第一章『武霊のある町』21
★美羽★
「撃ってコウリュウ!」
私の命令に、コウリュウは従わなかった。
戸惑う様に私を見るコウリュウ。
ごめんねコウリュウ。あなたに人殺しなんて……本当はさせたくない………でも、このままじゃ。夜衣斗さんが殺されてしまう。
昨日会ったばかりの人だとしても、高神姉弟と天秤に掛ければ、どっちが重いか……そんな事を考えたくないけど、明白だから………それに、私は、夜衣斗さんとの、『運命』を、こんな所で終わらしたくない!
だから!お願い!!
「コウリュウ!!!」
私の覚悟の願いに、コウリュウはキゾウに顔を向け、
必殺のレーザーブレスを撃った。
具現化のし過ぎで動けない礼治と礼治を守るキゾウ。
一人と一体を貫通して、私は人殺しに………なるはずだった。
だから、私は、その瞬間、思わず目を瞑ってしまった。
身体が震え、頭がくらくらして、気持ちが悪い。
それでも、私は私の意志でした事を、受け止めなくちゃいけない。
自分自身を失わないためにも。
恐る恐る目を開けると、レーザーブレスによって穴の開いた砂浜が……なかった。
そこには、ブレスを撃つ前と変わらない位置にいる礼治とキゾウ。
その二人の前に浮いている五つの小型円盤。
……シールドサーバント?
あれって、確か、昨日夜衣斗さんがオウキから出していた防御用の……。
反射的に麗華の武霊に掴まっている夜衣斗さんを見た。
夜衣斗さんは、麗華の武霊の中で苦しそうにもがいている。
そして、気付いた。
……おかしい。前に麗華の武霊が人を食べた時は、その人はすぐに気を失って動かなくなっていたはず。
……と言う事は……。
私が結論を出す前に、私の視界に隅に人影が入った。
慌てて視線をその人影に向けると、そこに………夜衣斗さんがいた。
夜衣斗さんの姿を確認した瞬間、私の視界が何故か歪んだ。
その原因が涙だと気付いて、私は慌てて涙を拭った。
安心の涙か、嬉し涙か、分からないけど、今は泣いている場合じゃない。
麗華が出した武霊達の何体かが、私達の方に向かってきたから。