第一章『武霊のある町』22
★夜衣斗★
その美羽さんの行動に、俺は度肝を抜かれていた。
コウリュウのブレス攻撃がどれほどの威力かは知らないが、あの機械象の武霊の後ろには、人がいる。
機械象の武霊使いが、多分、高神弟なのは分かるが……どう考えても、攻撃すれば危険な距離だ。
昨日会ったばかりだが、美羽さんがそんな事に気付かない人じゃないだろうし、人を傷付ける側の人間には見えなかった。と言う事は、何らかの理由が……って、俺か!っちょ!ちょっと待った!!
俺は慌てて、万が一の場合に俺の周りに展開させていたシールドサーバント五機を機械象の前に展開させ、ブレスを何もない空の方に反射させるようにU型に力場を展開させた。
力場が完成した瞬間、コウリュウが極太の光線を撃った。
撃たれた光線は、シールドサーバントにより上手く反射し、空の彼方へ一瞬で消える。
っあ、あぶねぇ〜。
冷や汗ものだ。俺のせいで、美羽さんが人殺しになるなんて……冗談じゃない。そうなったら、どう責任をとればいいって言うんだか……責任……いやいや、変な想像は止そう。と、とにかく、これ以上美羽さんに無茶をさせない為にも、『姿を現した方がいい』な。それに、俺の考えが足りないせいでとんでもない事になるところだったとしても、『思惑通り俺が喰われている』し、『思惑以上に麗華の保有武霊が全て出ている』。これは、予想外のチャンスだ。
「ステルス解除」
俺の言葉に、頭上で『俺を透明にしていた』ステルスサーバントがステルス機能を止めた。
透明でなくなった途端に、高神に気付かれ、狂気の含んだ視線を向けられる。
……どうやら、上空にいる美羽さんが先に気付いて、その視線で俺に気付いたようだ……まあ、気付かれるのは予定通りだが……改めて高神と面と向かうと、めちゃくちゃ恐いな。これが、人殺しの目って事なのだろうか?
「どーゆうことかしらぁ?」
そう言って、高神は俺に向けて武霊を展開した。
どうもこうもない。今、高神の武霊に喰われているのは、サーバントの一種、『ドッペルゲンガーサーバント』。要人警護並びに囮用のサーバントで、対象としたものと同じ姿になるサーバント。それに高神はまんまと引っ掛かったわけだ。
だから、その問いに、俺は『ある思惑』を載せて、鼻で笑ってやった。
無茶苦茶強がりなので、上手く笑えたか怪しいが……。
「……虫がぁ!虫がぁ!手足の一本一本千切って殺して上げるわ」
うわ……ゲームとか漫画でしか聞いた事がないセリフを言われた。
この場にいる武霊達が、一斉に俺を捕まえる体勢に入る。
……さあ、こっからが『勝負所』だ……いけるよな俺?
そう自分自身に問いかけ、うるさいぐらい高鳴る心臓の鼓動と、気を抜くと震えて動けなくなりそうな身体を、俺は必死に奮い立たせた。