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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』8

  ★夜衣斗★

 鯉の会?

 ………若手退魔士って事は……ことわざの鯉の滝登りを掛けてるんだろうか?

 ……まあ、どうでもいいか……そんな事…………さて、いよいよもって信頼出来なくなってきたな………何らかの信頼できる情報でも聞ければと思って言葉を重ねたが、その思惑は外れるばかりだな………

 本当は、心情的にも、状況的にも、統合生徒会長達は黒幕ではなく、味方であって欲しいんだが………それを裏付ける証拠と信頼がない。

 チラッと、優癒と呼ばれたゴスロリ女を見る。

 俺を見ていた優癒さんは、それでびくっとし、テディベアの武霊を具現化して、その後ろに隠れた。

 その瞬間、妙な違和感が消える。

 心を見る事を止めたんだろうが……なんだかな……………それにしても……心読みか………心の中にいる美魅の存在を見付け、俺の話の真偽を見極めていたんだろうが………心読みと言っている割には、その程度しか見れないんだろうか?

 (それは違うだわよ)

 俺の思考を聞いていたのか、美魅が念話……でいいんだよな?この場合……で、否定の言葉を口にした。

 ………何が違うんだ?

 (あの感じからして、本当は思考とか、記憶とかも読めるんだわよ。だけれど、今の夜衣斗の心の中は、膨大な魔力で満たされていたり、何だかごちゃごちゃしているだわから、とっても見難いんだわね)

 …………ごちゃごちゃしているね………まあ、何にせよ。思考が読まれていないのは幸いだな……………そう言えば、飛矢折さんの話だと、芽印さんは武霊を出さずに瞬間移動出来るって言ってたな………優癒さんも武霊を出している様子はないし………両方とも武霊を出さずにそれを行使出来たとなると……………なるほど……つまり……退魔士は『何らかの超能力』を有しているって事か?………いや、そもそも超能力であるのかも疑問の余地があるか………ん~……何にせよ。それに近い何かを一般人に隠している事は間違いない事か………人は異物・異端を嫌うものだしな………まあ、隠す理由ならいくらでもあるだろうが………ん~だが、そうなると………疑惑の幅が広がるな………。

 俺がそう思考を巡らして黙っていると、不安そうな表情で俺を見ていた統合生徒会長は頭を下げた。

 「申し訳ありません黒樹様。わたくし達退魔士は、世間一般に対して秘密でなくてはいけないのですわ……ですので、出来ればこの事をお話したくありませんでしたの」

 ………その割には………まあ、それは別にいいが………ん~………とりあえず、確認するべき事を確認しておくか………

 「………つまり、退魔士であるから、三島忠人の武霊能力が効かなかったと?」

 俺の問いに、統合生徒会長は頷いた。

 「わたくし達退魔士は、その多くが先祖から『魔法能力』を受け継いでいますの」

 「………魔法能力?いや、そもそも、魔法とは?」

 「魔力と呼ばれるこの世界の外の力によって構築された、この世界では本来起こりえない現象・法則。それが魔法ですわ」

 ……なるほど……本来起こりえない法則………要は理の外の現象・法則って事か………まあ、大体漫画やゲームで描かれている通りか………

 「そして、退魔士は、その魔法を遺伝子レベルで取り込んでいる者達により構成されていますの。ですので、厳密に言えば魔法能力と言う名称ですが、わたくし達は自らの魔法能力を『退魔士能力』と呼んでいますの」

 ……退魔士能力ね………ん?

 「………超能力とは違うと?」

 「いえ、名称と使う対象に違いはありますが、基本的にそれも同じ魔法能力ですわ」

 なるほどね…………しかし、

 「………今の話からすると、まるで退魔士は、今の人類とは違う人類……分岐した人類と言っている様に聞こえるんですが?」

 その疑問に、びっくりした様子を見せる統合生徒会長。

 「その通りです。その通りですわ黒樹様」

 その通り?

 「わたくし達は、自分達の事を『分岐人類』と呼んでいますの」

 分岐人類?………

 「………つまり、魔法を取り込んでしまった事により、現人類から分岐した者達だと?」

 「はい。そして、超能力・超能力者と言う言葉は、魔法を取り込んでいたとしても次世代に受け継げない方々か、初代の方々に対して、わたくし達は使いますの」

 ん~………面白い話だな………まあ、面白がってる場合じゃないが………とりあえず、話を進めないと………

 「………つまり、身体の仕組みが普通の人間と少し違うから、武霊能力が効かなかったと言う事ですか?」

 「いえ、正確には違うと思いますわ」

 違う?

 「わたくし達の調べで、武霊は魔法生命体である事が確認されていますの」

 魔法生命体!?………いや、そうか、魔法が実在するとなると、そう考えるが自然か。

 「ですから、武霊の能力も魔法によるものですので、あの笛の催眠も魔法の一種なのですわ」

 「………つまり、体内に魔法が既にあるから、別の魔法は入りにくいと?」

 「はい。その通りですわ」

 ………なるほど………そうなると、俺も三島忠人の武霊能力が効かない理由も同様の理由だと説明出来るか………まあ、俺の場合は、魔法と言うより、その魔法の基である魔力があり過ぎるから効かなく、オウキ・キバも同様の理由なんだろう。通常の武霊は意志力で活動しているって話だからな………しかし……武霊が魔法生命体ね………と言う事は、武霊は意志力を喰らって、体内で魔力しているって事か………ん?だが、そうなると、魔法生命体である武霊に武霊能力が効くのはそもそもおかしくないか?………ん~………いや、おかしくないか………武霊が個々に違う容姿能力を有しているとしても、結局は同じ武霊なわけだし、互いの能力が通じても不思議じゃないか………実際に、ガチャポンマンの武霊能力はオウキに効いていた訳だしな……まあ、今は効かないだろうが………っで、全く別物の魔法は反発・阻害してしまうか………って、それだと、何で統合生徒会長達は武霊に寄生されているんだ?そっちの反発は起きなかったと?………いや、実際に起きていないんだから…………そうなると、武霊本体自体はより『高度な魔法』って事になるな………まあ、生命体、しかも、自分の意志を持つほどの高度な生命体なわけだから、ただたんに能力として発現している魔法より高度なのは当たり前か……………まあ、どんなに思考した所で、確実で信頼出来る情報がない現状で、それが正解かどうか……………少なくとも、今はそれに対して思考を巡らしている時じゃないだろうし…………………さてさて、本当にどうしたものか………今までの会話の流れからすると、まだ何かを、しかも『俺に関する何かを隠している』のは間違いなさそうだが…………どうもそれに関しては言いたくない様だし………例え、その内容を聞いたとしても、信頼できるかどうか………そもそも、隠している事がよりあやしさを増させている………ふむ………だったら、とれる行動は………

 俺は深いため息を吐き、

 「………分かりました。退魔士の存在、魔法の存在、あなた達が武霊能力に掛らなかった理由………それはとりあえず認めましょう」

 その俺の言葉に、統合生徒会長は顔をぱあっと明るくして、

 「ありがとうございますわ黒樹様。こちらもあらぬ疑いを抱いてしまい、申し訳ありませんでしたわ」

 「………ですが」

 頭を下げる統合生徒会長の言葉を無視して、俺は次の言葉を口にし、統合生徒会長は驚いた様に顔を上げる。

 「俺達は別行動をとらせて貰います」

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