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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』68

  ★???★

 夜衣斗達が中に籠る家の前では、美魅と村崎好美が即席の連携を武霊使いと武霊を退けていた。

 美魅が接近戦を武霊・武霊使いを倒し、それを好美が中距離から銃弾で援護し、場合によっては接近戦で美魅と同時に攻撃する。

 今の所襲い掛かってくる武霊使い・武霊はPSサーバントでも何とかなる相手ばかりなので、二人だけでなんとかなっているが、

 「長いだわね!」

 攻防の一瞬の間に好美と背中合わせなった美魅は思わず愚痴を言い、好美は同意見とばかりに眉を顰めた。

 「夜衣斗はこんな時に何をやってるだわね!あんた知ってるだわね?」

 「……予想は付きますが……そうで合って欲しくないです」

 「?それってどう言う」

 意味だわよ。

 そう言おうとした時、二人は殺気を感じその場から別々の方向に飛び退いた。

 瞬間、直前までいた場所に無数の弾痕が出来る。

 殺気のした方向を二人が見ると、屋根の上にガンマンの武霊使いと忍者の武霊使いが悠然と立っていた。

 「ヤバいだわね………」

 美魅は後部カメラで家の様子を確認するが、妙な気配を感じるぐらいで出てくる様子は一切ない。

 仕方なく、

 「本当に夜衣斗は何をやってるだわね!」

 そう叫びながら美魅はレベル3の武霊使い二人に飛び掛かった。


  ★夜衣斗★

 目の前まで歩み寄り、身体を動かせない俺に、琴野さんはついでとばかりに口付し!?

 って、何なの昨日と言い今日と言い、不幸何だか幸運なんだか……奪われてばっかだし………いや、まあ、それどころじゃないが………

 短い様な長い様な俺の血の味がする口付けの後、滑らせる様に首元まで口を移動させ………噛み付いた。

 一瞬、PSサーバントが防御反応を見せるが、あっさりPSサーバントの防御力を破り、琴野さんの牙が俺の首筋に侵入する。

 再びの強烈な快楽に、

 ………ああ………俺、殺されてしまうんだ………

 そう自身の軽率さを呪いながら思い、引っ掛かった。

 殺される?……誰に?って、琴野さんにか………それもい………………わけないだろうが!

 心まで堕ち掛けた瞬間、唐突に怒りが込み上げてきた。

 琴野さんに対してではなく、自分に対してだ。

 自分の軽率な行動で、琴野さん自身が避けていた吸血鬼としての能力を使わせ、俺を殺させさせてしまう。もっと言えば、そもそも俺の読みの浅さのせいで、琴野さんは普通なら即死しそうな重傷を負ってしまった。そんな事を琴野さんにさせてしまったと言うのに、俺は更に琴野さんに負担を増やそうと言うのか?しかも、殺人と言うとんでもなく重い罪を?……………冗談じゃない!ふざけんなよ黒樹夜衣斗!

 あまりの怒りに心の中で自分を自分で叱責した瞬間、俺の中で何かが弾け、形容しがたい異様な感覚に襲われ………奇妙なビジョンが見えた。


 二つの糸が螺旋を描きながら円を描いていて、まるで血管の様に脈打っている。

 一瞬、綺麗な円だと思ったが、よく見ると所々二本の糸が絡まっている箇所があり…………勿体無いと思った。

 その瞬間、まるで俺の意思に反応したかの様に二本の糸が絡まっていた箇所が次々と解け始め………


 気が付くと、琴野さんが首筋から口を離し、俺の胸に顔を埋めて、泣きじゃくり、

 「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 と何度も謝っていた。

 へ?え~と?……何?何が起ったんだ?

 訳が分からない唐突な状況の変化に、頭が付いていけず混乱するばかりだが………とりあえず琴野さんの背中を撫でて琴野さんを落ち着かせる。

 外の二人が心配になってきた頃に、琴野さんは泣き止み、

 「…………わたくし達種族……近年統一した呼称として『ヴァンパイア』と自らを呼んでいるのですが……」

 ?

 外にいる美魅達がどれくらい持つかも、ニセオウキがどれくらい持つかも分からない状況下で、なんで自らの種族の説明を?

 「ヴァンパイアは世界各地にいて………夜衣斗様が予想する通り血を吸う事で飛躍的にあらゆる身体能力を向上させる基礎能力と、各血族ごとに違う固有能力を持っていますの………」

 各血族ごとに?………

 「………つまり、映画とかで表現される狼に変身したり、霧になったりする能力を全部持っている血族はいなくて、一つの血族に一つの固有能力を持つって事ですか?」

 俺の問いにこくりと頷く琴野さん。

 「ですが、わたくしの場合は違います。祖母がヨーロッパのヴァンパイア血族が一つローズ家から婿を取ったので、ローズ家の固有能力……ヴァンパイア能力とわたくし達は呼んでいますが………ヴァンパイア能力『絶対魅了』を受け継いでいますの」

 ヴァンパイア能力絶対魅了?………さっきのあれか?

 「絶対魅了は、『血を吸った相手を魅了し、積極的な絶対服従を強いる能力』ですわ」

 やっぱりそうか………ん?て事は、他のヴァンパイアは、血を吸っても他人を支配できないわけか………

 「そして、わたくしの母は、両家のヴァンパイア能力を上手く受け継げているので二つの能力をちゃんとコントロールできるのですが………わたくしは父が普通の人間であったせいか、二つの能力が相互干渉を引き起こして………『さきほどまで』うまく扱えませんでした」

 予想は合っていたわけか………ん?さきほどまで?

 俺の疑問を感じ取ったのか、琴野さんの胸から顔を離し、俺の顔を真っ直ぐ見た。

 先程見せた妖艶な笑みとは全く違う、嬉しくて嬉しくて仕方がないって感じの微笑みを浮かべていた琴野さんに、俺は訳が分からず眉を顰める。

 「でも!夜衣斗さんのおかげでわたくしは自らのヴァンパイア能力を扱える様になったみたいなんです!」

 はぁ?俺のおかげ?………どう言う事?

 意味がさっぱり分からない事に首を傾げた時、何かが壁を突き破って入って来た。

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