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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』6

  ★飛矢折★

 黒樹君の問いと共に、この場の空気が一気に張り詰めた。

 そして、統合生徒会長だけでなく、周囲にいる全ての人達が、黒樹君を………いえ、黒樹君の背後に視線を向けていた。

 明らかに何もない場所だけど………きっと武霊使いにはオウキが見えている………それは黒樹君が、それだけ警戒しているんだろうけど………どうして?………あれ?そう言えば、黒樹君はオウキを取り戻してるんだよね………それってつまり、あの男を倒したって事?………確かにさっきそうつぶやいているのを聞いたけど………でも……どうやって?

 「何者とは……一体どう言う意味ですの?」

 統合生徒会長は、片手だけの静さで何かをしようとしていた周囲の動きを止めつつ、黒樹君に問い返した。

 あたしは浮かんだ疑問をとりあえず頭の隅に置いて、周囲の動きを、特に瞬間移動が出来る芽印の動きを警戒する。

 黒樹君が統合委員長達をあやしく思っているのは間違いなくて、その根拠があたしには全く分からないけど、信頼出来るのはどっちかって言ったら………あたしは迷わず黒樹君を選ぶ。

 少なくとも、黒樹君は余程の確信がない限り、わざわざ一触即発になる様な事を言うはずがない。

 そう思い、同じ思いなのか、西島親子が、周囲の緊張に合わせて黒樹君の背後に寄る。

 あたしはいつ何が起きても、対応出来る様に身体の力を抜く。

 そして、黒樹君と統合委員長との会話は続く。

 「………飛矢折さんや西島さん達の話から、今、星波町は武風紀委員長……三島忠人の武霊によって町全体が洗脳による支配下にある。そう予想しましたが……違いますか?」

 「はい。その通りですわ」

 ?

 「………三島忠人の武霊の能力は、『笛の音を聞かせ続けている相手の意志を奪い、洗脳状態にする能力』。そしてその能力の範囲は、町内放送などの間接的な音や、録音した音でも可能……違いますか?」

 「録音した音で可能かまではまだ確認できていませんが……はい。その通りだと思いますわ」

 「………町内放送で笛の音が聞こえる前に、飛矢折さんも俺も、耳にイヤホンを付け、微動だにしていない自警団の人達を確認していますから、多分、録音した音でも可能なのは間違いないでしょう」

 互いに問われた問いに答えず、何故か情報交換をし始める黒樹君と統合生徒会長に、この場のほとんどから疑問の視線が集まる。

 二人はその視線を特に気にすることなく、会話を続けるんだけど………どう言う事?

 「………能力の対象は、人のみなのですか?」

 「いいえ。わたくし達が聞いていたのは、はぐれのみを操れると言う事でしたけど……実際は武霊・人などの意識あるものなら何でも操れるようですわ。ただし、武霊使いの場合は、効果が現れるまで若干時間が掛る様ですわ」

 「………つまり、騙されていたわけですね……それで、三島忠人がこんな事をする訳は分かりますか?」

 「いいえ」

 「………そうですか………」

 そうつぶやくと、黒樹君は目を瞑り、思考にふけり始めた。

 沈黙がこの場を支配し、唯一雰囲気を無視した芽印のシャッター音のみが聞こえ………とりあえず芽印を睨んでおく。

 少しして、

 「………俺が何者かとあなた達に聞いたのは」

 ぽつりと口にし始めた黒樹君の言葉に、この場の全員の注目が集まる。

 「………あなた達が三島忠人の武霊能力に支配されていないからです」

 ?……支配されていない?……え?だって、ここは笛の音が無いから、それは当たり前なんじゃ?

 「それは………ここは音が届かない場所ですから」

 あたしも思った事を統合生徒会長は言ったけど、それで黒樹君が納得する様子は………全く無い。

 「………状況や知り得た情報から考えて、三島忠人が支配を始めたのは、星波学園から………違いますか?」

 「確かに……その通りですわ」

 「………なら、あなた達がここにいるのは不自然になる」

 そう言って、周りを見回す黒樹君。

 ……確かに、武装風紀委員長が星波学園から支配を始めたのなら、学園にいたであろう統合生徒会長とか、周りにいる学生や教師の人達がここにいるのはおかしい。

 視線を統合生徒会長に向けると………困った顔をしていた。

 「では、黒樹様は、わたくし達の事を何者だと予想なさっているのですか?」

 統合生徒会長の問いに、黒樹君は驚くべき予想を口にした

 「………端的に言えば、あなた達を、どこまでの、とは断定できませんが………『黒幕』ではないかと疑っています」


  ★夜衣斗★

 俺の黒幕発言に、周囲にざわめきが起こり、統合生徒会長は、困った顔を更に困った顔にした。

 いや、どちらかと言うと、悩んでいる顔だろうか?

 ………まあ、人と中々コミュニケーションを取らない俺だから、人の表情をうまく読み取れていない可能性はあるが………とにかく、疑っている理由を話すか………しかし、この反応からすると…………まあ、少しでも可能性があるなら、警戒は解かない方がいいだろうな………

 背後にいる非具現化状態のオウキと、出してもいないキバをいつでも具現化出来る様に二体を軽くイメージしつつ、

 「……武霊能力が効かない。しかも、武霊そのものまでに効果を及ぼす武霊能力が効かない。そんな事が出来るとなると、それだけでも黒幕、もしくはそれに近い……そう疑うのに十分だと思いますが?」

 「違いますわ!わたくし達は断じてその様な者ではございません!」

 「………では、何故、無事だったんですか?」

 「それは………」

 口ごもる統合生徒会長。

 ………なんであれ、何かが彼女達にはあり、それを隠している事は間違いない……か。

 「………助けてくれた事には感謝をしますが……正直、今の段階ではそれに裏がある様にしか思えません」

 「そんな!わたくし達がそんな人間に見えるのですか?」

 「………見えるも何も、俺はあなた達の事をたいして知りません」

 「今、わたくし達がここに追い詰められていると言う現状だとしてもですか?」

 「………仲間割れ。実験の失敗………現状ではどうとでも疑えます」

 「確かにそうかもしれませんが………それをおっしゃるのなら、黒樹様。あなたにだって言える事ですのよ」

 「………俺にも武霊能力が効かなかった事を言っているんですか?」

 「ええ」

 ………まあ、そりゃそうだが………思い当たる事はいくつかあるが、そのどれが正解だが、あるいはその全てが正解か、もしくは全く違う要因か………今の俺に分かりようもない…………ん~……予測はたてられるが、それを口にしてもいいものか………

 「ですが、それだけではありません………黒樹様。あなたはあまりにも他の武霊使いと違い過ぎますわ」

 ………なるほど、統合生徒会長側も、『俺を疑っていた』わけか………まあ、それも当然と言えば当然か。統合生徒会長の言う様に、俺はあまりにも今までの武霊使いと違い過ぎる………俺が統合生徒会長と同じ立場だったら、同じ様に疑うのは間違いない。

 「星波町に来て初日で武霊使いになり、常人を遥に超える意志力を持ち、二体目の武霊まで寄生し、具現化させた」

 ……どうやら、頂喜武蔵戦は何らかの方法で見られていたみたいだな………まあ、いつかはばれる事だし、それはいいが……

 「………正直に言いますわ。わたくし達も、黒樹様を疑っているのですわ」

 若干の逡巡の後、何かを決意した統合生徒会長は、俺に向かってはっきりとそう言った。

 まあ、お互い様か………

 「………俺が黒幕、もしくはそれに近いと?」

 「いえ、違いますわ」

 ん?違う?

 「わたくし達は、黒樹様が『魔法使いと接触した』。そう疑っているのですわ」

 はぁ!?魔法使い!?

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