第一章『武霊のある町』19
★???★
「あは。やぁ〜っと、捕まえた」
そう言って高神麗華は歪んだ笑みを浮かべた。
その視線の先には、体積を三倍にした自身の武霊がおり、その武霊の中には、もがき苦しんでいる黒樹夜衣斗がいる。
夜衣斗の武霊は、近くの空き地で五体の武霊によって抑え込まれており、あの忌々しい赤井美羽も、弟が抑えている。
当然、近くに誰もおらず、夜衣斗を助けられる者は、誰もいない。
「あは。どんなに暴れても無駄よぉ。もう、あなたは死ぬしかないの。あは、あははははは」
楽しそうに笑い声を上げる麗華。
近くで何かが発射される音がし、それに気付いた麗華は音の発生源を見る。
礼治の武霊キゾウだった。
キゾウが、接近してくるコウリュウを撃ち落とそうと、鼻から水撃を連続で射出している音だったようだ。
コウリュウにはその武霊使いである赤井美羽がその手に乗っており、必死な形相で何かを叫んでいる。
誰かの名前を呼んでいる様だったが、麗華は気にならかなった。
多分、今喰らっている武霊使いの名前だろうとは思うが、彼女にとってそんな事は特に意味のない事だった。
ただ、その美羽の必死な表情が面白くて、面白くて、再び笑い声を上げる。
狂った様に。
★美羽★
麗華が笑っていた。
その笑みを見た時、私は怒りに歯を噛み締めた。
いつもそうだった。
私はどこか甘くて……覚悟が足りない。
だから、いつも守れない。
だから、いつも助けられない。
だから………止められない。
……もう、そんなのは………嫌だ!
私は、『覚悟』を決めた。
罪を犯す覚悟を。
武霊は、なんでかは分からないけど、命令無しでは、『攻撃的な行動はしない』。
だから、物を壊すのも、人を傷つけるのも……………人を殺すのも、その武霊使いの意思次第。
私は今まで、コウリュウで人を傷付けるのも、人を殺すのもしたくなかったし、するつもりもなかった。
自警団の人達や、他のほどんどの武霊使いの人達も、そうだと思う。
誰だって人殺しにはなりたくない。
でも、だから、私達は人殺しを平然とし、今の礼治の様に自分を人質にしてでも攻撃してくる犯罪武霊使いを逃がし、放置し続ける結果になってる。
だから!『殺す気』で掛かれば、私だけでも二人を倒し、夜衣斗さんを助ける事が出来る。
………そう言い聞かせても、私の身体は震えていた。
人を、夜衣斗さんを助ける為とは言え、高神姉弟を殺そうとしている自分の意思に、怯え、恐怖しているんだと思う。
応援はまだ来そうにない。
私は……私は……………
「……コウリュウ!………レーザーブレス!!」