第一章『武霊のある町』15
★美羽★
キゾウの鼻から炎のブレスが吹き出し、コウリュウに炎が迫る。
迫る炎を避け様とするコウリュウを、私は反射的に翼で防御するように心の中で命じた。
コウリュウはそれに忠実に答えて炎を翼で防御。コウリュウは、苦悶の叫びを上げ、お返しに炎のブレスを吐く。けど、避けられてしまう。
「ごめんねコウリュウ」
私はコウリュウに謝って、後ろの町を確認した。
炎は飛び移ってはいない。
ほっと一息を吐いたけど、その瞬間、私の意識が一瞬クラっとした。
キゾウとのブレスの吹き合いを始めて十数分。
コウリュウに町にブレスがいかない様にブレスを撃たせているこっちに対して、キゾウはこっちのバックに町があろうと躊躇なく撃ってくる。だから、攻撃・回避の両方に気を使わなくてはいけなくて、私は予想以上に苦戦していた。
早くしないと夜衣斗さんが危ない。って意識があるので、戦闘にうまく集中出来ていないのも、苦戦の原因の一つなんだろうけど………このままじゃ、夜衣斗さんだけじゃなく、町の方にまで被害が出てしまう。
そう思って……私は少し無理をする事にした。
「コウリュウ。防御鱗十枚」
コウリュウの背中から、鱗が十枚飛び出し、組み合わさって大きな盾になる。
その大きな盾で、また撃ってきた炎のブレスを防ぐ。
炎が盾に防がれて、広がり、一瞬、キゾウからコウリュウの姿が見えなくなる。
コウリュウはその瞬間を逃さないで翼をたたみ、一気に下降して、くるっと反転。落下しながら口を上空のキゾウに向けた。
「レーザーブレス!」
私の命令に、コウリュウの胸のブレス袋が輝き始める。
「貫いて!」
コウリュウの口が大きく開き、巨大な光線が吐き出され、一瞬でキゾウを貫く。
腹部から背中を貫かれて、霧散してキゾウは消えた。
武霊使いは、自分の武霊からどんなに離れていても、自分の武霊に心の中で命令できる。だから、礼治は安全な所で私達が苦戦するようにキゾウに命令をだしていたはず。でも、武霊自身も自らの意志で動いているから、どうしも命令から実行までタイムラグが生じてしまう。だから、キゾウに気付かれないように動けば、今みたいに隙を付いて倒す事も出来る。
もっとも、今の攻撃で、ただでさえ消費させられていた意志力が消費されて……気を抜くと意識を失いそうな状態になってしまった。
でも、休んでいるわけにはいかない。早く夜衣斗さんを助けに行かないと………