第一章『武霊のある町』27
★美羽★
なんでそんな状況になっているか分からなかった。
でも、このままじゃ夜衣斗さんが死んでしまうのは間違いない。
「コウリュウ!」
私はコウリュウをレベル1にして、夜衣斗さんの下へ急がせた。
礼治とキゾウはいつの間にかいなくなっていて、気になったけど、それを気にするほど余裕のある状況じゃない。
お願い!間に合って!!
★夜衣斗★
苦しい。
意志力の使い過ぎのせいか、身体に力が入らない。
首を絞められていると言うのに、俺は抵抗する事が出来なかった。
このままでは殺される!!
オウキに助けを求めようとして視線だけ何とかオウキの方向に向けると、オウキはオーバードライブモードから勝手に解除していて、地面に片膝を付いて一切動かなくなっていた。
黒い外装になっていた黒い光の霧が、煙の様にオウキの体から上がっているのからして、緊急停止システムが働いたのかもしれない。確か、オウキが初めてオーバードライブモードを使った時、オウキが慣れないモードの制御に失敗して同じ状況になるシーンを作ってた覚えが……何もそこまで忠実に再現しなくても……いや、考えてみれば、オウキは『姿形とその機能が一緒でも、中身は別の存在』なんだよな……『オウキはオウキであってオウキじゃない』。今の状況でそんな基本的な事に気付くなんて……最悪だ。
「あは!あははははは!!なーんにもない。なーんにも!」
そう叫びながら首を更に強く締め付けてくる高神。
なんなんだ!?
やばい!意識が……