第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』57
★???★
武装風紀委員会。
星波町で起こる武霊に関する事件事故を学生が取り締まり、事前に防ぐ為の組織。
通称・武風。
統合生徒会の直轄組織と言う事になっているが、三島忠人が武装風紀委員長になってから独立性を出し始め、小さないざこざを繰り返していた。
その顕著たるものの一つに、統合生徒会が把握していない武霊使いが何人か武風委員になっていると言うのがある。
あれこれ理由を付けて三島忠人がその者達の存在を隠している事に、琴野沙羅は不審には思っても、深くは追求しなかった。
正直、三島忠人の事を独自性が強く厄介だとは思っても、少なくとも生徒を守ると言う一点に置いては、信頼出来る相手だと思っていたからだ。
結局、その思いは見事に裏切られたわけなのだが、そこから考えると、三島忠人は今回の事を武風委員長になった時から準備をしていたと言う事になる。
「あんな武霊………わたくしは知りませんわね………」
芽印に呼び出され、星波デパート屋上から海側を沙羅が見ると、そこには巨大な戦艦が海に浮かんでいた。
「でしょ~……って事はさ。武風の『隠し玉』達だよね………」
「そうなりますわね………」
芽印の言葉に同意しつつ、沙羅は眉を顰めた。
沙羅の把握している武風の隠し玉は、少なくとも五人。
全員が大学から星波学園に入った者達で、
大学部一年 島村 陽一郎
大学部二年 香城 南
大学部三年 茶郷 薫
大学部四年 鳥越 道重
大学部四年 島村 陽子
の五人。
その五人は、三島忠人の武風委員長権限で武風に入っているが、その武霊を誰も見た事が無い。
それどころか、武霊使いではないと公言している為、役場からも呼ばれる事が無いので、調べようもなく、巨大戦艦が誰の武霊かは不明。
これにより、武霊使いを気絶させると言う対武霊使い戦術の基本が使い難い。
直接倒そうにも、まともに武霊が使えるのは夜衣斗のみなので、夜衣斗を向かわせれば次の作戦に支障が出る。
かと言って退魔士能力のみで、見た目からして完全に戦闘タイプのレベル2具現武霊と闘うのは明らかに危険。
だからと言ってこのまま手をこまねいていれば、作戦が破綻しかねない為、
「とにかく夜衣斗さんに現状を連絡しましょう」
と言うしかない沙羅だった。
★夜衣斗★
琴野さんからの連絡で、海に出現した見た事がない戦艦の武霊が具現化した事を知った俺は、慌ててスカウトサーバントの一機を海の方に向けると………あ~確か、一昔前にあったアニメに登場する戦艦だったけ?女性ばかりの乗り組員に、気弱で朴念仁の男艦長が主人公の話だった様な………まあ、話の内容より………あれに登場する主人公達の戦艦か………不味いな………あれ、これでもかってぐらいに新旧入り混じった兵器を積んでるって設定だった………
あんな武霊を持ってる奴がいるなんて聞いてないんだがな………『今は』オウキを使う訳にはいかないし………っち………仕方がないプランを変更して、作戦を少し圧縮………ん?
電車が後もう少しで星波川に掛る鉄橋に差し掛かろうとした時、その鉄橋の上に誰かがいる事に気付いた。
先行させているスカウトサーバントのカメラをズームさせると………青葉さん?
★???★
電車の先頭車両に移動した勇人は、鉄橋に武霊研究部現部長の青葉愛がいる事に気付いた。
周囲で起こっている状況から考えて、武霊使い達が何者かに操られている。
そう考えた勇人は、愛の登場に戦慄を覚えた。
何故なら、武霊を奪われる前まで勇人は武霊研究部に所属しており、愛の武霊の能力を知っているからだ。
「くそ!愛っちが操られているなら、ヤバい!まともに戦うな黒樹!『一瞬で殺されるぞ』!」
車窓を叩き、夜衣斗に忠告しようとするが、自警団の武霊と闘っている夜衣斗は気付かなかった。
★夜衣斗★
美羽さんが所属する部活の部長で、死神みたいな武霊を持つ。
その程度の認識しかない人だが………たった一人で立ち塞がっている事から考えると、かなり強いって事だよな………
そう思って警戒した俺は、急いで指示変更をした後、キバに速度を上げさせ、電車の前に出た。
それと同時に、シールドサーバントを大量に追加し、キューブゲージでわざと倒さない様にしていた武霊達を封じ込める。
こうすると再具現化をされるだろうが………こいつらに構っている余裕は無さそうだし、あの二人なら上手くやってくれるだろう。
「………次の段階に進みます」
PSサーバントの通信機能で全員にそう言うと同時に、青葉さんが………武霊を身に纏って具現化させた!?
な!レベル3!