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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』61

  ★???★

 星波駅に着いた始発電車から、勇人は転げる様に降り、夜衣斗の下に駆け付けようとした。

 だが、ホームから出る階段に足を掛けるより早く、駅の放送が入る。

 「「星波駅に降りる方に武霊に関する緊急連絡です。武霊に関する事なので、そのまま次の駅に行く方は、聞き流してください」」

 星波学園に小学生の頃から通っている勇人でさえ、今までこんな放送を駅で聞いた事がなかったので、思わず足を止めてしまう。

 星波駅はあくまで途中の駅なので、隣町の星取町以降の農村部から、これまた隣町の星渡町以降の都市部に通勤している者達も電車に乗っている。

 その為、いくら星波町外に出れば記憶が一時的に消えるとは言え、武霊に関する事を教えたり、知られたりして無用な混乱させない様に徹底されていた。

 それなのに今の放送がされたと言う事は、余程の事態が起きている証拠であり、勇人の考えを肯定する物だった。

 だから、勇人は急いで階段を駆け上がる。

 続く駅内放送は、

 「現在星波町は一人の武霊使いにより支配下に置かれています。彼の武霊能力は強力な催眠能力で、一部の者しか抵抗出来ません。ですので、彼から星波町を取り戻すまでの間、星波町に降りる方はそのまま第二地下避難シェルターに避難してください」

 そう避難を促しているが、だからと言って足を止める勇人ではない。

 一気に改札口を抜けると、PSサーバントを着た何人かが、駅の外から第二地下シェルターに向かる人達を警護している様子が見えた。

 それで夜衣斗の無事を確認した勇人は、少しほっとしたが、だからと言って何も知らない夜衣斗がこのまま愛と戦い続ければ………最悪の事態を改めて予想し、星波川へ急ぐ勇人。

 そして、星波デパート前まで来た時、PSサーバントを着た沙羅が大慌てで空から降ってきた。

 「村雲様!何処に行くんですの!?」

 と声を掛けられるが、

 「黒樹の所だよ!」

 見向きもせずに走り去ろうとする勇人。

 PSサーバントを着ていた沙羅が常人以上の速度で勇人に追い付き、その手を取って止める。

 「放送を聞いていなかったのですの!?今の星波町は、耐性の無い人が出れば直ぐに操られてしまうんですわよ!?」

 「聞いたさ!だからと言って!ダチを身捨てろって、俺に言うのかよ!」

 「そんな事は言っていませんわ!」

 「だったら!」

 「駄目です!耐性の無い村雲様がここから先に行ってしまっては夜衣斗さんに余計な負担を掛けてしまいますわ!」

 「………?」

 自分に耐性が無いと言い切った沙羅にも疑問を覚えたが、何より夜衣斗の事を名前で呼んだ事に違和感を覚える勇人。

 だが、今はそんな事を気にしている場合じゃないと思い。

 「だが!相手は愛っちなんだぞ!」

 「え!?青葉部長が?」

 思わぬ所で出た愛の名前に驚く沙羅だが、愛の武霊能力を知らない沙羅は、

 「大丈夫ですわ。今の夜衣斗さんなら、歴代の武霊部部長にも負けはしないですの」

 「……………」

 沙羅の妙な信頼にまた違和感を覚えつつも、勇人は悩んだ。

 愛は自身の武霊能力を恐れている。

 自身の武霊を嫌っているわけではないが、もし、その問答無用で殺し、殺した相手を自在に蘇らして操る能力が周囲に知られれば、恐れられてしまう。

 そう愛は考え、偶然見た者か、武霊研究部の一部の者にしかその武霊能力を教えておらず、口止めもしている。

 人に無理矢理スプラッターホラーなどを見せるくせして、と勇人は思わなくもないが、愛がそう恐れるなら、協力しないわけにはいかない。

 だが、そこに愛の意思が入っていない上に、人の命が掛っているのなら、話は別になる。

 意を決した勇人が愛の武霊能力を説明しようとした時、何かが空か降ってきた。

 二人が反射的に身構えるが、降ってきた相手が馬形態のキバに乗った夜衣斗だったので、一瞬ほっとしたが、その夜衣斗の腕の中に意識を失った愛がいたので、勇人は目を見開いて驚いてしまう。

 「ほら、無事だったですわ」

 と言う沙羅を無視して、ウィングブースターを使いゆっくりキバから降りる夜衣斗に近付き、小声で、

 「どうやって愛を倒したんだ?愛は誰も知らないが、学園最強の一人だぞ?」

 そう聞くが、夜衣斗は少し困った感じになり、何かを言おうとした時、夜衣斗の雰囲気が変わり、沙羅が息を飲んだ。

 「夜衣斗さん!」

 沙羅の呼び掛けに、夜衣斗は頷き、

 「………次の段階に進みます………村雲。青葉さんを頼む」

 愛を勇人に渡してバイク形態になったキバに乗り込んだ。

 状況の変化があったのは二人の反応から間違いはない。

 だから、

 「待て黒樹!」

 思わず夜衣斗を呼び止めてしまう勇人だが、

 俺も手伝う。

 と言い掛け、口をつぐんだ。

 夜衣斗が無事だった事により、幾ばくか冷静になっていた勇人。

 だからこそ、今の無力な自分がそんな事を言っても夜衣斗を困らせるだけなのは明らか。

 しかし、だからと言って、悔しさが出てこない訳が無く、そう言う感情が思わず顔に出ていたのか、

 「村雲様………」

 心配そうに沙羅が名前を言った。

 「……………」

 勇人と沙羅の反応を見た夜衣斗は、勇人を見て少し考える。

 「急に呼び止めて悪かったな………」

 そう言う勇人に、夜衣斗は口元だけ笑い、

 「………手伝ってくれないか?」

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