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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』11

  ★夜衣斗★

 統合生徒会長の呼び掛けで現れた人物は………黒樹春子。

 俺の母親の妹………叔母さん………?………はぁあ!?

 妄想は出来ても、全く想像出来なかった事態に、頭が上手く思考出来ない。

 混乱……とまではいかなかったが………停止に違い思考に、春子さんが近くに来るまで、俺は迂闊にも何もしなかった。

 大慌てで制止の手を出し、春子さんはびっくりした様子で立ち止まる。

 「なに?どうしたの?」

 ………どうしたもこうしたも………

 「………あなたは本当に俺の知っている春子さんですか?」

 その俺の問いに、春子さんは苦笑した。

 「うん。この状況でそれを疑うのは正しい事だよ。でも、こんな美人なお姉さんを偽者って疑うのは酷いなぁ~」

 と言って………人差し指を頬に当てて、ん~と考える仕草。

 ……なんか嫌な予感。

 そう思った瞬間、にまりと嫌な笑みを浮かべ、

 「じゃあ、その証拠に夜衣斗ちゃんの本棚後ろの方にある漫画のラインナップを一つ。えっと、あ」

 ぎゃーーーーーー!?

 自分でも信じられない速度で春子さんに近付き口を塞いだ。

 「………っは、春子さん!」

 口を塞がれながらもごもごとまだ続きを喋っている春子さんを睨む。

 そして、見回すと………ほぼ全員がキョトンとした顔をしているが………飛矢折さんだけ、何故か苦笑していた。

 ………そう言えば上と下に兄弟が二人ずついるって話だったから………ピンときたのかもしれない。

 …………まあ、その辺りは深く突っ込まず、考えずにいる方が賢明だな………とにかく、

 「………部屋に既にあるもので、春子さんを春子さんだと証明する事は出来ません………調べれば直ぐに分かる事ですから。と言うか、本物だったとしても、勝手に人の部屋を漁るな!」

 そう言って、俺は春子さんの口から手を離した。

 「いいじゃない。し」

 また何かを言おうとした春子さんの頭にチョップをお見舞いする。

 ちょっとでもヒントになる様な事を言わせるわけにはいかないだっつうの!

 「もう!私にだけ直ぐにチョップするんだから」

 「………あなたがろくでもないからでしょうが!」

 「ぶー。私は一回りもお姉さんなんだからね。敬いなさい」

 「………敬われたかったら、敬われられる態度と行動をしてください」

 「えー」

 いかにもめんどくさそうなその反応に、俺は思わず深いため息を吐いた。

 「こら!いい若い者がため息ばっか吐いちゃダメ!彼女出来ないわよ」

 ………余計なお世話だ………と言うか、

 「………他人の心配より、自分の心配をしたらどうです?」

 「ど!どういう意味かな?」

 「………そのままの意味ですよ。まだ一カ月ぐらいしか一緒にいませんけど、浮いた話や仕草を一切見た事がありませんからね………まあ、分からないでもないですが」

 「ほっんとーに、どう言う意味かな!?」

 頬を引きつりながら言う春子さんのその問いに、俺はそっぽを向いて置く。

 っで、気付く、周囲が俺達に呆れた視線を向けている事を……………あ~………どう見ても本物っぽいが………状況が状況だし………それを認めると………………

 「………何にせよ。本物だと言う証拠がない限り、あなたを黒樹春子だと認める訳にはいきません」

 そう言って俺は、春子さんから数歩後ろに下がった。

 その俺の対応に、春子さんは苦笑し、

 「疑り深いわね………じゃあ」

 ちょっと小走りで隠れていた穴に戻り、そこからちょっと大きめのリュックサックを持ってきた。

 「はい」

 と言って、俺にリュックサックを投げ渡した。

 反射的にオウキを具現化して受け止めさせる。

 「うん。その対応も間違ってはないわよ………ちょっと傷付いたけどね」

 ………なんだかな………

 オウキのセンサーで中身を調べさせると……………何やってんだ?てか、なんで?

 リュックサックをオウキから受け取り、開けるとそこには、メガネベアがいた。

 しかも、何故か『黒い植物らしき枝』……なんだこれ?……で簀巻きにされて………

 身動きもせず、心の呼び掛けにも反応が無い所を見ると………気を失っているんだろうか?………と言うか、口の周りにプリンらしき黄色い汚れが………

 意味が分からず春子さんを見ると、

 「その子が私のプリン強奪犯でしょ?」

 うわ……ばれてたのかよ………

 「………ふふふ。さっき町で起こったごたごたに乗じて、またプリンを盗み食いしようとしていたから、捕まえたの」

 と言って若干陰湿な笑みを浮かべる春子さん。

 ………そう言えば、ここ最近、春子さん冷蔵庫の前で見張ってたな………たく!近付くなって言っといたのに………何やってんだか………はぁ


  ★飛矢折★

 春子さんが黒樹君に投げ渡したリュックサックには、あたしが星波商店街で当てたメガネベアのぬいぐるみが入っていた。

 ………しかも、何故か黒い植物に簀巻きにされて………えっと、あれが、春子さんが春子さんだって証明する証拠?………さっぱり分からない。

 でも、黒樹君は、ある程度納得しているみたいだし………どう言う事?

 「その子の証言なら、信用できるでしょ?」

 と自信満々と言った感じで言う春子さんに、黒樹君は呆れて、

 「………信用出来るも何も………意識を失っているみたいなんですが………」

 そう言った。

 えっと………あれ、ぬいぐるみだよね?…………なんだか、二人のやり取りを見ていると、まるであのぬいぐるみが自分の意志を持って動くみたいに見えるんだけど………

 「………強く締め過ぎたかしら?………ん~………じゃあ、最終手段!」

 若干焦った様子の春子さんは、着ていた服のポケットから携帯電話と………透明なリングの中に基盤が入ったものを取り出し、そこに携帯電話をはめ込んだ。

 そして、どこかにリダイヤルして、地面に投げる。

 携帯電話をはめ込んだリングにスピーカーが入っているのか、呼び出し音が聞こえ始めた。

 「これはね。知り合いの魔法使いから貰ったものなの」

 「………知り合い?魔法使いと?」

 「昔は確かに滅ぼし合った仲だけど、今はそこまで関係は悪化してないの………まあ、でも、お互いに警戒はし合っているから、仲は良くないけどね………だから、彼は変わり者なのかな?」

 そう言って春子さんが首を傾げると、携帯電話が繋がり、その瞬間、携帯電話の上に女の子の姿が現れた。

 気配がないから、多分、立体映像なんだろうけど………その女の子を見た黒樹君は、あきらかに驚き、動揺した気配になり、

 「………てっきり、父さんと母さんが出てくるんじゃないかと………」

 そう若干うろたえ気味につぶやき、その黒樹君を見た女の子は、嬉しそうな笑顔を見せ、

 「久し振り、夜衣斗兄ちゃん」

 そう言った。

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