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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』38

  ★飛矢折★

 黒樹君が星波町奪還作戦を指揮する事が決まった後、黒樹君はみんなをドーム状の中心に集め、シールドサーバントで椅子を作って座らせた。

 みんなと言っても、西島さん達とか、非戦闘員らしき人達は他の場所でみんなの夕食の準備をしてる。

 ………そう言えば………お腹空いたかも…………お腹が鳴らない様に気を付けなきゃ………

 「………そもそも、琴野さん達は……どこまで出来るんですか?」

 みんなに見られている中、黒樹君は若干躊躇しながらそんな事をみんなに聞いてきた。

 意味が分からなかったのか、周りがざわつく。

 「あの……どこまでとは、どういう意味ですの?」

 みんなを代表する感じの統合生徒会長の問いに、

 「………俺は退魔士と言う存在をフィクションの中でしか知りません。ですから、作戦の詳細を考えるには、どうしてもどこまで出来るか知っておく必要があります」

 「………それは構いませんが………詳細と言う事は、既に大体の作戦は出来出来ていると言うことでしょうか?」

 「………ええ、基礎は出来ています」

 頷く黒樹君に、本格的にざわつくみんな。

 ………基礎は出来てるって………いつ考えていたんだろう?

 「躊躇ってたわりにはやる気まんまんねぇ~」

 春子さんがからかう様にそんな事を言う。

 「………まあ、一人で奪還する方法とかを、ここに来る前に考えていましたから………」

 「一人でって………」

 絶句するみんな。

 その様子に黒樹君は苦笑して、

 「………皆さんが戦っている混乱を利用すれば、どうにか出来るかと思ってましたから…………そもそも、星波町奪還は三つの事をするだけ奪還は完了しますからね」

 「三つ?」

 黒樹君の言葉に春子さんは小首を傾げる。

 「………『三島忠人の捕縛』・『星波町と星波学園の放送施設奪還』・『携帯音楽プレイヤーで個別に催眠魔法を掛けられている者の解放』の三つです………それぐらいなら、上手くやれば何とかなると思ってた訳です」

 確かにそう言葉にすれば簡単な感じがしないわけでもないけど………どうなんだろう?言うほど簡単かな?相手は武風の委員長でもある人だし…………

 「………まあ、かなり危険な賭けになったでしょうから………正直、皆さんの様な味方が出来て、ホッとしている所です」

 「まあまあ、嬉しい事を言ってくれるじゃないの………ん~でも」

 再び小首を傾げ、

 「かなり危険って?頂喜武蔵との戦いは、逃げている最中だったから、所々しか見れなかったけど………今の夜衣斗ちゃんなら、サーバント達を出しまくれば余裕なんじゃない?」

 首を傾げる春子さんに、黒樹君は躊躇しつつ、

 「………多分なんですが、意志力の代わりに魔力を武霊の糧とした場合………いや、魔力じゃなくて、膨大な魔力供給が問題なのかもしれませんが………どうも武霊は『壊れる』みたいなんですよ」

 武霊が……壊れる?

 「武霊が壊れるって………はぐれ化じゃなくて?」

 「………あれは、いうなれば『武霊使い側が壊れた事によって起こるはぐれ化』です。ですが、さきほど頂喜武蔵の身に起きたのは、その逆と言えるはぐれ化だったと思われます………戦いの最後の方は見てないですね?」

 黒樹君の問いに、春子さんは頷く。

 「………俺が目撃した……便宜上『逆はぐれ化』とでもいいましょうか?………その逆はぐれ化は、レベル3の状態で武霊使いが意識を失い、その身体が少しずつ消えると言う物でした………多分、壊れ、自分を失った武霊が、自己保存の本能で自身の壊れた部分を補う為に、最も組成が近く、最も近くにある自身の武霊使いの魂を喰らってしまう事による現象なのでしょう」

 「あ~その現象なら、他の連中にも起きてたよ」

 不意にそれまで黙って………何処から取り出しのか(多分、自分の退魔士能力で取ってきたんだろうけど………)ハンディカメラで黒樹君を撮っていた芽印がそんな事を言った。

 「………他の連中?」

 黒樹君の問いに、芽印は少し考える仕草をして、何かを思い出したのか、黒樹君に近付き持っていたハンディカメラを操作して液晶画面を見せた。

 液晶画面で何を見たのか、黒樹君は口元を手で押さえ、顔を地面に向け、暫く固まる。

 その姿は考えている様にも見えるし、何かに耐えているかのように見えた。

 そして、少しして大きなため息を吐き、オウキからリフレクションサーバントとスカウトサーバントを出して、

 「芽印さん。もう一度今の映像を、こいつに見せながら再生してくれませんか?」

 「はいは~い。了解」

 黒樹君の指示通りに芽印がハンディカメラの液晶をスカウトサーバントに向けて映像を再生すると、リフレクションサーバントがその映像を黒樹君の上あたりに大きくして映し出した。

 そこに映し出された映像は、芽印が逃げている時に撮影した映像なのか、大きく揺れている上に、時々いきなり場面が変わっていた。だけど、その全ては、半透明の巨大な武霊達の姿であり………そして、その中にいるその武霊の武霊使いの姿。上手く隠れられる場所でも見付けたのか、不意に映像の揺れが止まり、映像が拡大され………みんなが息を飲む。

 拡大された映像には、ほぼ首だけになった武霊使いが映り、その消えている部分が瞬く間に広がり、終には消滅してしまう。その隣の武霊も、その隣の武霊も、全部、同じ様に………

 黒樹君の様子を反射的に見てしまう。

 黒樹君は、命を奪う事も、奪わせる事も酷く恐れている様だった。

 だから、何のかんの言いながら、黒樹君の前では、結局は誰も殺していないし、誰も殺させていない。

 それは『命の重み』をちゃんと分かっているからで………だから、例え相手がどうしようのない連中だったとしても、敵だったとしても、救えなかった命がある事を知れば………きっと………

 黒樹君はリフレクションサーバントが映し出す映像を無言で見上げていた。

 表面上は変化はない様に見える。

 ………だけど………その両手は強く、強く握られていた。

 ……………黒樹君………あなたは優し過ぎるよ………

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