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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』12

  ★夜衣斗★

 魔法具……でいいんだよな?……を装着した携帯電話から出てきたのは、子供の頃から大きな休みになると家に預けられる両親の知人の娘………夜衣花(よいか)だった。

 そして、この状況で彼女が出てきたという事は………

 「………夜衣花……君も退魔士だったのか?」

 その俺の問いに、夜衣花は悲しくも辛くもありそうな顔になって、

 「うん………出来れば……出来れば、夜衣斗お兄ちゃんには退魔士の存在を一生知って欲しくなかったよ………」

 そう言った。

 夜衣花は、何故か、俺の名前から名前を付けられたらしく………そのせいか、俺みたいな奴でも兄として慕ってくれている。

 俺は自分が一人っ子と言う事もあり……最初は照れ臭かったが……俺も夜衣花の事を段々妹の様に感じてきて………今では、何でも話していた。もちろん、何でもって言っても、俺がいじめられていた事とか、暗くなる様な話はしていない………だが、それでも、お互いしか知らない事はいくらでもある。だからこそ、ある意味、両親より俺の事を知っていると言えるし、この状況なら逆に両親でなくてよかったと言えた。

 まあ、正直に言えば……夜衣花の事を疑うなんて事はしたくないが………

 「………夜衣花」

 「なぁに?夜衣斗お兄ちゃん」

 小首を傾げた夜衣花を見て………ふと思い出した。

 忘却現象の事だ。

 ………もし、仮に春子さん達が全ての黒幕であったのなら、武霊の話が向こうにストレートに伝わる……はず?まあ、とにかく確認の為に、具現化中のオウキを指差し、

 「………武装守護霊の事を知っているか?」

 俺の問いに、夜衣花は小首を傾げた。

 ………これが演技などである、と言う可能性もなくはないだろうが………昔から知っている彼女がそんな事を俺に対してするのか………いや、そもそも、黒幕側の人間が………昔から俺の側にいるのだろうか………まあ、何にせよ………確かめよう。彼女が本物の夜衣花であるかどうかを。

 「………王継戦機の舞台は?」

 「え?何で今その事を?」

 唐突な俺の質問に、少し困惑する夜衣花。

 ………まあ、確かに、普通に考えれば今聞く問いじゃないが………

 「………答えて」

 「……変な夜衣斗お兄ちゃん………えっと、確か、一度リセットされた地球」

 「………オウキ・キバの正体は?」

 「リセットされる前の地球で要人警護に使われていた守護(しゅご)騎機(きき)シリーズの生き残り」

 「………それぞれのタイプは?」

 「オウキは汎用防衛型。キバは戦闘運搬特化型」

 ………ここまでは、俺が家から持て来たノートにも書かれている事。

 だから、調べようと思えば調べられる。

 周囲を見ると、俺の質問の意図が分からないのか、全員が困惑の表情を俺に向けていたが………気にせず、

 「………王継戦機宇宙期にてのオウキ・キバのそれぞれの王は?」

 「オウキはリティシア=マーク=野村。キバはリティシアの双子の妹レティシア」

 「………敵は?」

 「月に眠っていた守護騎機シリーズの最上位監理コンピューター」

 「………名前は?」

 「え?聞いてないけど?」

 だよな………まだ頭の中でも思い付いていない事だし…………今の質問の答え全ては、まだノートにも書いていない、星波町に来る前に、電話で夜衣花と考えた事…………

 大きくため息を吐く。

 「一体何なの?こんな時に」

 若干不満そうに口を尖らせる夜衣花に、俺は苦笑した。

 まあ、もっともな話だが……………これで、少なくとも目の前の……どこにいるかは分からないが……夜衣花は信頼出来る。

 「………夜衣花。春子さんや、琴野沙羅さん達は……夜衣花の仲間なのか?」

 「うん」

 その一言と頷きに、俺は息を吐いた。

 思いのほか夜衣花の言葉が信頼できたのか、一気に緊張が解け、身体から力が抜けてしまう。

 ………そのせいで、ふら付き倒れかけた………所を、オウキが支えるより早く、飛矢折さんが俺を支えてくれた。

 俺が礼を言うより早く、夜衣花が

 「誰?」

 ぞわっとするぐらい敵意むき出しの声と、半眼の視線を飛矢折さんに向けた。


  ★飛矢折★

 前に黒樹君の部屋で見付けた手紙の主であろう中学生ぐらいの女の子・夜衣花ちゃんが、あたしを敵意と共に半眼で睨み付ける。

 その態度が初めて見る態度だったのか、黒樹君は思いっきり引いていた。

 黒樹君のその反応に気付いた夜衣花ちゃんは、笑みになり、

 「この人だーれ?夜衣斗お兄ちゃん?」

 と額に青筋でも浮かんでそうな笑顔で黒樹君に改めて問い。

 その迫力に、思わずあたしと黒樹君は直ぐに離れてしまう。

 ………今まで可愛らしい雰囲気だった子だったんだけど………血は繋がってなくてもお兄ちゃん子って事?……ってそれって、黒樹君に恋愛感情がなくても、あっちには恋愛感情があるって事なんじゃ……………えっと、とにかく、

 「あたしは黒樹君のクラスメイトで、飛矢折巴って言うの。よろしくね」

 精一杯の笑顔で挨拶すると、夜衣花ちゃんは再び半眼になって、

 「クラスメイト?………え?飛矢折?」

 ?

 何故かあたしの名字に引っ掛かった夜衣花ちゃんは、春子さんに視線を向け………あの魔法の道具って、もしかして立体映像と通話者の感覚を繋げている……とか?………この様子からだとそうだよね………どこにいるかは分からないけど、凄い道具ね………

 「………春子お姉ちゃん。飛矢折ってあの飛矢折?射眼家の」

 ………射眼家?………どこかで聞いた事がある様な………どこでだっけ?

 「そう。その飛矢折の子よ」

 ………?………どう言う意味だろう?………そう言えば、お祖父ちゃんの話が本当だとすると、お祖父ちゃんの代まで………家は退魔士だったって事!?…………あれ?でも、退魔士の人達って、何らかの退魔士能力を持ってるって話じゃなかったけ………家に……あたしにそんな能力は無い様な………?

 「………まあ、誰であれ、今は、私と夜衣斗お兄ちゃんが大事な話をしているんです。部外者は視界に入らないでくれます?」

 ………視界にって………何だか強烈な子なんだけど………

 思わず黒樹君を見ると、夜衣花ちゃんの豹変に戸惑っている様だったけど、あたしの視線に気付いて、苦笑とため息一つ。

 「………分かりました。夜衣花の仲間だと言うなら………統合生徒会長。あなた達の事を信頼しましょう」

 「黒樹様………」

 黒樹君からようやく出た言葉に、統合生徒会長は歓喜の笑みを浮かべるけど……その統合生徒会長に、夜衣花ちゃんは半眼を向け始めた。

 夜衣花ちゃんの視線に気付いた統合生徒会長は、笑顔が引きつり、すすっと夜衣花ちゃんの視界から消える。

 どう見ても中学生ぐらいの子にこの反応って………もしかして………この場にいる誰よりも立場が上だったり?

 そんな事を思っていると、春子さんが苦笑して、

 「あのね。夜衣花ちゃん。誰も、あなたのお兄さんを取ろうなんて思うそんな度胸のある人は………少なくとも退魔士の中にはいないわよ?」

 そう言うと、夜衣花ちゃんはなんだかむすーっとした顔になって、あたしを睨んだ。

 ………ある意味可愛い子だけど………

 思わず苦笑を浮かべ、黒樹君を見ると………黒樹君は何かを考えている様だった。

 そして、

 「………あなたのお兄さん?」

 そう黒樹君がつぶやくと、何故か春子さんと夜衣花ちゃんが同時にぎくりとした。

 ?

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