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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』28

  ★夜衣斗★

 瞬輝丸を持ったまま黙り込んでしまう飛矢折さん。

 驚いたり、赤くなったり、表情の変化がある所からすると、俺と美魅の様に、心の中で瞬輝丸と会話をしているのかもしれない。

 にしても………さっきっからこっちを妙にちらちらと見出しているんだよな………肩に乗っている瞬輝丸の分身体はニヤニヤしているし…………ふむ?………まあ、なんであれ、とりあえず、飛矢折さんの話の方は終わった様だし………だとすると、残りは………

 西島親子の方に顔を向けると、ひよりさんは相変わらずさゆりさんに寄り掛って、すやすや寝ている………呑気なもんだが………片やさゆりさんは、不安そうにしていた。

 ……まあ、自分には心当たりが無い事で、しかも、退魔士とか訳の分からない連中の事情でこの場に残されているわけなんだから………不安にならない方がおかしな話か………

 春子さんの方に視線を向けると………どうも俺の考えをまだ聞きたいらしく………試しているんだろうか?試しているんだろうな………

 仕方が無いので、ため息一つ吐き、

 「………西島さん達の用件ですが………多分ですが、ひよりさんが持っている超能力の事が関連しているんじゃないんですか?」

 「ひよりが超能力を?」

 驚くさゆりさんに俺は頷きつつ、

 「………さきほど、頂喜武蔵の心の中に美魅の能力で潜った時」

 「ちょっと待って、心の中に潜った?渡り猫の能力で?………渡り猫って、他人を一緒に心の中へ渡らせるほど力の強い魔物だったけ?」

 春子さんの疑問に、俺は少し判断に困る。

 さっき瞬輝丸に契約の仕組みの事を問われた時……多分、飛矢折さんの手前だった事もあり……思わず契約を実際に体験した事を言わなかった………契約の事を言うとなると、人間じゃないとは言え、美魅と………キスした事を言わなくちゃいけなくなるからだが………ん~嘘は吐いていないが………隠してしまった事実はどう判断されるか………そもそも、俺が……正確には俺の中にいたサヤが……魔法技術による契約書を持っていた事をどう考えるか………って言うか、何でサヤはあんなものを持っていたんだ?………まあ、普通に考えれば、俺の中にサヤが居る事に、『魔法使いが関わっている』って事なんだろうが………だとすると、あの老人が?

 「おーい。夜衣斗ちゃん?」

 春子さんの声に、思考から引き戻された俺は、

 「………俺の魔力の影響じゃないですか?」

 とりあえず嘘は言わない事にした。俺の魔力で能力が向上したのは本当だし………

 「………まあ、これだけの魔力量だものね。その中に住めば……パワーアップする……かな?……ん~………とりあえず続けて」

 一応俺の言葉に納得した春子さんに促されて……まだ続けなきゃいけない事に、微妙に納得がいかないが……話を続ける。

 「………潜った時にですね。頂喜武蔵達がひよりさんを捕まえる時の記憶を見たんですが、その時に、ひよりさんの姿が消える場面を見たんです。その出来事から考えて、ひよりさんの超能力は、『意図的に喋らない事を発動条件とする透過能力』なんでしょう……そして、その超能力を利用して鬼走人骸の動向を探っていて、武霊により捕まってしまった」

 俺の推理に周囲がざわつく。

 「探って捕まった?どう言う事?ひよりは家出中にあいつらに誘拐されたんじゃないの?」

 さゆりさんのもっともな問いに、俺は頷いて、

 「………俺も最初はそうだと思っていましたが………ひよりさんが自分の姿を消す事が出来る超能力者だと言う事と、捕まった場所が武霊の使える……多分、廃工場……だと言う事を知って、その考えはなくなりました。何故なら、星波町外では武霊は使えないので、ただの人間である鬼走人骸の連中には、ひよりさんを捕まえる事が難しく……星波町と言う場所が、さゆりさん達の家とは大分離れた場所にあるからです」

 「え?私、夜衣斗君に私達の家が何処にあるか言ったからしら?」

 「………車のナンバープレートが、ここから県を超えた所にある都市の名前でしたから、そう推察したんですが………違いましたか?」

 「うんん。違くないけど………よく憶えているわね」

 「………偶々気になって憶えていただけです………ひよりさんの家が大分離れた所にあると言うのに、ひよりさんは星波町に来ていた。プチ家出と言う割には遠出ですし、何より家出に適した場所じゃないでしょう?普通ならもっと大都市に行くか、友達の家とかに転がり込む………以上の事から考えて、ひよりさんは目的を持って鬼走人骸に近付いたと推論したわけです………っで、そこまで考えると、ただ近付くだけなら、逃げる様な事はしないでしょうし、頂喜武蔵も捕まえて………あんな事をひよりさんにしないでしょう。だとすると、ひよりさんは『鬼走人骸の動向を探り、最終的には鬼走人骸を潰そうとしていた』んじゃないでしょうか?」

 俺の推論に、さゆりさんは唖然とした顔になり、苦笑して、

 「何を言っているの夜衣斗君。ひよりは、普通の………」

 固まった。

 「………そう。ひよりさんは超能力者です………俺の言葉が信用できないならそれまでの話ですが………」

 俺の言葉を首を横に振って否定するさゆりさん。

 「夜衣斗君が嘘を吐くなんて思わないわ………でも、だとしたら、ひよりはどうしてそんな事を?……いえ、そもそも、超能力なんて………私には超能力なんて一切ないのに………」

 「………何かしら大きな力を手に入れた人間は、その力に引きづられるのが、世の常でしょう。そして、さゆりさんに超能力が無いのなら、ひよりさんは一世代目の超能力者で、目覚めた力を使って『弱者を強者から守ろうとした』んじゃないんですか?」

 言葉の後半を春子さんを見ながら言うと、春子さんは驚いた顔になり、

 「……流石は夜衣斗ちゃんね……普通、そこまで辿り着いちゃう?」

 春子さんの言葉に、意味が分からないって感じで、さゆりさんが俺に視線を投げ掛けてくる。

 「………確たる証拠があっての推論ではありませんが………『去年、日本各地で連続して起きた国産テロ』の事は知っていますよね?模倣犯の犯行や、重軽傷者全て含めて、『分かっている被害者の数だけでも一千万人近く出た』と言われている」

 いきなり話が変わった為か、少しキョトンとしたさゆりさん。

 「知ってるも何も………ひよりが通っている学校でも………え!?まさか!そんな!」

 喋りながらある可能性に気付いたさゆりさんに、俺は頷き、

 「………その可能性は高いと思います。ひよりさんはそのテロを行った集団『弱者(じゃくしゃ)同盟(どうめい)』に参加していたんでしょう」

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