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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』34

  ★???★

 春咲茜は、自分の部屋のベッドの上で寝転がり、ため息を吐いた。

 黒樹夜衣斗。

 彼女にとって嫌な名前だった。

 何故なら、自分が参加していた弱者同盟を壊滅させたのは、同じ名字を持つ退魔士達だったからだ。

 更に嫌だと思うのは、壊滅直前に出会った黒き大樹の戦巫女と呼ばれる日本最強の退魔士の一人・黒樹夜衣花と名前も、雰囲気も、どこか似た所があるせいもあった。

 実はその夜衣斗が本当に黒樹家の人間であった上に、夜衣花と兄妹だと言う事を、茜は知りもしないが、その夜衣花の説得によって、茜は今、ここにいられる。

 弱者同盟最後の事件・国会議事堂爆破未遂に、彼女と西島ひより、そして、楠木久思は参加していた。

 二人と茜は、イザナミ=ヴァルキュリアに与えられた超能力の相性から、チームを組んでテロ行為を行っていた。

 茜の超能力は『転移人魚』

 視認した事がある水場から水場へと瞬間移動する超能力。

 ひよりの超能力は、『沈黙隠者』

 意図して喋らない事によって他人からその姿を見せなくする超能力。

 そして、久思の超能力は『折紙爆弾』

 折紙を折る事により、その折紙を爆弾にする事が出来る超能力。

 折った回数により、爆発の威力と爆破時間が大きく・長くなる超能力でもあった為、国会議事堂爆破の為に集められた爆破系の超能力者の一人として選ばれ、いつもの様に対象を爆破する様に言われた。

 茜が爆破対象までひよりを運び、ひよりが久思が作った爆弾で対象を爆破する。

 それが三人のいつものやり方だったが、三人は国会議事堂の爆破に疑問を抱いていた為、作戦に参加するタイミングが遅れた。

 そもそも、彼女達は弱者同盟参加者としてテロ行為を行ってはいたが、そのテロで人的被害は一切出していない。

 多くの彼女達によって起こされた爆破テロは、弱者同盟の存在を周知させる事と、情報収集の為がほとんどだった。

 爆発で騒ぎを起こし、その間に茜とひよりが情報収集を行う。

 そんな事ばかり続けていた為、どんどん過激に、規模が大きくなる弱者同盟に三人は疑問を抱き、躊躇。

 だからこそ、作戦に遅れ、黒樹家を中心とした退魔士達との総力戦に直接巻き込まれる事を回避できた。

 だが、遅れて参加したからこそ、到着直後に戦闘状態に入っていた黒樹家分家の人間と遭遇し、『黒き大樹の黒樹刀に久思が茜を庇って貫かれてしまう』。

 そして、とっさに逃げた先で、夜衣花に会い、説得されて、見逃される。

 弱者同盟壊滅後、目を覚ました久思が記憶と共に超能力を失っている事を知り、茜はショックを受けた。

 何故なら、久思とは、恋人とまではいかないが、少なからず互いの事を思い合っていた間柄だったからだ。

 だから、彼女は『裏から手を回し、久思が受けていたいじめ問題を表面化させ、星波学園に転校させる様に誘導してしまう』。

 そうして、彼の近くで記憶が戻るのを待つつもりでいたのだが、転校させてしまった事によって、新たないじめを久思が受ける様になってしまい、どうにかしなくてはと思い悩んでいた所、夜衣斗が解決。

 そして、今日、その後の事件で引き籠りになってしまった久思を、またも夜衣斗のおかげで何とかなったかもしれないので………何となく嫌いだが、好感は持てると言う不思議じゃ状態になっていた。

 (彼に任せてばかりじゃなくて、私ももっと久思君と仲良くしないと………)

 そんな事を思いながら、茜は携帯電話を取り出し、三人で撮った写真を見る。

 いい思い出よりも、悪い思い出の方が多い気がしているが、それでも茜が生きていた中で一番充実した日々だったと言えた。

 久思に、ひより。

 ふと少し前に会ったひよりの事を思い出す。

 彼女は、他の弱者同盟残党達と繋がって、弱者同盟としての活動を再開しており、茜をその活動に誘うと共に、星波町を拠点に活動し、壊滅前の弱者同盟を何度も退けた鬼走人骸を調べようとしていた。

 茜は、鬼走人骸が弱者同盟を退け続けられた理由に心当たりが、ひよりと会った場所が星波町内だった事もあり、武霊だと言う事を分かっていたので、参加出来ない意志と共に武霊の事を警告し、鬼走人骸に関わらない様に言った。

 ひよりは茜の言葉に残念がると共に、鬼走人骸に関わらない事を約束してくれたので、ひよりに関しては茜は何の心配もしていない。

 だが、ひよりがその約束を破り、鬼走人骸を調べようとして捕まってしまい、監禁され記憶を消され、人としての尊厳を奪われる様な事をさせられていた事を知る由もなく、更に言えば、そのひよりさえ夜衣斗により救われている事も知る由もなかった。


  ★夜衣斗★

 「………春咲さんと楠木が弱者同盟参加者?」

 春子さんのその話に、俺は眉を顰めた。

 確かに二人とも互いに弱者同盟に参加する資格はある感じだったが………あの二人が超能力者?

 そう疑問を抱いていると、すすっと春子さんが俺に近付き、小声で、

 「何も確信がなくて言ってるんじゃないのよ?実はね。夜衣花ちゃんがひよりさんを含む、この三人に国会議事堂爆破未遂の時に会ってるのよ」

 国会議事堂爆破未遂!?と言うか

 「………夜衣花。あの事件に関わってたんですか!?」

 同じく小声でそう問うと、春子さんは頷き、

 「そうよ。あの事件は黒樹家のほとんどの人間が対応に当たってたの。ちなみに私もね……っで、その時に夜衣花ちゃんが三人を見逃しちゃったわけ」

 見逃した?

 「………どうしてです?」

 「幾つかの理由はあるけど………夜衣花ちゃんの場合は気に喰わなかったからじゃない?」

 「………気に喰わない?」

 「うん。あの時、退魔士上層部の命令は弱者同盟の超能力者を『殺しても良し』だったわけ」

 …………まあ、被害の規模から考えれば、当然と言えば当然の対応だが………確かに気に喰わないな。

 「っで、一部の、特に鯉の会に所属している若い退魔士達は、それに反対していたわけ。だから、見逃したのよ」

 ふむ………確かに、心情的な理由はそうだろうが………

 「………他の理由として、泳がして国会議事堂爆破未遂に参加しなかった弱者同盟参加者を見付ける為………とか?」

 「さすが夜衣斗ちゃん。分かってるわね」

 「………まあ、よくある話ですからね………」

 ………それにしても………あの二人が弱者同盟ね………………と言うか、だから何なんだ?

 改めて考え深げに思っていると、ふっとそんな事を思った。

 そもそも、俺は退魔士じゃない。

 退魔士の家の生まれかもしれないが、弱者同盟にも関わっていないし………俺がどうこうする事じゃないな………よし、気にしない事にしよう。

 「あ!そうそう。その子の事だけど」

 まだ小声で話し掛けてくる春子さんは、俺が持っているリュックサックを………絶賛気絶中のメガネベアを指差し、

 「夜衣斗ちゃんはその子が何なのか知って一緒にいる?」

 などと聞いてきた?

 ?

 「………美魅と同じ魔物の一種?」

 俺の疑問形に、春子さんはため息を吐き、

 「やっぱり分かってなかったのね………まあ、当然よね。普通は知らないし、私も夜衣花ちゃんから聞いて初めて知ったんだし」

 「………一体何だって言うんですか?」

 「この子はね。魔法使い達に、『世界樹渡航生物』って呼ばれている存在らしいわ」

 世界樹渡航生物?

 「………つまり、こいつは異次元の生物って事ですか?」

 「そうよ………しかも、この子は本気になれば『一つの世界を滅ぼせる』………だって」

 ……………はぁ?

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