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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』45

  ★???★

   三、『心眼(しんがん) 優癒(ゆうゆ)


 「あの………さっきは心の中を勝手に見てすいませんでした」

 そう言って頭を下げる優癒に、夜衣斗は首を横に振り、

 「………気にしていませんよ」

 「そうですか………ありがとうございます」

 あからさまにほっとした様子の優癒に夜衣斗は苦笑した。


  ★夜衣斗★

 星波学園中等部二年。ゴスロリ同好会所属………いくつも同好会があるのは面白いが、学校としてどうなんだろうか?………第一、どんな活動をしてるんだ?………まあ、とにかく、ゴスロリの格好をした可愛い女の子。

 日本五大退魔士家系の一つ・射眼家の分家らしいが、有している退魔士能力のせいで退魔士の中でも孤立しがちで、その影響か基本的に引っ込み思案な子の様だ。話を聞いている時も、琴野さんの影に隠れながらだったから………まあ、琴野さんを慕っているのはよく分かる。

 退魔士能力は『心眼(しんがん)(ひとみ)』。

 視界に収めた対象が心を持った存在なら、その心の動きを視認する事が出来る退魔士能力。眼に瞳と言うネーミングセンスが引っ掛かるが……射眼家筋の退魔士能力は大体『~眼の瞳』と名付けられているらしい……まあ、名前なんてどうでもいい話か………俺みたいな濃度の濃い魔力持ち以外の人間なら、その考えも読めるらしいので、早見さんと組ませるといいか?

 武装守護霊は、『クマ二号』

 到達具現化レベルは2。

 逆鬼ごっこの時に見たテディベアの武霊。一号は何なのかって気がしないでもないが………テディベアの武霊なら、元となったテディベアが一号なのだろう。能力的には身体の硬化・軟化のみらしいが、それを使った肉弾戦は強力との事。更に言えば、彼女自身の退魔士能力と組み合わせれば、圧倒的な能力差がない限り負ける事はない武霊だと言えるかもしれない。


  ★???★

 「………一つ質問してもいいですか?」

 「はい。なんですか?」

 夜衣斗の改まった質問に小首を傾げる優癒。

 「………その格好に何か意味があります?」

 「?」

 質問の意味が分からないのか、更に首を傾げる優癒。

 「………いや、退魔士的に」

 「特にないですわ。強いて言えば、私の趣味ですの」

 何かを答えようとする優癒より早く、何故か琴野沙羅が答えた。

 「可愛いですわよね?」

 「……………」

 夜衣斗が何か言う前に、若干迫力がある笑みを夜衣斗に向けてくる沙羅。

 「可愛いですわよね?」

 「……………ええ、まあ」

 何だか訳が分からないまま同意してしまう夜衣斗。

 そして、ある事を納得した。

 星波学園には、部活や同好会に所属していれば、それに関した格好のみ学園内で着て生活していいと言う生徒校則があり、夜衣斗は前々からそれに関して呆れ、誰が作ったのかと思っていたが………

 (琴野さんのせいか………てか、いいのか、統合生徒会長がそんな事をして………職権乱用もいい所だよな………)

 などと考えながら優癒を見ると、にこにこと沙羅を見ているので、

 (まあ、どうでもいいか………)

 と気にしない事にした。


  ★???★

   四、『村崎(むらさき) 好美(このみ)


 「………お久しぶりです」

 「はい……お久しぶりです」

 夜衣斗の挨拶に、挨拶し返す好美。

 「……………」

 「……………」

 そして、互いに無言。

 夜衣斗は好美の無感情・無表情に気圧され、好美は何も言われないから何も言わない。

 何とも言えない沈黙の中、何となしに見詰め合ってしまう二人。

 ふと、好美が視線をそらした。

 その頬は少し赤らんで見えなくもなく、妙な空気になる。

 その様子に何人かがニヤニヤしだし、何人かが不機嫌そうになったので、夜衣斗は若干慌てて、

 「………えっと、ではどんな能力を持っているか教えてください」


  ★夜衣斗★

 星波学園高等部一年。高等部生徒会副会長………転校初日に会って以来、会ってなかったが………まさかこんな所で会うとは思いもしなかった。琴野さんのパートナーらしく、表の学業・裏の鯉の会の活動を全面的にサポートしている人らしい。無感情で無表情なメガネ娘。

 村崎家は小規模な退魔士家系らしいが………なんでも雪女の原型になったかもしれない退魔士らしい………イメージ的には退治される側の原型になったかもしれないって事は………元々は魔物として認識されていた可能性もあるな………とは言っても、流石にあなたの先祖は魔物として認識されていましたか?って聞くのは失礼だよな………まあ、そもそも今は関係ない話だな………

 退魔士能力は『(こお)(ひめ)

 退魔士能力の中には、女性のみ、男性のみに受け継がれるタイプの退魔士能力もあるらしく、凍り姫はその女性版。名の通り、冷気を操る退魔士能力で、自分の身体のどこからでも冷気を任意の温度で出せるらしく、雪女の伝説とかで雪女が出来る事は大体出来るらしい。話によると、退魔士能力の影響で、雪の降る山の中でも昼寝出来るぐらい寒さに強いらしい。反面、暑さに物凄く弱いらしく、梅雨明けが戦々恐々だとか………流石に暑さで溶けるって事はないだろうが……………何であれ、戦闘組か?

 武装守護霊は、『雪歌(ゆきうた)

 雪女が基となってる武霊。どうも村崎さんは自分の家系が雪女の原型になったかもしれないと言う話が好きだったらしく、その為武霊まで雪女になってしまったらしい。雪女に雪女………まあ、相性は良さそうだよな………


  ★???★

 「………ちょっと思ったんですが………生徒会には鯉の会の人達が多かったりします?」

 「そうですね………学校の重要役職には一人か二人づつ、教師にもそれなりの数います」

 「………それはやっぱり、元々星波学園が退魔士達の学園だからですか?」

 「いいえ。学内の状況を把握しやすい様に、なるべく役職に付く様に指示しているだけです」

 「………そう言うのとは縁遠い生活をしていましたからよく分かりませんが………なろうと思ってなれる物なんですか?」

 「……どうでしょう?………よく言われているのは、魔力や魔法を持っている者は、不思議な魅力を持つと言われていますから、それも影響している可能性はあります」

 「………まあ、魔力って言葉は元々そう言う意味がありますしね………」

 「……ですから、今の夜衣斗さんならなろうと思えば、どんな役職にも就けると思いますよ?」

 「………どんなって言われても………」

 「私個人としては、武装風紀の委員長になって貰いたいですが………」

 「………いやいや、それはちょっと」

 「実力的にも、実績的にも申し分ないと思いますが?」

 「………そう言う問題ではなく………」

 「そうですか」

 「………えっと………その、すいません」

 「お気になさらず、断られる事はある程度予想していましたので」

 「……………」

 「ですが、気が変わったらいつでも言ってください」

 「………いや………まあ………どうでしょうね?」

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