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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』13

  ★夜衣斗★

 ………とりあえず、一番ショックを受ける可能性がある疑問は置いておいて………頭の中で整理しながら疑問を一つ一つ聞いていくか………

 え~まず、退魔士は存在し、今なお社会の裏で活動を続けている。

 そして、その退魔士達の中で、若手の身が集まったのが、鯉の会。っで

 「………春子さんは……鯉の会ではどう言う立場なんですか?」

 問いの矛先が別方向に向いた為か、春子さんはあからさまにほっとした様子を見せ、

 「私は鯉の会星波町支部の代表をしているの。……まあ、そうは言っても、実質的に代表をしているのは、沙羅ちゃんなんだけどね」

 ……微妙に情けない事を言う……まあ、そうだろうとは思ったが………まあ要するに

 「………年齢だけで形だけのリーダーになっていると?」

 「酷い言われ様だけど………にゃはは、その通り」

 ………この人は………まあ、何であれ、リーダーである事には間違いないわけだ。

 俺は周りを見回し、

 「………ここにいる人達は、全員退魔士と考えていいわけですね」

 「そうよ………でも」

 でも?

 「ん~厳密に言うとね………退魔士として認められている人間はいないわ」

 はぁ?いない?

 「………どう言う意味です?」

 「退魔士はね。さっき沙羅ちゃんが言ったと思うけど、そのほとんどが分岐人類。つまり、それなりの数がそれぞれの家にいるわけ。っで、その全員が退魔士を名乗れば、当然仕事の取り合いになる。だから、退魔の仕事を依頼するそれぞれの国や団体が、正式な退魔士の数をそれぞれの家で限定させているの」

 ………随分世知辛い話だな………にしても

 「………退魔士は国からも退魔の依頼を受けているんですか………」

 ………まあ、退魔士も人である以上、人間社会で食べて行く為にはお金が必要になるのは仕方が無いが………国ね………

 「で、ここにいる子達は、私も含めて、さまざまな理由であぶれた退魔士の家系の者達なわけ」

 あぶれた。その春子さんの言葉に、周囲に何人かが苦々しい顔になった。

 「でも、あくまでそれは国が定めた退魔士の基準だし、あぶれ退魔士なんてかっこ悪いでしょ?だから、私達は若手退魔士の集まりって名乗っているわけ。あ!でも、この場にいないだけで、鯉の会には正式に退魔士として認められている子達もいるわよ」

 「………つまり、ただたんにあぶれた人間を集めた組織ではないと?」

 「鋭い夜衣斗ちゃん。その通りよ!実はね。私達は若手って名乗っている通り、退魔士の家系の中で若い人間だけで集まっているの。まあ、私より上の年代であぶれた人達は、大体一般社会に身も心も染まっちゃってるから、こういうのに参加しない……出来ない?って理由もあるけどね。っで、何で集まっているかって言うと」

 「春子お姉ちゃん!喋り過ぎ!」

 嬉しそうに話す春子さんを、怒り気味に制止する夜衣花。

 ………喋り過ぎね………

 「いいじゃない。ここまでばれちゃったんだから」

 「よくない!私達の事を話すのは、私も父さん母さんも認めたけと、今起こっている事まで話す事は、私達の事情に巻き込む事は認めないの!」

 ……父さん母さんね……

 「ん~夜衣斗ちゃんなら結構戦力になると思うんだけどな~」

 「そっちで何が起きているか、夜衣斗お兄ちゃんが何をしたのかは分からないけど!夜衣斗お兄ちゃんは、『普通の人』なんだよ!だから、余計な事は教えないで!」

 「分かったわよ………でも、」

 二人の言い合いを聞きながら、俺は思考をフル回転させる。

 普通の人間ね………ふむ?確かに俺は星波町の外では何の取り柄もない人間だが……そうなると、かなりの疑問が浮かぶが………ふむ……まあ、とりあえずそれは置いておこう……………ん~鯉の会は若い退魔士で構成されている………そして、春子さんより上の年代は参加しない………だとすると、

 「………退魔士達の上層部が、何か不審な事でもしているわけだ」

 「え?」

 「ほら、ここまで言っちゃうと自分で辿り着くんだから」

 俺の予想に驚く夜衣花に、何故か自慢げの春子さん。

 ………この反応からすると、本当に不審な事があるわけか………まあ、上に不審を抱き、下がまとまるなんて話はよくある話だし………で、そうなると

 「………そして、この星波町に」

 と、その前に確認しないと、

 「………退魔士の家系の人間が一つの町にこんなにいるって事は……普通はある事なんですか?」

 俺が唐突に質問を変えた事にちょっと驚く春子さん。

 「うんん。ないわよ」

 ふむ……だとすると

 「………個人的な予想ですが、退魔士が分岐人類であり、一般人にその存在を秘密にしているなら………各家系ごとにまとまって暮らしている。違いますか」

 「うん。その通り。まあ、でも、それは漫画とかでよくある話だよね」

 ………まあ、確かにその通りだろうが………当事者からその言葉は………なんかな………まあ、とにかく、

 「………だとすると、この星波町にその上層部の不審な何かがあり、鯉の会はそれを調べるか、何とかする為に来ている………で、その何とかしようとしているのが………」

 ん?………退魔士達が武霊の黒幕出ないと信用した今、改めて考えて見ると、退魔士達も武霊の情報を外に持ち出せていないと言う事になる………だとすると、外の退魔士達は武霊の事を知らないと言う事になり………なら、武霊以外の何かが、しかも………確か、春子さんがこの町にやってきたのは……九年前って言ってたけ……それくらい古いとなると、忘却現象によって起こる記憶の異常か………いや、異常と言っても、世間で騒がれるほどになっていない事から考えると、異常は僅かか………だとすると、同じ頃に起きた何か………いや、退魔士達の上層部が不審な動きをしたとしても、それが直ぐに表面化するのはおかしな話だ……だとすると、ある程度のずれが………ん!?

 そこまで考えて、俺はある事を思い出した。

 それは、

 「………二十年前の空港建設に関する政治家の汚職事件。そして、十年前の星波学園建設。そのどちらか、もしくは両方に、全部ではないでしょうが、何らかの関わりがある。違いますか?」

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