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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』43

  ★夜衣斗★

 全員の自己紹介を聞き終わると、夕食の準備も丁度終わったとの事なので、夕食の準備もしていたメンバーの自己紹介を聞いて、遅めの夕食を食べる事にした。

 みんなが思い思いの仲間と場所で食べる中、俺は一人、自己紹介で得た情報を書いたミニノートを見ながら考えを巡らせていた。

 俺の考え一つで、この場の全員の行動が決まり、場合によっては生死を掛ける事になる。

 そう改めて考えると、胃がキリキリしてきて、食欲も湧かない………ので、俺は用意された夕食を受け取りに行かなかった。

 引き受けるんじゃなかったと後悔している自分がどこかにいるのがありありと分かるが、だからと言ってもう逃げれる状況じゃない。

 覚悟は決めている………いや………決めているつもりではいる…………だが、今までとは様々な意味で違う今回は……………果たして乗り切れるだろうか?

 そんな不安ばかりが頭に浮かび、上手く考えが纏まらなくなってきた。

 「黒樹君」

 飛矢折さんの声に、負の思考螺旋に陥っていた俺は、はっと我に返り、ミニノートから顔を上げた。

 「……大丈夫?」

 そう心配そうに微笑んでくれる飛矢折さんに、俺は何故だか少し安心感を覚えた。

 「黒樹君、何も貰ってきてないでしょ?何かお腹に入れておいた方がいいよ」

 飛矢折さんはそう言って、俺におにぎりやおかずが沢山入った手提げバックを広げて差し出してくれた。

 「………ありがとうございます」

 正直、食べたくはないが………飛矢折さんの行為を無下にするわけにはいかないので、バックに一緒に入っていたジュースのペットボトルと一緒にサランラップに包まれたおにぎりを一個貰った。

 俺がおにぎりを受け取った事を確認した飛矢折さんは、俺の隣に少し距離を置いて座り、二人の間に手提げバックを置いて、おにぎりを食べ始める。

 その食べるスピードが………ちょっと女の子とは思えない早さで、

 (ちょっとだわよ?)

 美魅の突っ込みに、俺は苦笑してしまう。

 その苦笑を飛矢折さんに気付かれ、飛矢折さんは照れ笑いを浮かべ、

 「お昼から何も食べてなかったから、お腹が空いちゃって………」

 「………そうですね………」

 俺は苦笑しつつ、おにぎりのサランラップを取っておにぎりを食べ……………?………なんか、おにぎりの具に今までおにぎりで食べた事がない様な食感が…………てか、甘!?これチョコレートだ!?何でおにぎりにチョコレートが!?

 おにぎりにチョコレートが入っていた事に驚いていると、台所があると言う通路の方から西島さゆりさんが大慌てで走ってきて、

 「っご!ごめんなさい!ひよりがおにぎりにチョコレートを入れちゃったみたいなの!もう誰か食べちゃった!?」

 さゆりさんの問いに食事をしているほとんどの人が顔を見合わせていて…………どうやら俺以外に被害者はいない様だった……………はぁ…………いや?案外いけるか?………ん~………


 さゆりさんに何度も謝られた後、中身を確認しつつおにぎりを若干無理して二三個食べ、改めてミニノートに視線を移した。

 ………改めて見ると………何と言うか……………

 「………退魔士の人達って、個性的な人達が多いよね」

 不意に飛矢折さんが、俺が思っていた事と同じ事を口にした。

 その手にはまだおにぎりとおかずが握られているけど………もう十個ぐらい食っていた様な………とりあえず気にしない事にして、

 「………普通の人とは違う力を持っているんです。多少は個性が強くても………まあ、自然なことでしょう」

 「自然かな?………まあ、あたしも黒樹君も人の事を言えないものね………」

 …………まあ、確かに…………


  ★???★

   一、『黒樹(くろき) 春子(はるこ)


 夜衣斗の呼び掛けに、夜衣斗の一番近くにいた春子が手を挙げた。

 「はいは~い。まずは私からね♪」

 春子の無駄ににこやかな笑みに、夜衣斗はため息を吐き、

 「………いまさら春子さんの自己紹介を聞いても………」

 「なにおー!こんな美人で若い叔母さんの情報だぞぉ。男子なら喉から手が出るほど欲しいでしょうが!と言うか、おばさん言うな!」

 「………自分で言ったんでしょうが………第一、そう言う情報はいりませんよ………」

 再びため息を吐いた夜衣斗に、春子はにやりと笑い。

 「……ほう?そう言う情報?………んふふ。どう言う情報が聞けると思ったの?」

 「……………」

 「痛い!痛い!無言でチョップしないでって」


  ★夜衣斗★

 叔母。少女マンガ家(この点だけは尊敬出来るな………)。鯉の会星波支部一応のリーダーらしい。だらしなく、家事能力ゼロの自立していない大人の女性………ってこの間素直に言ったら、「姉さんには言わないでぇ~」と泣き付かれた………しょうもない人だが、俺もある意味人の事を言えないので………場合によっては自分の将来を見ている様な………はぁ………

 うちの実家が退魔士で、しかも日本五大退魔士家系の一つだなんて言われてもいまいちピンとこないが………とにかく魔法に対して天敵と言えるぐらい強い家系………らしい………まあ、確かに退魔士能力から考えると………天敵と言っても過言じゃないか………

 退魔士能力は、『(くろ)大樹(たいじゅ)

 魂の中に寄生する魔法の樹。魔力を喰らって成長する性質な為、根は魔力を吸い、幹は魔力を弾き、枝は魔力を斬り、葉は魔力を散らすとの事。さらに、黒樹家の者は一人最低一本、黒き大樹の枝を黒き大樹に生やしたまま加工した黒樹(くろき)(かたな)を持っているらしく、その刀はいかなる魔物であろうと切れ味を任意で変えて斬る事が出来るらしい。っで、春子さんも例外なく持っているらしいが………なんでも春子さんの黒き大樹は非常に貧弱らしいので、春子さんは分家を含めて黒き大樹使いとして最弱との事。その影響で黒樹刀も小太刀ぐらいにしか作れなかったとか………まあ、その代わりなのか何なのか、最弱の黒き大樹持ちである妹を心配した俺の母さんが、春子さんを鬼の様に鍛えたらしく、おかげで純粋な体術だけならここにいるメンバー(飛矢折さんを除く)で敵う者はいないらしい………だから母さんを恐れているわけか……………まあ、そんな心配をしていた人の子供に、俺みたいな種無しが生まれたと言うのは………何の皮肉何だか………

 武装守護霊は黒き大樹の影響でなし。

 完全な接近戦タイプか?………前衛戦闘組だろうな………


  ★???★

 「………そう言えば、日本五大退魔士家系って黒樹家は呼ばれているんですよね」

 「そうよ」

 「………何でそう呼ばれているんです?」

「何でって言われても………ん~そうね………それぞれ家系ごとに言われている理由は違うけど………一つ共通しているのは、数が多いって事かな?」

 「………つまり、日本の退魔士達の中で最も勢力が強い五家系って事ですか………」

 「そうよ。まあ、他の退魔士家系は、大体五家の分家だったり、一人から十数人ぐらいしかいないって、所もあるらしいからねぇ~………ちなみに、純粋な戦闘力とか、何かに特化しているとかで考えると、五大退魔士家系より強い所は結構あるわよ」

 「………要は総合力で考えられているわけですか………黒樹家に、操形家に、射眼家………残り二つの家系はなんて言うんですか?」

 「鬼角(おにづの)家。口導(こうどう)家よ。退魔士能力は………直接聞いた方が早いわよ。ここには五大退魔士家系の血を引く子達が全員いるかね」

 「………なるほど………」

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