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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』37

  ★夜衣斗★

 二人の発言に、俺は絶句するしかなく。

 ……………あ~~~~~~~~~~もう!ありえないだろう!普通!?俺は基本、この場にいる誰よりも………素人だって言うのに………………

 ちょっと頭痛の様な物を感じ、思わず額に手を当てながら、多分、人生最大のため息を長く吐いた。

 (夜衣斗。大丈夫だわよ?)

 流石に心配になったのか、美魅が声を掛けてきた。

 ………大丈夫だよ………まあ………希望的観測で、一応奪還案は……考えていたから、何とかなると言えば何とかなるかもしれないが…………しかしな…………

 (しかしな?)

 いや………普通、色々と問題あるだろう?

 (?………何のだわよ?)

 ………まあ、何かかは……………直接聞かないとな………

 俺は目を閉じ、少しだけ深呼吸。

 「………俺が何とかしてくれると思ってたって事は、この場にいる全員が俺の指示に従ってくれるって事ですよね?」

 その問いに、

 「もちろんよ」

 と頷いて応える春子さん。

 視線を統合生徒会長に向けると、統合生徒会長は応じる様に頷き、周囲を見回すとほとんどの人が頷いた。

 ………何だか胃がキリキリしてきた。

 「夜衣斗様。わたくし達は、夜衣花ちゃんのお」

 お?

 「………お願いもあって、今まであまり積極的に接触をしないようにしていましたが………」

 ………何だかね………

 「今までの夜衣斗様の活躍を、わたくし達は高く評価しているのですわ」

 そう言った後、統合生徒会長は困った顔になり、

 「実の所を言いますと、わたくし達は退魔士能力の訓練はした事があっても、実際に退魔の仕事をした事がある者はほとんどいませんの」

 やっぱりそうか………だが、

 「………ですが、武霊使いとしてはそれなりの戦闘経験はあるわけですよね?」

 「ええ……ですが、今回はほとんどその経験も役に立たないと思いますわ」

 役に立たない?………つまり、

 「………退魔士の武霊であっても、武霊は武霊と言う事ですか………」

 「はい。ここまで逃げる際に、この中の何人かが武霊を具現化させたのですが………操られてしまいましたわ」

 統合生徒会長の肯定に、俺は思わずため息を吐いた。

 オウキに三島忠人の武霊能力が効かなかったのは……ガチャポンマンの武霊能力が効いた前後の事を考えれば……魔力が原因なのは間違いないだろう。

 だとしたら、同じ様に魔力を持つ退魔士達の武霊も、魔力を糧にしているんじゃないかと思ったんだが………どうやら違うらしい………考えて見れば、自身の退魔士能力に使われている魔力に余剰があれば、退魔士も魔法を使うんじゃないんだろうか?……なのに魔法を使っていると言う話はない……だとすると、退魔士達の魔力には余裕がなく、その為、退魔士達も武霊を使うのに意志力を消費している。と言う事になる………まあ、実際に『武霊のみが操られてしまった』のなら、それは間違いないんだろうが………ん~………だとすると、鯉の会の人達は、自身の退魔士能力で戦うしかないって事になる………だが、だとすると………一つ問題があるな………

 「………飛矢折さんの話からすると、催眠下にあっても記憶は残ってる様ですから………下手に退魔士能力は使えませんね………」

 「ええ」

 頷く統合生徒会長。

 さっき統合生徒会長は退魔士の存在は世間一般に対して秘密にしなくてはいけないと言っていた。

 その理由は色々と思い付くが………理由が何であれ、その秘密にしなくてはいけないと言うのが………かなり厄介なのだろう。

 通常は、隔離結界とか言う人を近付けさせなくする方法などを使ってるんだろうけど………それは忘却現象か、武霊の影響で使えないと言う話し出し………だが………ん~……

 「………退魔士側にも記憶を操作する技術はあるんですよね?」

 「………あるにはありますが、忘却現象ほどではありませんし………記憶に関する退魔士能力を持つ退魔士は、基本的に行動が制限されていますので、わたくし達の仲間にはいないんですの。ですから、普段は記憶操作などの魔法が込められた退魔士道具などを使うんですが………そう言うのって、高いんですのよ………とても全町民をカバーできるほどの数は用意出来ませんわ………それに、万が一の為に用意していた記憶操作系退魔士道具も、ここまで逃げる際に大半を使ってしまってますし、奪還後に使用しなくてはいけない人数を考えると………足りない可能性もありますわ」

 なるほど、やっぱり逃げる際に各自の退魔士能力を使っているわけか……まあ、そりゃそうか………と言うか、高いって………さっきから思っていたが………

 「………琴野さんって……お嬢様なんですよね?」

 そう思わず問うと、統合生徒会長は苦笑して、

 「資産家なのは御婆様や両親だけですわ。わたくし個人が自由にしていい資産は全く無いんですのよ」

 ………なるほど………まあ、考えて見ればそうだよな。漫画みたいに、お金を自由に使ってる描写は大体フィクションって事か?………と言うか、

 「………理事長とご両親は鯉の会メンバーじゃないわけですか………」

 「……はい。御婆様とお父様、お母様は………敵ではありませんが、味方でもないと思いますわ」

 「………つまり、関わりを避けていると?」

 「ええ。ですから、三人とも、重要な学校行事以外、星波町にほとんど来ませんわ」

 ん~………そっち方面から情報を得るのは難しいわけか………まあ、話からすると琴野家は、ただたんに利用されただけって感じがするし、そんな有益な情報はなさそうか?………

 「夜衣斗様」

 思考は別方向に働き始めた所に、統合生徒会長は真剣な面持ちで俺の名前を呼んだ………と言うか、いつの間にか黒樹様から夜衣斗様に呼び方が変わってるんだよな………ん~………

 「夜衣斗様もお気付きだと思われますが、今回の件は、圧倒的にわたくし達に不利な状況なのですわ」

 確かに、武霊も、頼みの退魔士能力も『今のままでは使えない』。

 「この状況を打破出来るのは、三島忠人の武霊能力が効かない武霊をお持ちの夜衣斗様。あなたしかいませんわ……ですから、星波町奪還は、夜衣斗様中心に必然的になりますの……そうなれば、わたくし達が指揮を取るより、オウキの主である夜衣斗様が指揮を取った方がよろしいかと思いますわ」

 ……………

 「勿論、全力でわたくし達がサポートいたします」

 ……………

 「夜衣斗様」

 …………これも、俺が越えるべき死の運命なのだろう。状況から考えて宿命の悪意は、『支配』。

 相手は統合生徒会統合副生徒会長兼武装風紀委員会委員長『三島忠人』。

 武装守護霊は『ハーメルンの笛吹き男の様な武霊』。

 武霊能力は、『笛の音を間接的であろうと聞かせた相手に催眠魔法を掛ける能力』。

 そして、その催眠下に入っている人数は、星波町ほぼ全町民と星波学園生徒……部活組と寮生か?

 味方は退魔士………の家の人達、大体五十人ぐらい。

 しかも、武霊・退魔士能力共にほぼ使えないときている………

 ………改めて考えると………圧倒的に不利な人数に思えるが……………

 俺は深いため息を吐き、

 「………分かりました。俺でよければ、星波町奪還の指揮を取らせて貰います」

 「夜衣斗様!」

 わっとなる周囲に、俺は苦笑して、

 「………その代わりと言ってはなんですが」

 「はい。何でしょう?」

 「様付けは止めてくれませんか?………どうも慣れない」

 その俺の提案に、統合生徒会長……いや、琴野さんでいいか……は、笑って、

 「はい。夜衣斗さん」

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