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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』23

  ★夜衣斗★

 行かなくてよかったの!……ね………

 ……やっぱり、あのいじめの件に夜衣花が関わり、事態をよりこじらせ、今起きていると言う黒樹家の『お家騒動の切っ掛け』になったって事なんだろうが………夜衣花の様子からして………一体、何をやらかしたんだ?

 俺が困惑していると、それを見た春子さんはちょっと困った顔をして、

 「夜衣花ちゃんが現当主の企みを知って、夜衣斗ちゃんの無事を確認した時………タイミング悪く、あなたの自殺未遂を目撃したらしいの」

 な!?……あれを見られていた?……嘘だろ!?あの時、周りに誰もいなかったのは間違いないし、外から見えない場所でしていたはずだ………いや、と言う事は、何らかの退魔士道具を使ったって事か?

 「夜衣花ちゃんには……黒樹家としてはかなり珍しいんだけど……もう一つの退魔士能力を持っているの」

 もう一つ?しかも珍しい?

 「ほら、さっき、夜さんが日本五大退魔士家系の一つ・操形家の出身だって言ったでしょ?夜衣花ちゃんはその操形家の、人形を自らの身体の様に操る退魔士能力『人形の王』も受け継いでて、時々、その力を使って夜衣斗ちゃんの様子を見ていたそうよ」

 ……なるほど、黒き大樹は魔力を喰らう樹なら、本来なら他の魔法をも喰らってしまうよな………なのに、喰らってないって事は………やっぱり、それも主人公だからか?………ん~なんにせよ………人形を自らの身体の様にね………そう言えば、大分前に夜衣花から送られた某ロボットアニメのプラモデルから………たまに視線の様な物を感じていた様な………あれか?………何と言うか………ん~………と言う事は………他にも色々とヤバい物とか……行為とか……見られていたんじゃ………何だか色んな意味で冷や汗が出てきて、夜衣花の方を見れないな………

 「っで、その退魔士能力で夜衣斗ちゃんの自殺未遂を目撃した夜衣花ちゃんは……キレちゃってね……その六大分家次期当主達を………半殺しにして、偶々親族会議で本家に集まっていた分家当主達と現当主まで、半殺しにしてしまったわけ………まあ、あの時の夜衣花ちゃんは、黒き大樹を暴走させていたみたいだから、初代当主に止められなければ………あいつらを殺していたかもね」

 一瞬、夜衣花を気遣う様に話していた春子さんが、負の感情をこもった言葉を口にした。

 ………そう言えば、春子さんも黒樹家にはあまり良い感情を持ってなさそうだったな………夜衣花を気遣っても、他の親類を気遣うつもりも……いや、むしろ、夜衣花に殺されもよかった。とでも、心の奥底で思っていそうだな………って言うか、今、さらっと初代当主が生きているみたいな事を言わなかったか?………話からしてかなりの親族が居るみたいだし、初代当主が普通に生きていられるほど浅い歴史だとは思えないんだが………どう言う事だろう?

 「とにかくね」

 自分が負の感情を吐露した事に気付いたのか、はっとした春子さんは、少し動揺しつつ、

 「その時の出来事で、夜衣花ちゃんは黒樹家の中で孤立化してしまって、次期当主に相応しくないって分家達に思われてしまったわけ……実際にそれを当主に直談判する人達もいたらしいけど……でも、その一件で、夜衣花ちゃんの圧倒的な潜在能力を体感した現当主は、分家達の意見を押し切って夜衣花ちゃんを次期当主のままにし続け………それを特に不満に思っていた六大分家がつい最近、お家騒動を起こしちゃったわけ」

 ………なるほどね………道理で春子さんがお家騒動が起きた理由を言うのを躊躇ったわけだ………何と言うか、俺が今まで抱いていた夜衣花に対するイメージとは大分違う出来事だな………まあ、どう考えても、例外的な出来事なんだろうが………

 「………ごめんなさい夜衣斗お兄ちゃん」

 再び謝る夜衣花。

 ……………

 俺はため息を吐き、

 「………だから、謝らなくていいって………正直、驚きはしたし、あまりほめられた行為じゃないのは間違いないだろうが」

 俺の言葉に、身体をびっくっとさせる夜衣花。

 「………それでも、俺は夜衣花が俺の為に怒ってくれた事を嬉しく思うし、よくはない事だと思うが、分家達とか現当主が半殺しになったって聞いた時は、正直少しすっきりして、ざまあみろとも思った」

 「お兄ちゃん………」

 どこか困惑した様な、それでも困った人って感じで笑う夜衣花。

 「………それに、俺はこうして無事にこの町で過ごしているし……まあ、死に掛けたり、とんでもない目に遭ったりはするが、どちらかと言うと、前より充実した学生生活を送っているし………引っ越す前は考えられない様な……友人関係も出来つつある」

 そう言いながら飛矢折さんを見ると、飛矢折さんは照れたように顔を赤らめて……

 「………近い」

 それで飛矢折さんに俺が支えられている事にようやく気が付いたのか、思いっきり飛矢折さんを睨み、殺気のこもった声を出す。

 それに飛矢折さんは瞬時に俺から離れ、その速さについていけなかった俺は、少しよろけてしまうが………何と言うか………なんだろうね………

 (あの子、怖いだわよ)

 と美魅が震えた声で言うのが聞こえ、なんとも言えず苦笑。

 ………要するに、猫を被ってたわけだ………まあ、俺も多少は無理をして夜衣花が望む兄を演じていた所も……無くはないだろうから、おあいこか?……ん~だが、隠している度合いがあきらかに夜衣花の方が高いか………………それにしても、主人公ね……………ふと思ったが………もし、仮に、最初のはぐれで俺が死んでいた場合………もしかしたら、夜衣花がこの町で起きている武装守護霊に関わっていたんじゃないだろうか?………っで、自称最後の敵は、俺の事を紛い物の主人公と言った。つまり、『誰かが俺を主人公にしなければ、夜衣花が武装守護霊の主人公になっていた』って事か?…………いや、まだ、夜衣花が武装守護霊の主人公になる可能性がある。何故なら、まだ、俺は自称最後の敵から教えられた七つの宿命の悪意と……全ての死の運命と相対していない。だとすると、残り四つの宿命の悪意に俺が殺されれば…………俺のいじめの時にした夜衣花の行動を考えれば、きっと夜衣花はその原因を調べに、復讐する為に、星波町にやってくる………夜衣花が普段どんな事に直面しているかは知らないが、俺と同じ意味の主人公であるなら、俺と同じ様に宿命の悪意と相対しているって事なんだろう。しかも、つい最近相対し始めた俺と違い、きっと大分前から………そんな彼女に……妹にこれ以上負担を増やさせて良いものだろうか?………まあ、前提的に、そうなるのは俺が死んだ時なのだから、それも含めて夜衣花をこの町に来させるわけにはいかないな………

 再びため息吐き、

 「………夜衣花は俺に対して、大きな負い目を感じている様だが……俺からしてみれば、それら全ては全部俺のせいだ」

 「違う!違う!全部、全部、私のせい!」

 そう俺が言うと、首を横に振り、俺の言葉を否定する夜衣花。

 まあ、そう言うわな………何と言うか………本当に兄妹だって実感するな………頑固と言うか、根本的に似たネガティブを感じると言うか………

 俺は苦笑と共にため息を吐き、

 「………夜衣花。夜衣花が自分のせいだと思う事を止めない様に、俺も自分のせいだと思う事を止めるつもりはない。いや、理由がないか?」

 「そんな!だって、夜衣斗お兄ちゃんは、私のせいで」

 まだ言う夜衣花に、俺は首を横に振り、

 「………夜衣花。これは、今、この場で直ぐに解決出来る……納得出来る事じゃない。それは夜衣花だって分かってるだろ?」

 「………うん」

 頷く夜衣花に、俺は微笑み……掛けようとして、前髪で顔の半分が隠れている状態で意味があるんだろうか?と疑問が浮かんだが……微笑み掛け、

 「………だから、それぞれが抱えている『今』の問題が終わったら………家族で話し合おう」

 「うん……うん」

 俺の提案に何度も頷く夜衣花。

 なんか、ちょっと泣きそうな顔だな………まあ、何も知らなかった俺と違い、夜衣花はずっと抱え、話したくても話せなかった事を話し、それがほんの少しでも事態が進んだ事への……嬉し泣きだろうか?……何となくそんな感じがした。

 「あのね夜衣斗お兄ちゃん。私ね。本当の兄妹だって打ち明けたら、お兄ちゃんにして欲しいと思ってた事があるの」

 して欲しい事?………兄妹だって明かしたら、ね………漫画とかテレビとかで得られる知識では、世間一般の普通の兄妹はそんなにコミュニケーションを取っている様に思えないが………少なくとも今まで会っていた時は、世間一般の兄妹並みにはコミュニケーションを取っていたつもりだったんだが………それ以外に何をせよと言うんだ?

 いまいち夜衣花がどうして欲しいか分からないが、俺は頷き、

 「………分かった」

 了承すると、夜衣花はぱあっと顔を明るくした。

 「………っで、何をして欲しいんだ?」

 「え?えっとね………」

 そう問うと、照れたように顔を赤らめる夜衣花。

 「色々して欲しいけど………一番して欲しい事は………一緒にお風呂に入って欲しい事かな?」

 ………?………………はぁ!?

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