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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』10

  ★夜衣斗★

 俺の問いに押し黙り続ける統合生徒会長。

 ………知っている事に対する否定はしない……と言う事は、本当に俺に関する何かを知っている訳か………

 周りを見ると、一様に困った顔をしていた。

 ………何なんだろうか?………本当に、一体、俺の何を知って、隠しているって言うんだろうか?………答えられないと言う事は………統合生徒会長達を黒幕として仮定した場合……俺が何らかの実験対象になっている………と言う事なのだろうか?………そう考えると、俺が特殊な武霊使いになった事の説明が付くが………だが、そうだった場合、いくつか納得出来ない事が出てくる………サヤはもちろん、魔力孔の前であった記憶の中の老人とか………ん~だとすると、これは違う可能性が高いと考えるべきか……………まあ、なんであれ……これはもう無理だな……………何を隠しているか興味はあるが、味方か敵かどちらであろうと、どうせろくなことじゃないだろうし………あの様子からすると、根本的な疑問の解決に繋がる答えを持っていない様な気がする……………第一、お互いによく知らない間柄だと言うのに、隠し事………それでどうやって信頼しろって言うんだろうか?………まあ、それはこっちにも言えることだが……………

 俺は再び深いため息一つ吐き。

 「………何も答えられないなら、あなた達を信用するかしないかは、今後のあなた達の行動次第で決める事にします」

 俺の宣言に、光明でも見出したかの様に顔をぱあっと明るくして、

 「でしたら、わたくし達のそばで見極めてくださいませ」

 と提案してくるが、俺はその提案を首を横に振って拒否。

 「………言ったでしょ?あなた達を信用出来ないと。疑惑を持ったまま、あなた達の側にいられるほど、俺は肝が据わってません」

 正直に言うと、統合生徒会長は再び泣きそうな顔になり、

 「ですが、このまま外に出てしまわれますと、操られている人達に襲われてしまいますし、黒樹様以外の方が操られてしまいますわ」

 そう指摘してくるが………外ね………まあ、何であれ、

 「………対抗策は考えてありますので、問題はありません」

 その俺の返しに、統合生徒会長はびっくりした顔になり………何だかコロコロ表情が変わる人だな………まあ、俺がそうさせていると言えばそうなんだろうが………

 「お一人で、星波町にいる武霊使い達を相手にするつもりなのですか?」

 「………必要とあれば」

 「黒樹様。それは無茶ですわ」

 ………まあ、確かにそれは無茶かもしれないが………

 「………本当にあなた達が黒幕でないのなら、今回の事態を自分達の力のみで対応して見せてください」

 「………」

 物凄く困った顔になる統合生徒会長。

 ………俺を戦力に入れていたのか?………んーまあ、

 「………ご健闘を祈ってます」

 と言うしかないな………

 何となく顔が見れず、俺は振り返って、

 「……………行きましょうか」

 そう後ろの三人に呼び掛け、俺は統合生徒会長の横を通り抜け様とした。

 「黒樹様………」

 泣きそうな声の呼び掛けを俺は無視。

 ………正直に言えば、かなり心が痛んだが………疑惑が消えない限り、これが演技ではないと言いきれない………何ともめんどくさくて、厄介な状況なんだか………そもそも俺は他人の真偽とか、敵味方とか、もうそう言う心理戦とか、情報戦とかやった事が無いし、だから、きっと苦手なんだろう。上手い奴ならきっと、上手く相手から情報を聞き出して、判断材料に出来るだろうが…………まあ、ないものねだりをしてもしょうがないが…………ここ最近、と言うか、星波町に来てから、俺にないもので対処しなくちゃいけない事ばかり起きる。

 深いため息を吐きつつ、後ろを見ると、飛矢折さん達は、戸惑いながら俺の後ろに付いて来てくれていた。

 誰が止めるわけでもなく、俺が適当に選んだ穴に入ろうとした時、

 「分かりましたわ。黒樹様」

 何かを決意したかの様な統合生徒会長の声が聞こえ、思わず振り返ると、さきほどまで泣きそうな顔だったその顔も決意の顔になっていた。

 「黒樹様がわたくし達を信頼出来る証拠をお教えしますわ」


  ★飛矢折★

 信頼出来る証拠を教える。

 そう言った統合生徒会長に、大慌てで芽印が近付き、こっちに聞こえないくらいの声で何事かを話し始めた。

 だけど、統合生徒会長は首を横に振り、

 「ここまで明かしてしまったのですわ………そうなれば、いずれ黒樹様なら自らの力で辿り着きますわ」

 「そうかもしれないけど、今、このタイミング、この状況で明かす事じゃないでしょ?」

 統合生徒会長の言葉に更に慌てたのか、声のトーンがこっちに聞こえるまでになる芽印。

 ん~………どうも黒樹君が言う様に、黒樹君に関する何かを統合生徒会長達が知っているのは間違いなさそうだけど………あの芽印がこんなに慌てるなんて………一体どんな事なんだろう?

 黒樹君を見ると、黒樹君は特に反応らしい反応はしていない。

 ………こうなる事も予想済みって事?………黒樹君なら予想してそうね………

 「だからと言って、このまま黒樹様達を外に出すわけにはいきませんわ」

 「それは大丈夫だって、彼は外に出るなんて一言も言ってないでしょ?」

 その芽印の指摘に、頭に疑問符を浮かべて黒樹君を見る統合生徒会長。

 ………そう言えば、黒樹君は別行動を取るとは言ってたけど、外に出るとは一言も言ってないっけ………

 何となく黒樹君を見ると、黒樹君は頷いた。

 芽印の言う様に外に出る気はなかったみたいね………

 黒樹君の頷きに少し安堵の表情を見せる統合生徒会長だったけど、芽印を見て首を横に振り、

 「芽印さん……あなたは今回の件、わたくし達だけで解決出来ると思いますか?」

 その統合生徒会長の問いに、芽印さんはちょっと困った顔をして、

 「………無理……かな?………でも………許可は取ったの?」

 視線を一瞬だけ誰かが隠れているトンネルに向ける芽印。

 許可?………もしかして、あそこに隠れている人って、統合生徒会長より偉い人?………でも、だったら、何で隠れているんだろう?

 そう疑問に思った時、

 「……許可は、今から取りますわ」

 そう言って、統合生徒会長は誰かが隠れているトンネルへと身体を向ける。

 「もう隠し続ける意味も、状況でもありませんわ。黒樹様に……黒樹夜衣斗様に真実を語る許可を……いえ、語ってくださいませ」

 その呼び掛けに、隠れていた人の僅かな気配が動くのをあたしは感じた。

 そして、ほどなくしてトンネルから現れた人物に、あたしは驚愕で固まり、黒樹君が振り向かなくても分かるぐらいに驚いている気配を感じた。

 若干力無く

 「にゃはは………え~っと………驚いた?夜衣斗ちゃん?」

 そう言ったのは………

 「………春子……さん?」

 背後から、茫然とその人の名を呼ぶ黒樹君の声が聞こえた。

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