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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』66

  ★???★

 にっこりと笑い、何かを言おうと口を開こうとする沙羅だったが、口から出てきたのは真っ赤な血だった。

 自分が血を吐いた事に沙羅は驚き、ゆっくり前に倒れ、慌てて起き上がった夜衣斗に支えられる。

 抱き支える事により、夜衣斗は確認してしまう。

 沙羅の背中に無数の弾痕が出来ている事を。

 その光景を屋根上から見ているガンマンの武霊使い・島村(しまむら)陽子(ようこ)は、意思無き意識で疑問を心に浮かべていた。

 陽子の武霊ガンマン・ジョーカーは、フィクションの世界でしか出来ないガンプレイを可能にする上に、リロードの必要がないリボルバー式拳銃を二丁持つ。それ故に一瞬の内に無数の弾丸を打ち出す事が可能な上に、命中した弾丸の上に弾丸を当てると言うとんでもない芸当も平然と出来る。

 それらにより、PSサーバントの防御力をあっさり貫通させる弾丸を撃った。

 更に言えば、夜衣斗の不確定要素も踏まえて、『PSサーバントを貫通させるに余る威力』を出す為に弾丸を五連続で当たる様に撃っている。

 なのに、沙羅に命中した弾丸は、『沙羅を貫通すらしていなかった』。

 そのありえない出来事に今の陽子では対応出来ず、故に次の行動に移るのが遅れ、夜衣斗の反撃を許してしまう。

 「オウキ!」

 叫ぶように自身の武霊を呼ぶ夜衣斗。

 その瞬間、陽子の背後にオウキが現れ、殴り掛かってくる。

 防御の為にオウキの腕を撃つと、弾丸はオウキの腕をすり抜けた。

 貫通ではなくすり抜けた事に、陽子が驚くと、目の前でオウキの姿はかすれ、一機の円盤になる。

 ドッペルゲンガーサーバント。

 円盤の正体に気付いた陽子だったが、その時には陽子の周りにオウキが無数に現れており、忍者の武霊使い・陽子の実弟である島村(しまむら)陽一郎(よういちろう)も似た様な状況だった。

 夜衣斗はオウキを出せなくなっているか、何らかの目的の為に別の場所で具現化している。

 そう三島忠人は予測していたので、夜衣斗がオウキを初手で出す事ないと指示されていた。

 だが、初手で夜衣斗を倒せなかった事により、夜衣斗がオウキを使う可能性が出てきてしまい、例え無数のオウキが全てドッペルゲンガーサーバントであろうと警戒せざる得ず、沙羅を抱えて逃げる夜衣斗を陽子はとりあえず見過ごし、周囲のオウキ達に銃口を向けた。


  ★夜衣斗★

 美魅と琴野さんと一緒に救援に来てくれた村崎さんの援護で襲い掛かってくるレベル1の武霊達を倒しつつ、俺は逃げた。

 抱き抱えている琴野さんは、PSサーバントの治癒機能でとりあえず血は止まっている様だったが、両腕を弾丸が貫通した俺とは違い、背中弾痕の数からPSサーバントの治癒機能だけでは間に合わないのは明らか。

 ………むしろ即死していないのが不思議なぐらいの重症度なんだが………

 かと言って、ヒーラーサーバントを今の俺は出す事が出来ない。

 何故なら、オウキとキバは俺から離れた所で具現化中な為、部分具現化出来ない為。

 部分具現化であろうと、本体が別の場所に既に具現化していると出来ないらしく………俺は歯を食いしばる事しか出来ない。

 ガンマンと忍者の武霊使いを足止めする為に、本来は『第三段階の締め』の為に用意したドッペルゲンガーサーバントを使う事になった上に、琴野さんに重傷を負わせてしまった。

 作戦が大きく狂い、窮地に陥ってもなお別の場所にいるオウキを俺が呼ばないのは、俺の腕の中で苦しんでいる琴野さんがそう望んだからだ。

 驚く事に、普通なら死んでいる怪我を負いながら、琴野さんは今も意識を失っておらず、それどころか、琴野さんが撃たれた事に反射的にオウキを再具現化しようとした俺を止めさえした。

 「わたくしはこの程度では死にませんわ。ですから、作戦を……続けてください」

 そう苦しそうに言う琴野さんの願いを俺は踏み躙れない。

 だが、だからと言って、琴野さんがここまで大丈夫な保証はなく、現にPSサーバントから送られて来る琴野さんの身体状況は悪くなるばかりに見えた。

 離れているキバからヒーラーサーバントを出し、急いでこちらに向かわせてはいるが、他の武霊使い達に邪魔されてなかなか辿り着けない。

 このままじゃ……………くそ!こんな事になるんだったら、『予測の確証』を得ておくんだった!

 「………二人とも、少しの間、時間を稼いでくれ!」

 俺はそう言って、近くにあった空き家に玄関を蹴破って入った。

 「…夜……衣斗さん?」

 俺に困惑の視線を向ける琴野さん。

 ダイニングに入り、そこに在った椅子に琴野さんをゆっくり座らせる。

 そして、俺はPSサーバントを脱ぎ、着ていた制服の前ボタンを外し、肩を露出させた。

 「なんの……真似です……の?」

 そう呆れて見せる琴野さんだが、その目には俺の推測を確信へと変える事象が起きていた。

 俺は溜め息を吐き、

 「………時間も無い事ですし、単刀直入に言いましょう」

 俺は『赤くなっている琴野さんの目』を見詰めて、

 「琴野さんの退魔士能力は………いえ、琴野さんの一族は『吸血鬼』………違いますか?」

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