 不意に、どこからともなく呑気な口笛が聞こえてくる。

 驚き、構えようとする前に、

 「いた!」

 と後ろから聞こえた。

 不信の視線を後ろに向けると、東山さんが無言で美春さんにどつかれている。

 「いたいって、美春」

 「黙れ馬鹿刑事」

 口笛の犯人は東山さんだったみたい。

 ……何やってんだかこの人は……。


 廃校校門近くまで、何も起きずに来れた。

 何もない事はいい事だけど……今までの事を考えると……とても不気味だった。

 「どうします美春さん?」

 そう小声で美春さんに問いかけると、美春さんは少し考えて、唐突に校門へと歩き出した。

 「っちょ!っちょと美春さん!?」

 突然の行動に、慌てて後に続こうとする私達を、美春さんは手で制し、まるで獣の様に四つん這いになる……片手がギブスで塞がれているから、三つん這い?

 「行くよ。コロ丸」

 そう美春さんが言うと同時に、美春さんの身体のまわりに半透明のコロ丸が、まるで身にまとっている様に現れる。

 レベル3化。

 武霊を自分自身に身に付けて、半具現化させる武霊使いの中でも数えるほどしか使えない具現化。最も武霊使いの近くで常に具現化している為か、普通の具現化以上の力を武霊は発揮できる上に、レベル1レベル2ではただ守られているだけの武霊使いが一緒に戦えるようになって、直接武霊を操れるようになる。武霊を身にまとっているから、武霊使い自身も人間以上の身体能力を発揮できる様になるんだけど……その反面、意志力消費が最も高くなるのと、肉体的にも負担が掛る様になるので、短時間しか使えない。

 今の美春さんは怪我をしている上に、昨日、意識を失うまで意志力を使ったって聞いているし、とてもレベル3化を使える状態じゃない。無茶ばかりして……一体何を考えているんだろ?

 美春さんの真意に疑問符を浮かべている間に、美春さんはあっと言う間に校門の向こうに消えてしまった。

 緊張が私の周りを支配する。

 私はいつでもコウリュウを出せる様に、身構える。

 あくびをする東山さん。

 全員ににらまれる東山さん。

 ……この人は……

 ………何も起こらない。

 音もしない。

 自警団の人に目線を向けると、困った顔をされた。

 どうしよう?

 そう思っていると、校門から具現化を解いた美春さんがゆっくりと出て来て、私達に手招きをした。

 もしかして……逃げられた?

 高神姉弟は、特に姉の麗華は、武霊のその能力もそうだけど、武霊にかなり固執していた。だから、星波町から出る事はないし、廃校以外星波町内で行く場所がない彼女達が、廃校から逃げる事はない。と思ってたんだけど……。

 美春さんの手招きに従って校門に近付くと、美春さんは持っていたハンディライトを点けて、光をグランドに照らした。

 この場にいた全員が驚く気配を感じた。

 何故なら、光が照らされてる場所に、高神姉弟が倒れていたから。

 まるで礼治が麗華を守る様に重なって…………

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