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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』27

  ★飛矢折★

 瞬輝丸が壊される?

 黒樹君の予想に、あたしは眉をひそめつつ、瞬輝丸を見た。

 「まあ、大体そんな所さ」

 自分が壊される可能性をあっさり認め、笑みを浮かべる瞬輝丸。

 「そんな……だって、瞬輝丸。あなたはちゃんと」

 「人格もあるし、人を害する意志もない。むしろ、守りたいと思ってるさ。まあ、それが退魔道具の本能だから当たり前な事さ………だが、所詮、あたいは道具さ。所有者の意志には逆らえねぇし、飛矢折以外の人間に扱われる気もねぇ。だから、あたいは壊される事を望むのさ」

 「でも、あななは退魔十本刀って言われるほどの刀なんでしょ?それを壊すなんて……許されるの?」

 「ん~実例もあるからその点は問題ないんじゃねぇ?だいいち、退魔十本刀って言われていても、もう五振りも残ってねえしな………」

 「そうなんだ………」

 ………どうすればいいんだろう?瞬輝丸はうちの家宝で………子供の頃に、たまに触らせて貰っていた………とてもきれいな刃紋の刀だったのを覚えているし……同時に、これが人を斬る道具だとは、どうしても思えていなかった…………まあ、その印象はある意味正解だったわけなんだよね………退魔刀………退魔士………あたしが?

 いまいち自分が魔物………まあ、あたしが想像出来る化け物は、武霊ばかりだけど………を生業として戦う事が想像出来ないし、それをしたいとかも思わない………かと言って、今、自分の将来を決めるほど、自分の事を考えた事が無い………ただなんとなく、出来れば大学に進学しようかな?程度………でも、

 視線を黒樹君に向ける。

 黒樹君は、あたしが視線を向けた意味が分からないのか、動揺した雰囲気になった。

 あたしはそれに思わず苦笑して、瞬輝丸を見た。

 「お?どうするか決めたか?」

 瞬輝丸の問いに、あたしは頷いた。

 ここ最近、あたしは黒樹君に頼ってばかりいる。

 黒樹君はどう思っているかは分からないけど、あたしは頼ってばかりじゃなく………黒樹君の手助けをしたい。

 さっきは恥ずかしくて……惚れたとか……否定したけど………う~本当の所はよく分からない。この感情が、恋なのか、なんなのか、今まで一度だってこういう事を経験した事がないから………でも、その感情が何であろうと、あたしは黒樹君が困っていたら、黒樹君があたしにしてくれた様に………逃げずに守りたい。

 それだけの事を、黒樹君はあたしにしてくれた。

 だから、その為には、力が………必要なの!

 「瞬輝丸。あたしはあなたを受け継ぐわ」

 決意を込めてそう瞬輝丸に言うと、瞬輝丸は不敵な笑みを浮かべ、

 「よし!だったら、今日からお前があたいの新たな主だ!」

 そう言って小人の瞬輝丸の姿が消え、

 「どうぞ」

 可憐ちゃんがあたしに瞬輝丸を渡してくれた。

 ………昔持たせて貰った時より、重い気がする………何でだろう?………刀の意味を知ったから?

 そんな事を思いながら、あたしは竹刀袋から瞬輝丸を出し、竹刀袋だけを可憐ちゃんに返した。

 何の装飾もされていない漆黒の柄・鍔・鞘。

 「巴、柄を持って」

 瞬輝丸から聞こえる瞬輝丸の声に従い、瞬輝丸を縦にして、柄を握る。

 「少し気持ち悪いかもしれないけどよ、我慢してくれよ?」

 「うん?」

 「我、瞬輝丸は、飛矢折巴を新たな主とし、飛矢折巴が瞬輝丸を手放すその時まで、飛矢折巴の傍から片時も離れず、運命を共にする事をここに誓い、これを契約とする」

 瞬輝丸がそんな事を言い出すと共に、柄を握っている手から『何か』があたしの中に入ってくる感覚に襲われる。

 確かに気持ち悪かったけど、それも直ぐに終わって………気が付いたら、瞬輝丸があたしの手の中から消えていた。

 「え?……あれ?」

 周りを見回しても、どこにも瞬輝丸はなくて、代わりにあたしの肩に小人の瞬輝丸が座っている事に気付いた。

 「契約完了っと………巴。あたいを呼んでみな」

 ?

 「………瞬輝丸?」

 言われた通り、名前を呼んだ瞬間、頭上に何かが現れる気配と共に、物凄い早さでこっちに迫ってきたので、反射的に受け止めると………刀の瞬輝丸だった。

 ………えっと………どう言う事?

 思わず黒樹君を見ると、何か言いたそうな雰囲気になった後、小さくため息を吐き、

 「………多分ですが、瞬輝丸は契約により飛矢折さんの魂と繋がり、それと共に心の中に仕舞える様になったんじゃないんですか?」

 契約?魂?心の中?

 「その通りだよ。と言うか、よく分かったな。魔法による契約の仕組みを知ってんのか?」

 不思議そうな瞬輝丸の問いに、黒樹君は苦笑し、

 「………契約とかそういう話は、アニメや漫画とかでよくある話ですから………そこで得た知識と、今目の前で起きた現象を組み合わせて、何となくそう予想しただけですよ」

 「アニメや漫画ね………まあ、そう言う事にしておくか」

 ………何だか引っ掛かる言い方ね。

 思わず瞬輝丸の言葉にそう思った時、

 (あの男。色々と隠している事がある感じだな)

 と瞬輝丸の声がどこからともなく聞こえた。まるで心の中から直接聞えて来るような………

 (まるでじゃなくて、本当に心の中から声を掛けているのさ。だから、返事は心の中でな?)

 うん、分かった……けど、黒樹君が何を隠しているって言うの?

 (さあ?それはわかんねぇけど………少なくとも、あたい達が不利になる様な事じゃないだろうさ)

 それはそうだろうけど………本当に隠している事があるのかな?

 (まあ、そんな事よりよ)

 そんな事って………

 (いや、そんな事さ………実を言うとよ、あたい単体じゃあたいはそこら一般の退魔刀と変わらねぇんだよ)

 そこら一般の退魔刀がどんなのかは知らないけど………どう言う事?

 (簡単に言えば、あたいに込められている魔法を使えねって事)

 ?……どう言う事?

 (あたいの様な『魔力消費型の退魔刀』は、普通は所有者から魔力を貰って込められた魔法を発現させる。だが、普通の人間は魔法として使えるほどの魔力を持ってねぇわけだ)

 えっと………つまり、あたしにはその魔力がないわけ?

 (ああ)

 なのに、曾お祖父ちゃんはあなたを継承させた………なんで?

 (そりゃ、小次郎も魔力がなかったからな)

 え?曾お祖父ちゃんも魔力を持ってないの?じゃあ、どうやってあなたを使っていたわけ?

 (間接契約で梅から貰ってたんだよ)

 間接契約?しかも曾お祖母ちゃんから?

 (梅は一般人だったが、無意識魔力吸収蓄積病って珍しい病気に掛っててな、その病気から得られる魔力を、あたいのもう一つの契約機能である間接契約で貰ってたわけさ)

 ふ~ん?………つまり、さっき言ってたパートナーって言うのは、魔力を貰える人って事なわけね。

 (そう言う事。っで、この場でパートナーとして最適なのが、黒樹夜衣斗ってわけさ)

 黒樹君が?退魔士の人達じゃ駄目なの?

 (確かに退魔士も魔力を持っちゃいるが、それは自身の退魔士能力にほとんど使われちまっている。あたい達まで回せるほど余力を持った奴は一人もいねぇわけさ。その点、黒樹夜衣斗の魔力はとんでもねぇぜ。なんたって、あたいが今まで出会ったどの魔法使いより飛び抜けて高い魔力を感じるからな)

 じゃあ、黒樹君に間接契約して貰えばいいわけね………っで、具体的に何をすればいいわけ?さっきみたいに瞬輝丸の柄を黒樹君に貰うとか?

 (いいや。違う事をしなくちゃいけねぇ)

 何をすればいいの?

 (簡単な事さ。黒樹夜衣斗と、『接吻』すればいい)

 接吻?…………キッ、キスぅ!?

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