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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』46

  ★???★

   五、『操形(そうぎょう) 夜明(よあけ)


 「私は操形夜明ですわ黒樹様」

 そう言ってスカートの裾を上げて挨拶をするメイド服姿の夜明。

 「………操形?」

 聞き覚えのある名字に前髪の後ろで眉を顰める夜衣斗。

 「はい。私は操形 (ひる)……つまり、黒樹様のお父上の弟である操形家現当主の娘です」

 「……………」

 いきなりの従姉宣言に、驚きのあまり少し停止する夜衣斗。

 「………つまり、従姉と?」

 驚きを引きずったまま何とかそう口にすると、夜明は笑顔で、

 「はい」

 と頷いた。


  ★夜衣斗★

 星波学園高等部三年。メイド部部長………逆鬼ごっこ以降度々会ってはいるが………その度に執事部部長の人と鉢合わせていがみ合ってる印象がある。若干目付きが鋭く………実は父さんの弟……現操形家当主で、(ひる)と言う名前らしい………なんか知らんが、俺の親の世代の名前が妙に単純だよな………ん~まあ、そんなに意味はないとは思うが………とにかく、その娘らしく………要するに従姉だそうだ………従姉に様付けで呼ばれていたのか………従姉も従姉でどう言うつもりなんだか………いや、メイドのつもりか………

 操形家は日本五大退魔士家系の一つ。その為、退魔士となる枠も普通の家より多いらしく、何の苦労もなく正式な退魔士になれる立場にあったらしいんだが………何を思ったのか、武装メイドと言う職業に憧れを抱き、武装メイドになる為にメイドの特訓(?)をしているらしい………最初、次期当主の座を実の兄に取られた事による反発かとも思ったが………どうもうちの妹の所にいるエレアさんに憧れて武装メイドになろうと決めたとかなんとか………

 ちなみに武装メイドとは、正式な退魔士になれず、かつ女性である為に表の職業にもなかなか就けない退魔士家系の女性達が始めたものらしく、本来は好んでなる様なものじゃないとか………まあ、近年は操形さん……親類を名字で呼ぶのもなんだな……とりあえず心の中だけでも……夜明さんの様に変わり者もそれなりにいるらしいので………一概にそうとは言えないって事か?

 退魔士能力は、『人形(ひとがた)(おう)

 人の形をした物に、自らの精神を移す事によりそれを自在に操る事の出来る退魔士能力。個人差がかなりある退魔士能力らしく、人によっては軍隊ぐらいの数の人形を地球の裏側からでも操れるのもいれば、一体しか操れないが十メートル以上の人形まで操れる者もいるとか………っで、夜明さんは最大で人と同じぐらいの人形を五体ぐらい同時に操れるらしい…………もっとも、実家に置いて来たと言う専用の人形がなければ、それほど戦闘能力が高い能力ではないらしいので………ん~………

 武装守護霊は、『ペルティア』

 昔、犬耳メイドの漫画があって、その主人公が基になっている模様。一応アニメ化をされた作品だった気がするが………一般的に人気になった記憶はないな………そもそも全体的にほんわかしたのん気な作品だったから、武霊向きなキャラじゃないよな………まあ、武霊化されているなら、ある程度は戦闘能力が付与されているだろうが………ふむ………


  ★???★

 「そうそう。黒樹様は憶えてらっしゃらないかもしれませんが、私と黒樹様は少しの間一緒に住んだ事があるんですよ?」

 夜明の意外な話に再び前髪の後ろで眉を顰める夜衣斗。

 「………憶えがないんですが………」

 「無理もないですよ。小さい時の話ですし、私だってその時に父が撮った写真を見て何とか思い出せるぐらいですから」

 「………幼稚園に入る前は、よく引っ越していましたからね………まあ、そもそも俺は普遍的な記憶力が欠落していると言うか………」

 夜衣斗の言い訳の様な言葉に、夜明は苦笑した。

 「あ~それはうちの血ですね」

 「………操形家の?」

 「操形家の人間って基本的にオタク気質ですから。好きな事しか憶えないですよ」

 「………………」

 夜衣斗は何とも言えず、溜め息を吐くしかなかった。


  ★???★

   六、『口導(こうどう) 由雅(ゆうが)


 「………口導……と言う事は、五大退魔士家系の一つの」

 夜衣斗の問いに頷く由雅。

 「はい。私は口導家の人間です」

 「しかも長男なんですよ」

 不意に話に入ってきた夜明に、由雅は刺す様な視線を向ける。

 「………それが何か?」

 「ええ、何でしょうね?」

 由雅・夜明共に互いに微笑んでいるのだが、目は笑ってないわ、火花は散っているわ、夜衣斗はオロオロするしかなかった。


  ★夜衣斗★

 星波学園高等部三年。執事部部長………逆鬼ごっこ以降夜明さんとワンセットで会っている印象があるが、別にクラスが一緒とか、付き合っているとかではないらしい。意図して会っていないって事は、それだけ二人は縁深いのかもしれないが………常にいがみ合っているのだから良い縁じゃないよな………

 退魔士能力は、『まつろわせる言霊』

 喋った内容を現実にするとんでもない能力。もっとも、あまりにも物理法則から外れた事を現実にしようとするとその分だけ意志力が消費され、最悪は意識を失ってしまうとの事。これは能力(魔法)に魂が喰われない様にする魂の防衛反応って話だが………ん~そこら辺は武霊と同じか………っで、能力が高ければ高いほど実現出来る………らしいが、賢さんはまだ未覚醒な為、使えないとの事。もっとも、覚醒すれば、制御の効かない能力らしく、今の様に普通に喋る事も出来なくなるとか………本来は成人近くになると覚醒する退魔士能力らしいんだが、彼の妹はその覚醒がとんでもなく早い上に、歴代最強の力を持っていた為、本来なら彼が次期当主に選ばれるはずだったが、選ばれず、その妹が次期当主になってしまった。そして、その際に激しく反発した為、口導家の正式な退魔士にもなれなくなってしまったとの事………その為、正式な退魔士になれるのになれない夜明さんが嫌いなんだそうだ。

 執事部をやっているのは、武装メイドがメイドと言う言葉を使っている通りほとんど女性で構成された組織らしいので、退魔士からあぶれた男性の受け皿がない。だから口導さんは、その受け皿として武装執事を作ろうとしているとの事。本来あぶれた男性退魔士は、一般社会に就職するのが通例だったらしいが、今はなかなか就職先が見付からないらしい。不景気の影響か、退魔士として育てられていた影響か………まあ、どこの社会も時代の変化と言うのには逆らえないんだろう。

 ちなみに、武装執事は無いが、召喚執事と言う組織はあるらしく、夜衣花の所にもいるとか………召喚って事は異世界の執事って事か?………なんだかね………

 武装守護霊は、『神崎(かんざき) 雪雄(ゆきお)

 昔、超能力者物で執事物のライトノベルがあって、そこに出てくる主人公が基になっている模様。様々な金持ちのお嬢様がそれぞれ雇った執事を戦わせて………なんだったけ?………まあ、大分前に見た奴だから、良く憶えていないな………とにかく、その主人公が基になっているなら、念動力以外にも結構色々な超能力を使えたはず………テレポートも使えたっけな?………ふむ、だったら………


  ★???★

 「………二人共………まあ、なんです………とりあえず今回だけでも仲良くやってくれませんか?」

 その夜衣斗の提案に、由雅・夜明の二人は互いに顔を見合わせ、

 「私達は仲が悪いわけではありませんよ。そうですよね操形さん」

 「ええ、口導さん」

 とにこやかに言う為、夜衣斗は溜め息を吐いた。

 見た目上は確かに仲が良さそうだが、それ以外がどう見ても仲が悪そうに見える。

 (まあ、俺がここでとやかく言ってどうにかなるなら、もっと前にどうにかなってるよな………)

 そう思った夜衣斗は二人を放っておく事にした。

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