第一章『武霊のある町』17
★夜衣斗★
再び高神麗華と対峙した時、俺は隠れていた空地とは違う海に近い空き地で、十数体の赤い武霊に囲まれていた。
オウキはこの場にはいない。
高神は、赤い狼男の様な武霊に抱き抱えられて現れ、異様なほどにこにこしている。
「あらぁ?かくれんぼは終わり?ゴミ虫」
俺は高神に肩を竦ませて見せた。
「ふ〜ん?まあ、いいわぁ」
そう高神が言うと、俺を囲んでいた赤い武霊の一体が、唐突に形を失い、あのスライムになった。
どうやら本体も喰らった武霊になる事が出来る……と言うのは本当だった様だ。
「うふふぅ。私の武霊ちゃ〜ん」
赤い武霊達が、俺を逃がさないように包囲を縮めてくる。
スライムが俺の正面にずるずると移動し、まるで大口を開けるかの様に変形し、俺に迫る。
……高神は、オウキがこの場にいない事を特に気にしていないようだが……それほど、自分の武霊に自信があると言う事なのだろうか?……まあ、こちらとしては、その方が都合がいい。
よし!作戦開始だオウキ!
俺が心の中で合図を出した瞬間、上空でステルスサーバントによって隠れていたオウキが一気に降り立ち、既に出していた二丁拳銃を連射。
予想されていたのんだろう。ほとんどの武霊達に防御されたが、使用した弾丸が着弾した瞬間対象を炎で包む『火炎弾』であった為、この場の全ての武霊が炎に包まれた。その内の三体が、炎に弱かったのか、消滅する。
「私の武霊がぁ!!!なんて事をするの!?このゴミ虫が!!」
鬼気迫る感じで激昂する高神。
先程の謎の男からの情報によれば、高神の武霊(名前は付けていないらしい)が使う『喰らった武霊使いの武霊を具現化し、自在に操る能力』は、言うなれば『制御された武霊のはぐれ化』なのだそうだ。つまり、武霊の核がその体にある為、『一度倒せば、二度と具現化する事が出来ない』と言う事になる。更に、その能力故か、本体の具現化にかなりの意志力を消費するらしく、一日に一回の具現化が限度なのだそうだ。そして、現在、高神が所有する武霊の数は、『二十五体』
残り、本体と二十二体。