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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』56

  ★???★

 星波町駅周辺の異変はすぐさま三島忠人の下に伝わった。

 三島忠人は夜衣斗達が星波町を奪還する為に動き出す事を読んでおり、その対策として主要施設がある場所に自警団・武風のメンバーを配置し、かつ武霊使い以外の住民に数分の置きにメールを送信する様に指示を出していた。

 その為、携帯音楽プレイヤーにより催眠を掛けられている武霊使い達を警戒していた退魔士達は、催眠が解けた事によりメールが止まり、星波駅周辺を奪還した事を知られるのを遅らせる事が出来なかった。

 「星波駅が奪還されたのなら、始発の武霊使いに笛の音を聞かせない様にするはずだ。直ぐに自警団の武霊を向かわせろ」

 こうして夜衣斗の行動を先読みした三島忠人のその命令で、線路の奪還を始めた夜衣斗の所に自警団の武霊達が現れる事になった。


  ★夜衣斗★

 反応が思ったより早いな………。

 襲い掛かってくる武霊をキバのガトリングガンで撃退しながら、俺は始発電車と並走していた。

 シールドサーバントで電車に笛の音を届かせない様にシールドを張り、そのシールドを破ろうとする武霊達を撃退する………ん~………作戦には必要な事とは言え、無免許運転と言うか………人生二回目のバイクは………いくら自動運転だとは言え、怖いと言うか………まあ、今はそんな事を気にしている余裕はないが………

 周囲に展開しているスカウトサーバントから送られて来る映像には、武霊使いらしき姿はない。

 かと言って、これだけの数を同時に離れた場所から見させる武霊はいない………と言う話だから、少なくとも線路脇を目視出来る範囲にいるのは間違いなく………それはつまり、『目論見通り』と言う事!


  ★飛矢折★

 はぐれが発生する様になってから、はぐれ発生ポイントに近い場所・あたしの住む星波町の隣町星取(ほしどり)町側の海近くと、星波山の麓に、はぐれ発生を監視する為の監視塔が建てられてて、普段はそこに自警団員が数人だけ常駐してるんだけど………

 「ぎっしりいますね………」

 隣にいる操形先輩がそうあたしに言い、あたしはうなずいて答えた。

 あたしも操形先輩も、PSサーバントを着こみ、後ろには黒樹君から命令権を移譲されたサーバント達が浮いている。

 あたし達がいるのは海側のはぐれ監視塔………の近くの空き家。

 何でも、星波町の空き家のいくつかは、万が一の場合の隠れ家、もしくは他の鯉の会のメンバーが急遽着た場合の住居にする為に鯉の会が密かに買い取っているらしく、今いる場所もその一つだとの事。

 だから、芽印の退魔士能力でここに直接来る事が出来、襲撃のタイミングを計る事が出来ているんだけど………普通は二三人しかいない監視塔に、十数人がぎっちり入っていて、その全員が双眼鏡を線路の方に向けて微動だにしてなくて………何だか気持ち悪い。

 ついさっきまで通常の人数しかいなかったのに、奪還作戦が始まって直ぐに人が集まってきて、武霊を出して、こうなったんだけど………黒樹君が考えていたより反応が早い様な………誰かが失敗でもしたのかな?

 まあ、なんであれ、誤差の範囲内だろうし、星波駅周辺を奪還すれば、襲撃時間を始発に合わせているから、こっちの次の狙いが始発電車だと直ぐにばれるはずだと黒樹君は言っていた。

 だから、逆にそれを利用して、敵戦力を始発電車防衛に回っている黒樹君に集中させ、別動隊で武霊使いを奇襲。

 それが黒樹君の次の作戦だった。

 そして、黒樹君曰く、

 「………星波町に入る始発電車は、星取町側からです。だとすると、星波町奪還を短時間でやってのけた三島忠人なら、備えをしていないわけがありません。そして、備えるなら線路を見渡せる場所………海側のはぐれ監視塔が最適でしょう。ここなら武霊使いを一ヶ所に集めて、同時に使わせる事も出来るでしょうし………守り易い」

 だそうだったんだけど………

 「ここを守っている武霊の気配が感じられませんね………」

 あたしも思っていた事を操形先輩が呟いた。

 確かに監視塔の周りには武霊の独特の気配が感じられない。

 これだけの武霊使いを無防備にするとは思えないし………かと言ってこんな状況で武霊を出していないと言うのも不自然。

 だとすると………黒樹君が懸念していた遠距離型?

 そう思ったあたしは、PSサーバントの通信機能を使って、芽印に繋げる。

 今回の作戦を開始する時、黒樹君はあの場にいた全員にPSサーバントを着させた。

 PSサーバントは着ると同時に着用者の体内にナノマシンと言うのが注入されるので、これにより、黒樹君の膨大な魔力が間接的に着用者に付与され、あたしの様な魔法をその身に持たない者でも三島忠人の武霊能力が効かなくなる………らしい。

 実際に一度は操られていたあたしが笛の音を聞いても平気なのだから、黒樹君の予想通りなんだろうけど………

 目の前に芽印の顔が映り、

 「はいはぁ~い………あなたの芽印ちゃんですよぉ~………」

 やや疲れた表情を見せた。

 芽印は実働メンバーの移動を担当していて、さっきまでみんなを移動させていたはず。

 だから、疲れているのは仕方がないけど………芽印の回復を待っていられるほど状況はよくない。

 「持ち場に着いた?」

 「持ちろんよ。絶景絶景!」

 芽印の基本的な持ち場は、星波町で最も高い場所にある星波デパートの屋上。

 もちろん、星波デパートにも携帯音楽プレイヤーで催眠を掛けられている人達が配置されていたけど、それはPSサーバントのステルス機能で見えなくなった実働メンバーが一人一人密かに眠らせて解放しているから、問題はない。

 「じゃあ、こっちの方に武霊らしき姿がないか見てくれない?」

 「ん~近くにいな………うわ………」

 喋りながらこっち側を見たのか、芽印が何かを見て絶句した。

 物凄く嫌な予感。

 「えっと、視覚同調機能オン。対象飛矢折巴」

 その言葉と共に、あたしの目の前に「「早見芽印からの視覚同調を許可しますか?」」と書かれているぽいぐちゃぐちゃした文字が出てきた。

 ………なんか抵抗を感じるけど………

 「視覚同調を許可します」

 と言うと同時に、もう一つの視界・芽衣が見ている光景が現れたんだけど……………うわ………これは、ちょっと予想外………こんなのどうすればいいんだろう?

 芽印から送られてくる映像に映っていたのは、海に浮かぶ『巨大な戦艦』だった。

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