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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』21

  ★飛矢折★

 はぐれが魔法使い達の手によって起こされた!?もしそれが本当なら………最悪なんじゃ………

 あまりの予想に周囲のざわめきが強くなり、視線が黒樹君に集まる。

 その視線に一瞬気圧された感じを見える黒樹君だけど、一息吐いて、

 「………そもそも、あまりにもタイミングが良過ぎるんです。俺が町に来て直ぐにはぐれが起き………二度目のはぐれも五月雨都雅が俺達の前に現れてから発生した。仮にそのはぐれの発生タイミングが偶然だったとしても、俺が遭遇した最初のはぐれだけが例外、と言うのが引っ掛かってました………あれ以降、一週間以内に発生したはぐれはありませんでしたよね?」

 確かに、そう言われて見れば………五月に起きた連日はぐれ発生以降、立て続けにはぐれが発生したって聞いた事がないような………

 「………だとすると、武霊発生から十年の歴史の中で、ただ一つの例外のはぐれ発生になる……これはあまりにも不自然で………だとすると、人の手によって起こされたと考えるのが自然です。ですが、そうなると、何の目的で、誰が………そこまで考えて、俺は思考を止めていました………まあ、あまり深く関わりたくありませんでしたから、詳しく調べてはいませんが……あの日、何か特別な事があったと言うわけでもなかった様ですし、誰がと言っても、それらしき話は噂程度にしかない………ですが、武霊と忘却現象を召喚したと言う魔法使いの組織の話と、俺が黒樹家六大分家に狙われていると言う話が出てくれば……自ずと導き出される答えは……一つしかありません。『黒樹家六大分家が、魔法使いの組織と取引をして、俺を殺す様に頼んだ』っと」

 黒樹君の推論に、一瞬、場が静まり、再びざわめき出す。

 「そんな事あり得るか?」

 「第一、捕まえるならまだしも、殺してしまっては意味が無いだろう?」

 「いや、『あの女』ならやりかねない」

 「確かに、前々から連中と繋がっていると言う噂はあったしな……」

 そんな会話があちらこちらから聞こえてくる。

 黒樹君も同じ会話を聞いたのか、

 「………まあ、お家騒動のカードに俺を使うつもりなら、殺そうとするのは不自然だとは思いましたが……どうやら、そう言う取引をしそうな人がいるみたいですね………本来なら捕まえると言う話だったのが、その誰かによって殺す内容に変えられたって事でしょうかね?……まあ、俺が殺されたとしても、それはそれで両親や夜衣花を誘き出せるでしょうから、一様の目的は達せられるでしょうね……個人的には酷く効率が悪く、逆効果な気がしますが……」

 そう黒樹君が妙に他人事って感じで納得していると、春子さんは少し慌てて、

 「ちょ、ちょっと待って!いくらなんでもそれはありえないと思うわ。だって、さっきも言ったけど、今の魔法使いと退魔士は、敵対関係じゃないにしても、お互いを警戒し合っている間柄なのよ!?」

 春子さんのその疑問に黒樹君はため息を吐き、

 「………鯉の会に魔法使いとの繋がりがあるなら、他の退魔士達にも繋がりがあっても不思議ではないでしょ?……第一、正規の退魔士達には『政府と言う仲介』がある。同じ政府に魔法使いが仕えているなら、連絡を取る気になれば、連絡を取るのも簡単な話じゃないですか?」

 「それはそうかもしれないけど………」

 「………以上が、俺が魔法使いの組織が、武霊並びに忘却現象の解析研究がある程度終わっていると言う根拠です………まあ、ですが………」

 黒樹君は携帯を取り出して、画面を少し見て、仕舞った。

 時間でも見たのかな?………そう言えば……今、何時だろう?………後で家に………って、ここだと普通の携帯電話は使えなさそうだし………あの携帯貸してくれるかな?

 などと思いながら、夜衣花ちゃんを映し出している携帯電話を見ていると、

 「………まだ時間も十分ある事ですし……一つ、聞いてもいいですか?」

 時間がある?………いまいち意味が分からなかったので、あたしも自分の携帯を取り出して時間を見て見ると、後もう少しで九時になる所だった。まあ、時間を見ても意味が分からなかったけど………この時間だと、父さん……心配し過ぎて母さんに締められてるかも………

 「何?夜衣斗ちゃん?」

 問われた春子さんは、首を傾げながら黒樹君に問い返した。

 ………今更だけど、この人、結構いい年よね………ん~………

 「………聞きたい事と言うより、どちらかと言うと、確認したい事かもしれませんが………俺を殺したいと思っている人は、その六大分家の女性ですか?……まあ、その人以外にもいるんじゃないんですか?………例えば、黒樹家現当主とか?」

 黒樹君の問いに、春子さんの顔が引きつった。

 え?……黒樹家当主とは、黒樹君のご両親との取引で、黒樹君を殺さないって事になってるんじゃなかったけ?

 「夜衣斗ちゃん………もしかして………」

 困った視線を黒樹君に向け、心配そうな視線を夜衣花ちゃんに向ける春子さん。

 視線を向けられた夜衣花ちゃんは………固まっている。

 「………まあ、俺が黒樹家にとって禁忌の存在であるなら………そう教えられても、理解は出来ても、いまいち実感が湧きませんが………もし、仮に俺が黒樹家現当主だったら、娘夫婦との取引程度で俺を殺す事をあきらめはしません。もちろん、取引は取引ですから、直接殺す様な行動を取れば、娘夫婦はもちろん、次期当主として育てている夜衣花の激しい反発があるのは間違いない………なら、やるんだったら、ばれない形で、かつ、意図的に殺した様に見せない方がいい………っで、そこまで考えると、ある事が、今まで気にも……と言うより、気にする余裕も、気にしたくもなかった出来事の不自然な部分が気になって……………………」

 何か苦しいのか、黒樹君は辛そうに自分の胸を掴み、大きく深呼吸して、

 「………中学の頃に俺が受けたいじめは………黒樹家現当主が陰で糸を引いてたんじゃないですか?」

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