表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
427/471

第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』33

  ★夜衣斗★

 堕ち人に、三猿ね………ふむ。もしかして………

 「………その三猿と呼ばれる中の誰が協力者なんですか?」

 その俺の問いに、

 「ん~教えても良いけど、ここ以外でその事を口にしちゃダメよ?もし、堕ち人の連中にその事が耳に入ったら、その人の立場が危うくなるから」

 ここ以外ね………やっぱり、何らかの妨害結界とか、そんなのを張ってるのか?………まあ、あんな話をしてるんだから、当然と言えば当然の措置か………何にせよ。

 「………外でそんな事を喋る意味も理由もないと思いますが?」

 「ま~そうかもね………言わざる魔法使いが私達の協力者よ。っで、名前は日向魁人」

 日向魁人ね………言わざる魔法使い……言わざるね………やっぱり、だとすると、

 「………言わざるって事は、口か喉の器官に障害があるって事ですよね?」

 「ええ。喉が完治不可能なほど怪我を負って、喋れなくなってるそうよ。しかも、足も悪くて常に車椅子に乗ってるの」

 「………喋れないって事は、どうやってコミュニケーションを取るんですか?」

 「ノートパソコンを使って、人工音声で喋ってたわね」

 ん~………やっぱり、どう考えても自称最後の敵だな………と言う事は、最後の敵……日向魁人の敵は他の三猿か?それとも七人の裏切りの魔法使い?………何であれ、当分は味方って事か………しかし、

 「………その人は、武霊について何も言ってこないんですね」

 「ええ、一度も聞いた事がないわ………最初は忘却現象のせいかと思ってたけど、夜衣斗ちゃんの話を聞いて、話せない理由があるんじゃないかって考えを変えたわ……だから、多分だけど、武霊関連の話は、彼にとってもかなり危険な話なんだと思うのよね。彼は敵が多い人みたいだから………」

 ………つまり、漏れても問題ないギリギリのラインの情報しかこっちには提供出来ないって事か………まあ、自分の名前さえ迂闊に教えられないみたいだったし………だとすると………

 「………春子さんはその日向魁人と会った事があるんですよね?」

 「ええ」

 「………この町で日向魁人と会った事は?」

 「ないけど?……どうして?」

 「………武霊が堕ち人の兵器開発なら、堕ち人の関係者が必ずこの町にいるはずですからね………まあ、流石にトップが常時いるのはおかしいでしょうが………なんであれ、構成員がこの町にいるのは間違いないでしょう。忘却現象をある程度コントロール出来る様になったとしても、完全にコントロール出来ないなら、この町で研究実験する必要があるでしょうし………実際に堕ち人の実験らしい事件はいくつも起きていますしね」

 「確かにそうね………でも、星波町にはそれらしき施設はないわよ?」

 「………何らかの見落とし、もしくはこちらの盲点を突く場所か、それとも分からなくなる様な何かがあるって事でしょう………まあ、それらを調べるのは、星波町を取り戻してからの話でしょうけどね………」

 「そうね。夜衣斗ちゃんが手伝ってくれるなら、見つかるかもね」

 ………そう言えば、手伝うって言っちゃったんだっけ………いくら退魔士の一族の生まれ………いまいち現実感がないが………出来れば関わりたくはないな………まあ、そうは言ってられない状況か………

 「………ところで、春子さん達はどうやって、三島忠人から星波町を取り返すつもりなんです」

 「え?」

 え?って………まさか………

 「そうそうさゆりさん。この二人に見覚えはないですか?」

 唐突に話を変え、春子さんはさゆりさんに二枚の写真を見せた。

 あまりの唐突ぶりにさゆりさんは戸惑いつつ、写真を確認。

 「……いいえ。見た事が………いえ、この女の子は………確か、一度だけひよりと話している所を見たかもしれません」

 「いつ頃か憶えていますか?」

 「………確か、去年の七月頃………だったかしら?」

 「………そうですか………後、去年の娘さんの行動を、知っている限りでいいので教えてくれませんか?」

 「はい………とは言っても、去年の春頃から、娘とは疎遠になってましたから………今考えると、私を弱者同盟に巻き込まない為に、私から遠ざかっていたのかもしれませんね………」

 「弱者同盟の参加者の大半は………特に去年頃に参加した子供達は、優しい子や正義感の強い子が多かったみたいですから、きっとひよりちゃんも」

 「ええ、ひよりは正義感が強くて優しい子でしたから………だから、クラスで起きているいじめが見過ごせなくて………止めさせようとして、逆にいじめの対象になってしまって……………弱者同盟なんかに………」

 涙目になってぎゅっと寝ている娘に抱き付くさゆりさん。

 流石の春子さんも、なんとも言えない表情になっていた。

 弱者同盟の参加者と被害は、主に都市部が多かった。

 マスコミとかは、それだけ都市部の子供達の闇がそれだけ大きかった。とか騒いでいたが、個人的には電子ネットワークの繋がりが、郊外などより都市部の方が強かった為だと思っている。実際、去年のネットでは、弱者同盟の話で持ち切りだったし………なんであれ、

 子供………俺達の世代の闇は、多少の違いはあれど、どこであろうと同じだと思う。

 だから、俺も、もし退魔士の子供じゃなかったら、気付かれずに守られていなかったら………きっとひよりさんと同じ様に弱者同盟に参加していた………そんな気がした。

 さゆりさんに抱き付かれているひよりさんを見ると、とてもテロ組織に所属していた人間には見えない、呑気な寝顔を見せている。

 不運なのは、鬼走人骸が星波町を拠点とした連中だった事か………きっと、弱者同盟事件が起きている時は、星波町にいたか、逃れたかして、弱者同盟を撃退していたんだろう。だからこそ、鬼走人骸はさっきまで健在で、ひよりさんはその調査に、弱者同盟がやり残した事を片付ける為に、星波町に来て…………重いため息しかでないな………

 ん~にしても………もしかして、春子さん………全く作戦が思い浮かんでない?

 などと思いながら、春子さんが持つ二枚の写真を何となしに覗き込むと………

 「え?」

 思わず驚きの声が漏れた。

 そこに写っていたのは、春咲茜と………楠木久思の二人だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ