第一章『武霊のある町』30
★美羽★
夜衣斗さんの言葉を、私は一瞬理解できなかった。
「それは……本当か?」
美春さんもあまりの内容に、困惑した表情になっている。
「はい。二十五体。全て倒しました」
私も美春さんも絶句するしかなかった。
確かに麗華の保有している武霊の数は二十五体だって言われてるけど……本当に全部倒したのかな?中にはあの剛鬼丸と互角の戦いを繰り広げた武霊もいたはずなんだけど………そう言えば、何で夜衣斗さんは武霊の保有数を知ってるんだろう?麗華の名前も知ってるのもそうだけど、どこで知ったのかな?
「本体も倒していますから、今日中になら簡単に捕まえられるんじゃないでしょうか?」
「……確かに、武霊を出せる状態じゃなかったが……」
夜衣斗さんの言葉を黙って考え出す美春さん。
短い沈黙の後、美春さんは小さく頷いた。
「わたった。警察に連絡して、すぐに高神姉弟の捕縛に向かおう」
そう言った美春さんは、私に「後で応援を頼むかもしれない」そう小さく言って、コロ丸の背中に飛び乗る。
背中に乗った美春さんの身体を固定するようにコロ丸の毛が美春さんに巻き付き、コロ丸は美春さんを背に乗せ走り去った。
ん〜多分、夜衣斗さんの言葉が本当でも、本当じゃなくても、今が高神姉弟を捕まえるチャンスだと考えたんだと思う。
私も、そう思う。
空から見ても麗華が今まで見た事がないくらい疲弊してたし、礼治だって私との戦いでかなり消耗してたから。
………それにしても、高神姉弟が星波町に現れてから三年。何度か警察・自警団が武霊使いを集めて捕まえようとした事もあるのに、そこまで追い詰めた事は一度もなかった。
………本当に、夜衣斗さんは『運命の人』なのかもしれない。
私だけじゃなくって、星波町にとっても。