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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』39

  ★夜衣斗★

 頭の中がぐるぐる回っていた。

 相手はひよりさんに………酷い事をした連中だ。

 同情の余地はない。

 自業自得。

 因果応報。

 そんな言葉が思い浮かぶ。

 そもそも、死んで喜ぶ人はいても、生きていて喜ぶ人はいない様な奴らだ。

 ………だが、それでも………どうしても………色んな感情が噴き出してくる。

 その感情を俺は理解したくなくって、両手を強く、強く握った。

 (夜衣斗………)

 美魅の心配そうな声に、俺は苦笑した。

 ………何なんだろうな………そんな事を思う必要はないって思ってても、色んな感情が噴き出してくる。

 (夜衣斗は優しいだわよ)

 ……………優しいね………………これは優しさなんだろうか?……………いや、何であろうと、今は切り替えるべきだ…………今は、こんな事に思いを煩わせている場合じゃない。

 俺は大きく深呼吸して、

 「………彼らと頂喜武蔵がこうなったのは、状況から考えて、同じ原因………多分、堕ち人達がばら撒いている武霊使い強化薬が原因でしょう」

 「ん~……つまり、武霊使い強化薬は、使用者に魔力を与える薬って事?」

 春子さんのその問いに、俺は首を横に振り、

 「………正確には、使用者の魂に強制的に魔力孔を開かせ、魔力を流し続ける薬だと思われます」

 「魔力孔?……じゃあ、薬を打った武霊使いが強化されるのは、強制的に開かされた魔力孔から流れ続ける魔力によって引き起こされるって事?」

 「………もちろん、それだけではないでしょうが………少なくとも魔力孔を開かせているのは、頂喜武蔵の心の中で確認しましたから、それは間違いないです。そして、流し続けられる魔力により、武霊は………多分、容量限界になり、壊れる………頂喜武蔵の心の中で、頂喜武蔵の武霊がひび割れ壊れている様子も、魔力が武霊に流し込まれている様子も確認しましたから、この予想で間違いはないと思います」

 「そう………ん?それを確認したって事は………」

 「………ええ、壊れた武霊と魔力孔を開かせている武霊使い強化薬の……なんでしょうね?象徴、化身?……みたいなのを倒し、頂喜武蔵を……結果的には、助けました」

 「そう……よく頑張ったわね。夜衣斗ちゃん。えらいえらい」

 そう言って頭を撫でる春子さん。

 ………また頭を撫でられた………というか、こんなみんなの前で、そんな子供みたいな扱いを………ん?……そう言えば………

 「………ところで、その頂喜武蔵ともう一人が、意識を失った状態でトンネルの中にいたと思うんですが………」

 周りを改めて見回すが、それらしき姿が見当たらない。

 俺の問いに首を傾げた春子さんは、芽印さんを見る。

 見られた芽印さんは、困った顔になり、

 「……ん~と……実は………私の能力で一度に運べる人数は、二人が限度なの。っで、夜衣斗君とともちゃんを運んで、残った二人を回収しようと戻った時には………」

 「………いなかったと?」

 「そうなんだよね~」

 と言ってあはあは笑う芽印さん。

 ………笑い事か?………ん~………三島忠人か?…………いや、違うだろな………行動を起こしたタイミングからして、三島忠人は鬼走人骸との一件を全て見ていたはずだ。だとすると、頂喜武蔵や……ミラーマンの武霊使いが武霊を失っている。もしくは役に立たない事を知っているはず……………だとすると………堕ち人に回収されている可能性が高いか。少なくとも、頂喜武蔵は、堕ち人の実験対象だっただろうし、その近くに全く関係ないのが倒れていたのなら、ついでか、誤認しない為かで連れて行くか?………まあ、何にせよ。同時にいなくなったのは間違いないだろうし………なら、殺されている可能性は低いだろうな………武霊は魂に、精神に寄生する存在であるなら、解析するなりなんなりするのに生かしている可能性が高い………まあ、武霊を保管する何かがあるなら話は別だが……ん~それがあるなら、殺して奪い取った方が攫うより簡単か?………だが、それが大掛かりな装置だった場合、攫った後に………いや、大掛かりな装置があるなら、鯉の会が気付かないのは……………

 「お~い夜衣斗ちゃん」

 気が付くと目の前に春子さんの顔があり、俺は思わずびくっとありがちな反応をしてしまった。

 「攫われた連中の事を心配するのはいいけど、それは、いくら考えてもしょうがない事よ」

 と優しく微笑んで言われた。

 「………まあ、それはそうでしょうが………」

 「それに、私も生かして研究説で間違いないと思うわよ?」

 「………だといいんですけどね………ん?」

 俺、今の考えを喋ってたか?

 「………ぶつぶつ考えを喋ってたわよ」

 !?

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