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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』30

  ★飛矢折★

 あたしが黒樹君と……ごにょごにょ……するしないを瞬輝丸と心の中で口論している間に、話はまたしてもとんでもない方向に進んでいた。

 去年、日本のみならず世界中を騒がし、震撼させた事件………テレビをあまり見ない私でさえ知っている弱者同盟事件の話で………しかも、それに国が関わっている?

 黒樹君の言葉に、周りがざわつく。

 「どうしてそう思うわけ?」

 春子さんのその問いに、黒樹君は、

 「………簡単な話です。日本全国と言うとんでもない規模で、被害者も一千万人近いと言う事件なのに、日本政府があまりにも後手に回り過ぎている。更に言えば、在日米軍基地にも被害が遭ったって言うのに、『アメリカ政府は一切このテロには関わろうとしなかった』。アメリカ国内外からいくら避難されても、日本政府が対処すべき事として………まあ、『世界各地で内戦が多発し、それにことごとく介入している』のですから、そんな余力が無いのは分かりますから、多少は納得していたんですが………ですが、こう考えると、アメリカが加入せず、日本政府が後手に回り過ぎた理由がしっくりくるんです………弱者同盟事件は、『アメリカ主導の次世代魔法兵器開発実験』だった……と」

 更にとんでもない事を言い出した。

 静かになる周囲に、間を少し置いてため息を吐く春子さん。

 「その根拠は?」

 「………まず、次世代魔法兵器はどんなものかと考え、幾つかのパターンを考えました。一つは、ゴーレムなどの無人兵器。これはロボット兵器の開発と実用がされていますから、それに魔法技術を入れる事で格段に性能が上がるでしょうし、人的被害の減少は様々な面で急務とされている事ですから、それらの開発研究はまず間違いなくされていると思います。もう一つは、既存兵器への魔法技術の組み込み、もしくは融合。これが一番簡単な事だとは思いますが、これもそうですが、ロボット兵器にも一つ問題点があります。それは魔法の存在を公にしないと大々的に使えないと言う事です。魔法を明らかにすると言う事は、それまで世界各国が隠し続けてきた魔物や退魔士の存在を明らかにしなくちゃいけませんし、それに伴った混乱は、どれだけの規模になるか……想像し難いものがありますが……もしかしたら、魔女狩りの様な事が世界中で多発し、今の人間社会が崩壊する可能性だってあります。そう考えると、魔法の事を公にするのはあまり得策ではありません……まあ、ある程度はごまかしが効くでしょうから、使えなくはないでしょうが………隠し続ける場合、あきらかに物理法則から外れた様な仕様の兵器は使えない。それはいくらなんでもわざわざ魔法兵器を作った意味が無い。更に言えば、今の戦いの主な主戦場は、市街などの大型兵器や大量破壊兵器を使うにはあまり不向きな場所である事が多い様ですから………それらと武霊の事を踏まえて考えると、世界各国が最も開発研究に力を入れているのは『個人兵器』である可能性が高い。っで、個人兵器の開発に力を入れているなら、もっとも手っ取り早いのが人体兵器………超能力者の開発なんじゃないかと思ったわけです。実際に表に出ている話でも、とある国の軍には超能力部隊があったって話や、世界各国で国が超能力研究をしているって話はよく聞く話ですからね………まあ、あれらは、退魔士とかの存在を知った今では、ただのカモフラージュぽく感じますけどね………っで、超能力が魔法を取り込んだ人間であるなら、魔法を人工的に植え付ける技術が必須。かと言って、科学方面で魔法を取り扱う事は出来ないでしょうし、魔法使いが魔法を植え付ける事は可能でしょうが、それだと、数が少ない魔法使いに依存してしまうでしょうし、負担が大きくなってしまう。なら、超能力を他人に与える事が出来る超能力者を作った方がいい………今の時代に偶々超能力を他人に与える超能力者が偶発的に生まれるのは考えにくいですからね………つまり、イザナミ=ヴァルキュリアは、デザイナーズチルドレンで、日本の次世代魔法兵器開発が武霊なら、アメリカの次世代魔法兵器と考えるのが自然です。日本各地にはアメリカの基地がいくつもありますし、場合によっては他の国よりいくらか無茶や、力押しが効く国ですからね。人口・建物の多さや密集率など、様々なパターンデータも取り易い。万が一、実験が暴走したら、それこそ軍を動かせば直ぐに隠ぺい工作も可能………まあ、そんなところでしょうかね?」

 一気に喋り過ぎたのか、疲れた様に息を吐く黒樹君。

 ………なんか………本当に話が大き過ぎて………そもそも、

 「デザイナーズチルドレンって何?」

 思わずそう黒樹君に聞くと、

 「………簡単に言えば、遺伝子改造された子供達って事です……とは言っても、小麦やとうもろこしなどの食品に遺伝子改造は行われた事があっても、人体に遺伝子改造を施されたと言う話は聞きませんし、現在の科学技術では………多分、不可能でしょう……ですが、そこに魔法技術が加われば、可能なんじゃないんでしょうか?ホムンクルスとか、そう言う系統の話はよくある話ですからね」

 ………ホムンクルスって言うのがどういのかは知らないけど………

 「今の黒樹君の推論。どこまで合っているんですか?」

 そう春子さんに聞くと、

 「ほとんど」

 とあっさり言った。

 「私の方からちょっと追加するなら、イザナミって子は、『元々は二十年前に魔法使い達に潰された人工分岐人類研究の産物』らしくてね。作った連中はヴァルキュリアって呼んでるそうよ」

 ヴァルキュリア?………イザナミがそう名乗ってたけど………

 黒樹君を見ると、

 「………ヴァルキュリアは、北欧神話で出てくる優れた戦士の魂をヴァルハラと呼ばれる宮殿に探し、集める主神オーディンの使者の事ですね………超能力を与える超能力者……人を超能力兵士にする人体兵器には、ある意味相応しい名前だと言えますね……そう言えば、イザナミと言う名前も、日本神話に出てくる国生みと神生みを行った女神の名前ですよね」

 ………神様の名前が付けられた人体兵器?………

 「………それより気になるのは、二十年前に潰されたって言うのはどう言う事なんです?」

 あたしが神話とか科学とか入り乱れた話に付いていけなくなっている間に、春子さんの言った事が気になったのか、そんな事を黒樹君が口にした。

 「ん~よくは私達も分かってないんだけど………ほら、さっき言ったでしょ?三十年前にとある人物によって魔法が復活したって」

 「………ええ」

 「その魔法を復活させた人はね。『シェルトン=シルベリア』って言うイギリス人なんだけど、結構な人格者でね。復活させた魔法を平和利用以外に使う事を良しとしなかったの。だから、最終的に兵器転用目的だった人工分岐人類研究を、彼とその弟子達が潰したらしいの」

 そんな人が居るのに………今は世界中で魔法兵器開発が行われているの?………もしかして………

 「………だけど、その研究を潰した直後に、彼の七人の弟子達が彼を裏切って………彼を殺してしまったそうなのよ」

 やっぱり………

 「っで、七人の弟子達……『七人の裏切りの魔法使い』って私達は呼んでいるわ……は、それぞれ国に帰って、それぞれの魔法兵器開発を始めてしまい………今に至るわけ。まあ、だから、シェルトンさんが人工分岐人類研究を潰した時に、アメリカ人だった弟子がその研究を密かに隠し持ってて、完成させちゃったみたいなのよ」

 …………ん~………

 (どうした巴?)

 心の中で唸るあたしに、瞬輝丸が声を掛けてきた。

 ………なんかさ。あたし、この場に居るのが場違いな気がしてきたんだよね………

 (巴はそれでいいんだよ。あたいら前衛は考えるのが仕事じゃねぇからさ。第一、そう言うのは、頭のいい連中に任せりゃいいのさ)

 ………それじゃあたしが馬鹿みたいじゃない。

 (違うのか?)

 へし折るわよ。

 (良いじゃねぇか。巨乳で馬鹿は男受けがいいんだろ?)

 ………へし折ろう。

 鞘の両端を持ってへし折ろうとするけど、流石は退魔刀と言う事なのか、ビクともしないで、瞬輝丸は平然としている。

 「………何やってるんです?」

 黒樹君が困惑した雰囲気で声を掛けてきたので、反射的に瞬輝丸を心の中にしまって、なんでもないと手を振った……あ、自然に出来た……なるほど、念じればしまえるんだ……

 「………そう言えば、聞くのを忘れていたんですが」

 「何?」

 ふと思い出したのかの様な黒樹君の問い掛けに、首を傾げる春子さん。

 「………その魔法使いの組織名ってあるんですか?いつまでも、魔法使いの組織って言うのもなんですし………」

 「『()(びと)』。それが日本における魔法使い組織の名前よ」

 「堕ち人………話からして、七人の裏切りの魔法使いが日本にもいて………そいつが、堕ち人のトップなんですね」

 「そいつじゃないわよ。そいつら」

 「………そいつら?日本には七人の弟子が複数いるんですか?」

 「そうよ。シェルトンさんは、日本の大学で教鞭を振るいながら、魔法の研究をしていた人だったからね……だから、日本人が三人弟子の中にいるの」

 「………三人………数とか、ある程度分かっているって事は、誰が誰だか分かっているんですか?」

 「一人だけね」

 「一人だけ?」

 「ほら、さっき言ったでしょ?私達鯉の会に協力してくれる変わり者の魔法使いがいるって。その人よ」

 「………なるほど……じゃあ、それ以外の魔法使いは誰だか分かってないと?」

 「後は二つ名だけしか分からないわね」

 「二つ名?」

 「その三人は、それぞれどこかしらの重要器官に障害がある見たいでさ、それを揶揄して、『見ざる魔法使い』『聞かざる魔法使い』『言わざる魔法使い』ってそれぞれ呼ばれるそうよ」

 三猿?……え?見えざる魔法使い?

 その名前に何故か、高木先生の顔が浮かび、あたしは直ぐにそれを否定した………だって、いくらなんでも………ありえないでしょう。それは………

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